IMF(国際通貨基金)が、今後のGDP成長率予想を発表しました。
2021年のアメリカの経済成長は6.0%に下方修正されたようですが、私にはとても楽観的な数字に見えました。
昨日の記事でも書いたように、アメリカ経済の成長はこれから大きく減速すると考えています。
景気拡大が減速するペースは銘柄選択や、株からの資金の撤退のタイミングに影響するのでちゃんと把握しておきたいのですが、専門家と認識が大きく違って困っています。
私が間違っている可能性もかなり高いと思いますが、IMFが予想する2021年に6%成長がなぜ難しいと考えているのかを書いておきます。
この記事のポイント
- IMFは2021年のアメリカの成長率を6.0%と見ている。前回よりも下方修正されたが、まだかなり高い成長率を予想しているように見える。
- しかし、2021年3月から個人消費の伸びは止まっている。そして、成長が再加速するために必要な資金がアメリカの家計には既に無いので、6%成長は極めて困難。
2022年の年明けを待たなくても第3四半期(7-9月期)のGDP成長率の結果が出れば、少しずつ状況が明らかになるので、とりあえずは次のGDPの発表がある10月末まで少し待ちたいと思います。
※昨日と似た内容がかなりありますが、今までの記事を読んでいない人にも向けて重複を気にせず書いています。既知の場合、その部分は読み飛ばして問題ないです。
IMFは2021年のアメリカの成長率を+6.0%と予想
IMFは7月からアメリカのGDP成長率予想を引き下げましたが、それでも2021年は+6.0%とかなり高い成長が続くと結論づけています。
ですが、(少なくとも今の時点の私は)この引き下げたGDP予想ですら達成することはかなり難しいと思っています。
2021年のGDP成長率6%が難しい理由
私よりもIMFのほうがずっと優秀な専門家がいることは知っています。
その上で、数カ月後に「なぜ6%成長が難しいと思ってしまったか」を振り返るために、なぜ6%の成長が既に難しいと思っているか書いておきます。
2021年の米6%成長が難しい理由
- 21年前半の米GDP急成長を支えた個人消費の成長は既に止まった。
- 既に公開済みのデータを元に、7-9月期のGDP成長率を計算すると年率+1.3%(前期比)しかない。
- 2021年のGDP成長+6.0%を達成するためには、10-12月期に大きな成長の再加速が必要だが、アメリカの家計にはその余力がない。
アメリカのGDPのほとんどは個人消費で構成されているので、個人消費の成長なしで高い成長はありません。
実際に年率+6.7%の高い成長率を記録した2021年4-6月期(第2四半期)では、個人消費が全体を大きく押し上げていました。
しかし、この個人消費の伸びが既に止まっているのは、既に過去の記事でも書いた通りです。
先ほど4-6月期は個人消費の伸びが全体を押し上げたと言いましたが、正確には伸びていたのは3月までです。
伸びていた時期の1-3月の消費の合計に比べたら、成長していなくても伸び切った後の4-6月の消費の合計のほうが大きかったので、4-6月期までは個人消費が高い成長率を見せていました。
しかし、その様子も7-9月期(第3四半期)で急変するはずです。
昨日の記事でも触れましたが、既に発表されている経済指標を反映させて7-9月期のGDP成長率を計算するとわずか年率+1.3%(前期比)まで低下するようです。
もしも、7-9月期がこのまま1.3%成長にとどまってしまった場合は、いよいよ追い込まれます。
この後にIMFの2021年6%成長を達成するためには、10-12月期に9.9%の高い成長が必要になるからです。今のアメリカにはさすがに無理だと思います。
個人消費の再加速ができない理由
ここまでは昨日の記事でも似たようなことを書きました。
ここで、「10-12月期に+9.9%ほどの成長は難しくても、コロナが収束に向かえば、再び個人消費の伸びは加速するのではないか」という疑問が浮かびます。
しかし、私は個人消費はたいして大きく伸びないと思います。
コロナが収束して消費をしたくても、アメリカの家計にはそれほど十分なお金がないからです。
以下のグラフはアメリカの貯蓄の変化を表したものですが、既に現金給付で得たお金はほとんど使ってしまったようです。
貯蓄額にコロナの前にかなり近づいています。
コロナ前の成長率は2%前後だったので、今後のアメリカの成長率はコロナ前のような状態に急速に戻っていくのだろうと思います。
さいごに
この記事では、多くの専門家ほど経済が成長しないと考える理由を書いていきました。
(間違っている可能性が高いとは思いますが)もしも、私の予想通りなってしまう場合には、アメリカの景気はこれから急速に減速することになります。
その場合に気をつけたいのは、今回の景気サイクルはとても短いかも知れないこと、特に好景気から不景気までの期間がとても短いかもしれないことです。
ちなみに、市場の投資家は景気が減速するとは思っていないか、まだ景気の急減速を警戒していないようです。
景気が悪化する前に投資家が動き出した場合には、長期国債の利回りが短期国債のものよりも低くなる動きが見られますが、それはまだ全く起こっていません。