IBMの決算は久々に収益・利益もアナリスト予想を超えてきました。
本当に久しぶりです。
いつ以来のことかと気になって調べてみたら、2018年第2四半期を最後に6期ぶりでした。決算の内容を確認すると決してそんなに良いわけではないのですが、出遅れたクラウドで成長が加速しているのは良い兆候です。
この記事のポイント
- IBMの決算は2019年はじめて、収益も利益もアナリスト予想を超える決算になった。
- 予想を上回った要因は、クラウドと大型コンピュータが好調だったため。
- 特にクラウド関連売上は前期が前年比14%増加、今期が同23%と加速しているのは良い兆候。
IBMは10年ほど売上が低迷しているのですが、低迷の原因は一言でいうとコンピュータをクラウドで使うようになる時代の変化に乗り遅れたことです。
それまでは大きなコンピュータルームにIBM製の大型コンピュータを買って貰い、保守運用をして儲けていましたが、クラウドの登場でこのビジネスモデル(儲かるパターン)が崩れたことで10年間の長い低迷期に入りました。
IBMがいつ低迷期を抜けるのかずっと気になって見ているのですが、このままクラウド関連売上の成長が加速すれば「ひょっとすると10年続いた低迷期も底を打つかも」と可能性を感じる決算でした。
底を打ったとしても、成長のエンジンがまだ非力なのでアップルやマイクロソフトのような株の急上昇は望めるはずもないですが、後から振り返ると2019年や2020年がIBMの底だったと後々語られる可能性はあります。
IBM19年4Qは予想を上回る決算
IBMの2019年第4半期決算ですが、収益・利益ともにアナリスト予想を上回りました。
- 一株利益:$4.69予想を上回る$4.71
- 収益:$21.64B予想を上回る$21.77B(前年比3%成長)
- クラウド関連売上:$6.8B、前年比23%(前期の14%成長から加速)
部門別売上
さて、部門別売上から好調の要因を洗っていきたいとことですが、IBMの決算を読むときの最大の問題点は、部門名を見ても何を売っている部門なのか分かりづらい事です。
部門別売上を見る前に、4つの部門の特徴をざっとまとめておきます。
- クラウド&コグニティブソフトウェア:クラウドとAI製品の開発・販売をする。(ただし、クラウド関連売上は他の部門からも計上される)
- グローバル・ビジネス・サービス:企業にあった製品ソフト・アプリを提供する。コンサルティング業務も含む。
- グローバル・テクノロジー・サービス:企業に合わせたコンピュータを提供・管理する。セキュリティ関連の売上も含む。
- システムズ:銀行などが使う障害が発生しにくい特殊な大型コンピュータ、大容量な記憶装置を製造・販売する。
部門 | 収益(10億ドル) | 前年比 |
---|---|---|
クラウド&コグニティブソフトウェア | $7.2 | 9% |
グローバル・ビジネス・サービス | $4.2 | 0% |
グローバル・テクノロジー・サービス | $6.9 | -4% |
システムズ | $3.0 | 16% |
その他 | $0.5 | – |
合計 | $21.8 | 3% |
好調だった部門はシステムズとクラウド&コグニティブでした。
システムズは大型コンピュータのニューモデルの販売が好調だったようです。銀行システムなどの年間数分でも障害が発生すると問題になる場合に使われる大型コンピュータのzシリーズの最新モデルがヒットし、システムズ部門だけで16%の売上成長をしました。
更に、約3兆円かけて買収したレッドハットの売上を含むクラウド&コグニティブが+9%で成長しています。
ただし、レッドハットの売上は10億ドル程度でIBM全社の売上の5%程度にとどまっていています。まだまだ、これからでしょう。前期のIBM決算記事でも書いたように、レッドハットに関しては長い目で見る必要がありそうです。
Red Hat買収の成果は長い目で見る必要がありそうだと感じた、IBM2019年3Q決算。
Red Hatを買収が完了しましたが、IBMの2019年3Qの決算発表の結果は優れませんでした。もしもIBM株を買う場合はもうしばらく続きそうなこの会社の低迷期を一緒に乗り越えようとする、温かい目と忍耐が求められそうです。
長年の売り上げ低迷の中、クラウドが希望の光
レッドハットよりも注目したいのは、全部門のクラウド関連売上の合計がIBM全体の31%までに上昇してきたことです。
IBMの売上成長率は3%ですが、このクラウド関連売上は23%と高い成長率で伸びています。なので、この成長分野の割合がIBMの中でも30%を超えて存在感が増してくれば、IBM全社の売上成長も加速しそうです。
全部門のクラウド関連売上 | 4Q19 | 3Q19 |
---|---|---|
収益 | $6.8B | $5.0B |
前年成長率 | 23% | 14% |
IBM売上に占める割合 | 31% | 28% |
全体の31%の売上規模を占めていて、前年比23%も上昇すれば、クラウド関連分野だけでIBM全体の31%×23%=約7%分の売上成長要因になります。今期のIBMの売上成長の3%と比較すると、クラウドの存在感が大きくなっていることがわかります。
このままクラウド関連売上の成長を維持できれば、IBMの売上成長は年々加速するはずです。長年続いた低迷の長いトンネルを抜け出せるきっかけになるかもしれません。
高成長なクラウド関連売上の規模が大きくなりつつあり、今後IBMの売上成長に期待が持てる決算となりました。