アメリカの鉱工業生産指数について書いていきます。
この数字に注目する理由は、過去にリセッションが起こった時にはアメリカの鉱工業生産指数の前年比が毎回のようにマイナスになっているからです。
反対に鉱工業生産指数が前年比マイナスでもリセッションにならなかった場合もあるのですが、今回はどうなるのでしょうか。
この記事のポイント
- 8月の鉱工業生産指数は予想を上回った。直近で調子を崩した3月からはやや立ち直った印象がある。
- しかし、この傾向が続くかどうかはまだ薄氷を踏む展開。
- 過去リセッションが訪れた時には鉱工業生産指数が前年比でマイナス成長に転落している。今はわずかに前年比0.2%と余裕のある段階ではない。
鉱工業生産指数は復調気味
結果から言うと、8月の鉱工業生産指数は予想を上回りました。
- 予想:0.2%
- 結果:0.4%
- 前回:1.0%から0.7%に下方修正
どうも8月の鉱工業は思っていたよりも調子が良かったようです。というよりも、アメリカでリセッションの懸念があがった2022年の年末と2023年3月を除くと、プラス成長を維持できているようです。
2022年はハイペースな利上げが続いて鉱工業生産指数も悪化したのですが、2022年後半から利上げペースが鈍化し2023年年明けから復調しました。
また、2023年3月には銀行の破綻後も銀行の貸出が厳しくなる懸念からリセッション懸念が出ましたが、今は鉱工業生産が再び復調したというところのようです。
鉱工業生産指数の前年比はわずか+0.2%
こうした過去の鉱工業生産指数の動きを経て、前年比ではどのような状況になっているのかを確認してみましょう。
次のグラフは鉱工業生産指数の前年比をグラフ化したものですが、8月の前年比はわずか+0.2%とマイナス成長まで紙一重のところにいます。
というよりも、じつは2023年6月には一時的に前年比がマイナスに落ち込みました。その時の様子は以下のブログで書いています。
その後、鉱工業生産指数指数は上にも書いたように復調して再びプラス成長に戻ったわけですが、それでもハッキリと低迷を脱したとは言い難い危うい状況にいます。
2022年末や2023年3月に起こったようなリセッション懸念がもう一度出れば、鉱工業生産指数は十分マイナスになる可能性はあるといえる水準です。
そして、私はまだアメリカの銀行破綻は解決されていないと思っているので、そう遠くない将来に銀行業界は問題に直面すると思います。
もしも本当に銀行の問題が収まっているなら、3月に発動したFRBの緊急支援策の利用額が増え続けるようなことはないと思うからです(下図)。
まとめると、鉱工業生産指数の前年比はギリギリでマイナス成長突入を回避できているので現時点ではリセッションの足音はしないのですが、もしも次に何か起これば崩れてしまうような脆さがある状態だと言えそうです。
そして、その脆さはアメリカのいろいろなところ(苦しい銀行業界、消費余力の低下、銀行の貸出態度の厳格化)にあるので、今は問題なくても危うい状況はまだ続くと思われます。