ちょっと前のことになりますが、今週はIBMの決算が発表されたので、振り返っておきたいと思います。
私はIBMは割安に放置されている銘柄だと思っているのですが、ちゃんと投資家から評価しなおされて株価が上昇するためには、売上が安定した成長軌道に戻る必要があります。
その点、4-6月期には少しだけ不安が残る決算だったと思います。
アメリカが30年ぶりの好景気だったと思われる4-6月で、売上は前年比でわずか+3%にとどまって、クラウド関連の売上も前期(1-3月期)よりも成長率が下がっているのは少し気になりました。
低迷が続くIBMにとって、2四半期連続の売上プラス成長はそれだけで良い材料ではあるのですが、復調と言うにはまだ足腰が弱々しい印象です。
この記事のポイント
- IBMの4-6月期の業績は売上も一株利益も予想以上された以上の結果だったが、米国が好景気に関わらず売上は+3%とかなり控え目だった。
- グローバル・ビジネス・サービスと呼ばれる部門の売上が加速しているのは良いことだが、クラウド関連売上の成長率が前期よりも鈍化しているのは少し気になる。
アナリスト予想は超える業績だったが
IBMの4-6月期の業績ですが、売上も一株利益もアナリスト予想を超える内容でした。
- 売上:187億ドル(予想183億ドル、前年比+3%)
- 調整後の一株利益:2.33ドル(予想2.29ドル)
まず売上は前年比+3%で、無事にプラス成長を確保しました。
IBMはクラウドの時代の波に乗り遅れて、2011年から長期的に売上が減少傾向が続いているので、前期からわずかでも連続でプラス成長だったのは良い点です。
しかし、そもそも前年の2020年4-6月はアメリカの景気はかなり悪く、一方で2021年はアメリカ全体がかなり景気が良かったのに、売上成長率が+3%というのはかなり物足りない印象です。
これから数年のIBMの株価の回復が実現するためには、クラウドの成長率が不可欠なのですが、今期はクラウド関連の売上の成長率が鈍化している点も少し気になります。
2021年末にはIBMは一部の部門を別会社に切り離して、成長のエンジンであるクラウド関連の売上比率が上がって、今後数年は成長軌道に戻ると期待されていますが、このエンジンが弱くなってしまうと魅力が薄れてしまいます。
部門別売上
ここからはIBMの部門別の売上を見ていきます。
IBMは部門名を見ても何を売っているのか分かりにくいので、おさらいをしておきます。
IBMの部門説明
- クラウド&コグニティブソフトウェア:クラウドとAIソフトウェアの製品の開発・販売をする。(ただし、クラウド関連売上は他の部門からも計上される)。
- グローバル・ビジネス・サービス(GBS):企業にあった製品ソフト・アプリを提供する。コンサルティング業務も含む。
- グローバル・テクノロジー・サービス(GTS):企業に合わせたコンピュータを提供・管理する。セキュリティ関連の売上も含む。
- システムズ:銀行などが使う、ほとんど停止しない特殊な大型コンピュータ、大容量の記憶装置を製造・販売する。
部門別に見たときには、今期はグローバル・ビジネス・サービス(GBS)の売上回復が鮮明でした。
部門 | 収益 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
クラウド&コグニティブ | $6.1B | 33% | +2% |
GBS | $4.3B | 23% | +7% |
GTS | $6.3B | 34% | -4% |
システム | $1.7B | 9% | -10% |
合計 | $18.7B | 100% | +3% |
過去数四半期の部門別の売上成長率をグラフ化してみたのですが、GBSはIBMの中で復調している印象があります。
システムは製品リリースのタイミングで業績がやや不安定になるのは仕方のないことで、さらにGTSは2021年末に別会社化することを考えれば、残る1分野の「クラウド&コグニティブ」の成長がやや物足りなかったかなと思います。
さいごに
この記事では、IBMの決算を見ていきました。
売上も一株利益もアナリスト予想を超えましたが、今後IBMの評価が見直されて株価が上がるために必要なクラウドの強さは感じられない決算だったと思います。
クラウドの強さが一時的に弱かっただけなのか、何かクラウドの成長が加速しない要因があるのかは1つの決算だけではわからないので、継続的に見ていく必要がありそうです。
IBMは一株利益予想の13倍しか買われていないのは、10年近くズルズルと売上が減少して歯止めが効かなかったことに原因がある気がしています。
2021年に分社化したあとに、成長軌道に戻ることを印象付けられれば株価も上昇すると思うのですが、投資家にそう思わせるだけのクラウド成長率は今期は見られませんでした。