IBMの2021年7-9月期の決算発表がありましたが、業績はあまり良くなかったです。
売上は前年と同じゼロ成長どまりで、事前のアナリスト予想も下回りました。
ただ、それ以上に(私にとって)印象が悪かったのは、来月に分社化していくつかの部門を切り離した後もIBMに残る部門の売上成長率の低さです。
2021年11月に成長性の低い(良く言えば成熟した)ビジネスを切り離した後、新生IBMの成長率は高くなるだろうと思っていたのですが、IBMに残る部門の今期の売上成長率はわずか2.5%でした。
IBMはクラウドなどを中心に成長軌道に戻るはずなのですが、この成長率は低いと感じました。
この記事のポイント
- IBMの2021年は売上がアナリスト予想を下回るなど、良くない結果だった。唯一良かったのはクラウド関連のコンサルティングの成長加速だった。
- 個人的には分社後にIBMに残る部門の売上成長率が、今期はたった2.5%しか無いことが気になった。
- 分社後にはIBMは成長軌道に戻り、株価も回復すると思われるが、売上成長率2.5%では大きな株価回復は難しいように見える。
低調だった2021年
冒頭でもお話したように、7-9月期のIBMの売上はアナリスト予想に届きませんでした。
- 売上:$17.62B(前年比+0%、予想17.77B)
- 一株利益:$2.52(予想$2.50)
前期までは2四半期連続で売上がプラス低調だったのですが、今回はゼロ成長になってしまっています。
※いつもなら売上だけでなく営業利益や一株利益の四半期ごとの推移も見ているのですが、分社化を前にした損失形状もあって比較が難しいので利益のグラフは割愛します。
部門別ではGBSが売上成長
ここからはIBMの部門別の売上を見ていきます。
IBMは部門名を見ても何を売っているのか分かりにくいので、おさらいをしておきます。
IBMの部門説明
- クラウド&コグニティブソフトウェア:クラウドとAIソフトウェアの製品の開発・販売をする。(ただし、クラウド関連売上は他の部門からも計上される)。
- グローバル・ビジネス・サービス(GBS):企業にあった製品ソフト・アプリを提供する。コンサルティング業務も含む。
- グローバル・テクノロジー・サービス(GTS):企業に合わせたコンピュータを提供・管理する。セキュリティ関連の売上も含む。
- システムズ:銀行などが使う、ほとんど停止しない特殊な大型コンピュータ、大容量の記憶装置を製造・販売する。
この中で、前期と同じく今期も唯一好調と言えるのが、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)の売上回復が鮮明でした。
単位B:10億 | 売上 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
クラウド&コグニティブ | $5.7B | 32% | +3% |
GBS | $4.4B | 25% | +12% |
GTS | $6.2B | 35% | -5% |
システム | $1.1B | 6% | -12% |
その他 | $0.2B | 1% | -26% |
合計 | $17.6B | 100% | +0% |
以下の表で見ても分かる通り、GBS部門のみが唯一大きく売上が加速してます。
GBS部門の何が好調だったのか、この部門の売上の半分を占めている「コンサルティング」が好調だったようです。
企業のクラウド活用を推進するためのコンサルティング案件(主にRed Hatという製品を使う案件)が多かったようで、この好調が今回のIBMの唯一と言っていい、良い点だったかも知れません。
分社後のIBMは低成長軌道
IBMはこれから大きな変化を迎えます。
今年の11月にIBMは売上成長の乏しい一部の組織を別会社(社名:キンドリル)に切り離す予定です。
(ちなみにキンドリルについて調べていたら、キンドリルの日本語サイトも既に出来上がっていました。)
これにより、スリムになったIBMは成長軌道に戻るはずなのですが、少し気になるデータがあがってきました。
11月以降もIBMに残るビジネスだけで集計した7-9月期の売上成長は+2.5%だったと決算資料で発表されています。
長い間、売上のマイナス成長が続いていた企業がプラス成長に戻るのは喜ばしいことですが、正直言うと低成長で物足りなさを感じます。
私は1年ほど前から、分社化したあとのIBMに期待をしていました。今のIBMは十分安い価格で売られているので、分社後に価格が上昇する余地はありますが、あまり旨味は大きくないのかなと感じます。