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アップルと合併していたかも知れないディズニー

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週末はディズニーCEOのボブ・アイガー氏にインタビューをしたニューヨーク・タイムズの記事を読んでいました。

The Slow-Burning Success of Disney’s Bob Iger(ニューヨーク・タイムズ)

Twitterの買収を直前で踏みとどまった話など、とても興味深いものがいくつかありましたが、一番印象に残ったのは、やはり次の一文です。

“Mr. Iger believes that, if Mr. Jobs had lived, Disney and Apple might have merged.(もしもスティーブ・ジョブズ生きていたら、ディズニーとアップルは合併していたかも知れないとアイガー氏は信じています。)”

スティーブ・ジョブズがこの世を去ってから、もう何年も経ってもなお「もしジョブズが行きていたら」というのは、現在のアップルのCEOのティム・クック氏に大変失礼なのは承知ですが、私もこの考えには賛同します。

アップルとディズニーはそう遠くない縁があるからです。

スティーブ・ジョブズとディズニーの関係

ディズニーの映画が低迷している時代に、配給会社のディスニーの売上を支えていたのは、トイ・ストーリー、モンスターズインクと出せば大ヒットを打ち続けるピクサー社の存在が大きかったです。

そのピクサーが1つの会社になる前はもともとは、スター・ウォーズシリーズを手掛けるルーカスフィルムのCG部門でした。ジョージ・ルーカス氏が離婚の慰謝料の支払いのために、格安でCG部門を売却をしようと計画していたところに、CG映画とスタッフに直感的に未来を感じたスティーブ・ジョブズ氏が1991年にCG部門を買収していました。

当時、スティーブ・ジョブズはアップルを追放されてNeXTという会社を経営していましたが、CG部門を買収したスタッフ達を従えて、映画制作会社ピクサーを創業します。そしてスティーブ・ジョブズがアップルに復帰した97年以降も、ピクサーを経営していきます。

このピクサーは、まだCG映画が世の中に認められていなかった時代に、95年トイストーリーや01年モンスターズインクなど次々とヒットを生み出しました。そして、やり手のジョブズは配給会社のディズニーとの利益配分で有利な交渉を進めていきます。

しまいに、2004年にジョブズはディズニーとの契約を打ち切りにするという強気の交渉をした結果、ディズニーの株主は交渉をまとめられなかった当時のCEOを解任して、2006年には稼ぎ頭の映画を作るピクサーを買収するという波乱な展開がありました。

その結果、スティーブ・ジョブズはディズニーの筆頭株主になり取締役にも就任しています。スティーブ・ジョブズを取締役として迎え入れたのが、現ディズニーCEOでもあり、ニューヨーク・タイムズからのインタビューを受けたボブ・アイガー氏です。

取締役会でともに仕事をしたスティーブ・ジョブズがこの世を去った直後に次のようなコメントをしています。

“スティーブは素晴らしい友人であり、信頼できるアドバイザーでもあった。彼の功績は、製品やビジネスのみならず、何百何人という人々の生活を変え、文化を作り出した事にある。彼はクリエイティブで創造力に溢れた独創的な人であった。(ボブ・アイガー)”

ディズニーはその後、ピクサーの母体だったルーカス・フィルムを買収するなど、今ではかつての映画の低迷期を忘れるほどに多数のヒット作をかかえるコンテンツ会社になりましたが、ルーカスフィルム買収の背景には、ピクサーの影響が少なからずあったはずです。

ネットフリックスに別々に立ち向かうディズニーとアップル

しかし、今のディズニーとアップルは、スティーブ・ジョブズがいた頃に比べると溝ができている状態です。

ディズニーもアップルも2019年に動画ストリーミングサービスを立ち上げようとしています。ディズニーはディズニー+、アップルはアップルTV+です。

ボブ・アイガーCEOはアップルの取締役でもあったのですが、この動画ストリーミングサービスではディズニーとアップルは競合関係になることから、2019年9月に辞任をしています。

ディズニーのアイガーCEO、アップル取締役辞任ー動画配信で競合(ブルームバーグ)

アップルもディズニーも、動画ストリーミングサービスでトップを走るネットフリックスには、コンテンツの量でかなわないことを認めています。しかし、今の両者の経営陣達は共にネットフリックスと戦う道ではなく、袂(たもと)を分かつ決断をしてしまったようです。

だから、「もしもスティーブ・ジョブズが生きていたら、ディズニーとアップルが合併していたかも知れない」というニューヨーク・タイムズの一文が余計に刺さります。

“Mr. Iger believes that, if Mr. Jobs had lived, Disney and Apple might have merged.(もしもスティーブ・ジョブズ生きていたら、ディズニーとアップルは合併していたかも知れないとアイガー氏は信じています。)”

もはや、ジョブズの死は覆しようがないですが、それでも今なおアップルとディズニーのサービスの統合だけでも見てみたいものです。

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