IBMの2020年10-12月の決算がありましたが、内容は悪かったです。
成長に期待がかかっているクラウドとAI関連のソフトウェアを担当する「クラウド&コグニティブソフトウェア部門」を含め、全ての部門で売上が前年よりも悪化しました。
2021年末までにIBMは不採算な部門を切り離し、クラウドとAIを主力にすえて成長路線に戻ると言われていますが、このプランにもやや暗雲が立ち込めています。
株価は決算発表後に急落しました。
この記事のポイント
- IBMの2020年決算は利益は予想以上だったものの、売上が予想を下回った。
- IBMの成長分野だったはずのクラウドとAIのソフトウェアを担当する部門の売上が前年比マイナス成長に落ち込み、IBMの業績回復に暗雲が立ち込んだのか、株価は決算発表に大きく売られた。
- 2022年以降は、不採算な部門を切り離して、クラウドとAIを主軸に売上が成長路線に回帰するプランをIBMは描いているが、不安を残す決算になった。
2021年末までの分社化を終えれば、2022年以降はかなり割安に放置されていたIBMの株価が上昇すると思っていたのですが、今回の1回の決算だけで判断する必要はないので、継続的に様子を見ていきたいと思います。
慎重を期すなら、新生IBMになってから最初の決算で売上が前年比プラス成長になっていることを確認してから、株を買いに行っても良いかも知れません。
悪化するIBMの業績
2020年10-12月のIBMは利益こそ予想を上回りましたが、売上は予想を下回る結果になってしまいました。
- 売上:203.7億ドルで、予想を2.6億ドル下回る(前年比マイナス6.5%)
- 一株利益:2.07ドルで、予想を0.19ドル上回る
売上と営業利益の推移グラフを以下に載せましたが、どうも前期よりも低迷している様子が見えてきます。世の中はコロナから少しずつ景気が回復しているはずなのですが、IBMの業績はそれとは違う動きをしています。
また、一歩下がって年ごとの売上を見てみると、2018年には前年比+1%で売上が上昇していたはずなのですが、それから2年かけて再び低迷している様子が見えてきます。
2019年から再び売上成長がマイナスになっていること、また世の中は2020年4-6月で景気は底を打っているのにIBMの業績は上向いていないことを考えると、最近の低迷はコロナに関係なく、IBM固有のものが影響してそうです。
すべての部門で売上悪化
この決算ではあまり良いニュースはないのですが、今期はIBMのすべての部門で売上が前年を下回りました。今までIBMの中でも成長していたクラウドとAIソフトウェアを担当する部門「クラウド&コグニティブソフトウェア部門」ですら、マイナス成長に陥っています。
IBMの部門説明
- クラウド&コグニティブソフトウェア:クラウドとAIソフトウェアの製品の開発・販売をする。(ただし、クラウド関連売上は他の部門からも計上される)。
- グローバル・ビジネス・サービス(GBS):企業にあった製品ソフト・アプリを提供する。コンサルティング業務も含む。
- グローバル・テクノロジー・サービス(GTS):企業に合わせたコンピュータを提供・管理する。セキュリティ関連の売上も含む。
- システムズ:銀行などが使う、ほとんど停止しない特殊な大型コンピュータ、大容量の記憶装置を製造・販売する。
部門 | 売上(10億ドル) | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
クラウド&コグニティブ | 6.8 | 34% | -5% |
GBS | 4.2 | 20% | -3% |
GTS | 6.6 | 32% | -5% |
システム | 2.5 | 12% | -18% |
その他 | 0.3 | 1% | – |
合計 | 20.4 | 100% | -6.5% |
ただし、IBMのクラウドすべてが前年の売上を下回ったわけではないようです。
上で見たように、IBMのクラウドの売上は「クラウド&コグニティブソフトウェア部門」だけにあるわけではなく、各部門にもクラウド関連売上があり、全てを合わせたクラウド総売上では前年比+10%で成長を維持しているようです。
それでも、成長が続いているものの、クラウドの売上成長率が急速に低下している点は、やはり気になります。
2021年末の分社化後にも不安が残る内容
前回の決算記事でも触れましたが、IBMは2021年までに世の中のコンピュータのクラウド化でダメージを受けた不採算な部門の切り離しを予定しています。
ようやく投資のチャンスが訪れたIBM【2020年7-9月期決算】
IBMは長年の業績の低迷で、割安に放置されているIT銘柄です。あくまでも中・長期投資家向けのアイディアですが、株価上昇までじっくり待てるならIBMは既に買って良い株になったと思います。IBMは2021年末までに不採算な部門を切離して、クラウドとAIを中心にして成長軌道に戻る見通しが出てきました
これが実行されれば、2022年にはIBMはスリム化して生まれ変わり、クラウドやAIを主力にして、長年続いた売上の低迷を脱すると見られていました。
しかし、今回の決算でクラウドの成長の急減速が見られたので、投資家の間で2022年以降の新生IBMへの期待がしぼんでいるのを感じます。
決算発表ではアーヴィンド・クリシュナCEOは、新会社IBMでは持続的な一桁半ばの成長を目指すと公言していて、実現されれば今の割安な株価も上昇すると私も思っていますが、今期わずか+10%のクラウド売上でIBM全社の成長率を一桁半ばを達成できるのか、やや疑問です。