2021年の後半からFRBはようやくインフレは一時的ではないことを認めて、インフレを抑え込もうとする発言が目立つようになりました。
インフレを抑え込むために金融緩和を縮小すると株価には悪影響が出るので、最近のFRBの発言や姿勢に反応して1月の米国株市場はやや下落が続いています。
しかし、FRBの動きをみているとどうもインフレを抑え込む本気度が足りないのではと私は思っています。
私がそう感じるだけの話かもしれませんが、なぜ本気度が足りないと思うのかの理由をつらつらと書いていきます。
この記事のポイント
- インフレを抑えるためには金融緩和をやめる必要があるが、それをすれば米国株の下落はかなりの高い確率で起こる。
- FRBはインフレを抑え込む姿勢を見せつつ、株価や投資家の動きを気にしている。
- 株価を気にしていては、インフレを抑え込めない。まだインフレを抑え込むFRBの本気度は十分じゃない。
金融緩和をやめれば株価が下落する
2021年にアメリカの物価が急に伸びた背景の1つに、FRBの大規模な金融緩和があります。
なので、FRBはインフレを抑えたいなら金融緩和をやめる必要でてきます。
しかし、ここで問題なのは金融緩和をやめた場合(たとえばコロナ前の2018年の状態に戻した場合)には、次の仕組みでかなりの確率で株価が大きく下落してしまうことです。
- 金融緩和によって抑えられていた長期金利が上昇する(国債が売られる)。
- 近年の米国株は「割高な国債に比べたらまだマシ」という理由で買われていたが、買われる理由を失う。
長期金利の動きは以下の記事も書いたように[銅÷ゴールド]と似た動きをするのですが、この[銅÷ゴールド]の比率を使って今の長期金利を推計するとおおよそ2.5%〜3.0%くらいになります。
銅は景気の先行指標になるのか、実際に試してみた。
銅は景気の先行指標としてよく使われると聞きます。ざっくりいうと銅の価格が高ければこれから景気が良くなると言われ、銅の価格が低くなると景気が悪くなると言われます。なので、実際に銅の価格の変化を見れば、GDPや10年米国債利回りやさらにはS&P500などの株価の変化が予見できそうなのかを調べてみました。
以下では2017年後半からの[銅÷ゴールド]のグラフ(青線)を描いていますが、現時点と同じ[銅÷ゴールド]を値だった2018年を調べると、このときの長期金利は2.5%から3.0%だったことがグラフからわかります。
つまり、もしも金融政策が2018年の状態に戻ると、現在約1.7%のアメリカの長期金利は最大で3.0%くらいまで上昇してしまうことになります。
長期金利が上昇すればするほど米国株は下がりやすくなるはずですが、2022年の米国株にとって3.0%の長期金利は耐えられない高さです。
なので、FRBは株価(株式市場の投資家)の顔色を伺いながら、金融緩和の縮小をしなければならないようです。
投資家の顔色を伺うFRB
「株価が下がっても、インフレを抑えることが第一の目的」という強い意思がFRBにあれば、金融緩和の縮小を続けることができます。
しかし、最近のFRBの動きを見ていても、インフレを抑える本気度はあまり伝わってきません。
たとえば、2021年12月の金融政策を決める会議(FOMC)では、FRBが金融緩和で買った国債を処分する話が出ていましたが、これは1月に会議の議事録が公になるまで明かされませんでした。
株価を気にせずに本気でインフレを抑える姿勢があったのなら、FOMC後のFRBパウエル議長の会見で発表すればよかったはずです。
そうならなかったことを考えると、どうも株価への影響を恐れて株に悪影響を与える上昇は小出しにしたかったような印象を受けます。
さいごに
先日の以下の記事では、インフレを抑える途中でもしも景気悪化や株価下落を迎えた場合のFRBの動きについて少しだけ書きました。
>>今のアメリカで年4回から5回の利上げは厳しいかもしれない
「FRBは景気悪化を覚悟しても、インフレ対策で金融緩和の縮小を続けるか」、「インフレが続くことを覚悟で、再び金融緩和に舵を切る方向転換をするか」の2択になった場合、私は今のFRBなら再び金融緩和に踏み切るだろうと書きました。その背景にはこの記事で書いたようなFRBのインフレ対策への覚悟のたりなさがあります。
だから、利上げから1年と立たずに金融緩和がさらに行われる可能性もまだあると思っています。
そのときには恐らく低金利とインフレの両方に強いゴールドが良い投資先になっていると思いますが、それ以外になにか良い投資先がないかも考えておきたいと思います。