よく言われることですが、価格と価値は違います。
今の時点で100ドルの株価だったとしても本来の価値が80ドルしかない株だったら、価格はいずれ価値に近づいて落ちていくはずなので、損をしてしまいます。なので、投資家は価値よりも高い価格がついている株を避けるようにしないといけません。
ここで問題なのは「この株の価値はいくらなのか」です。
プロの投資家でも価値を正確に見積もることはとても難しいですが、個人投資家でも安定して利益が出ている企業であれば「例年通りなら、だいたいこれくらいの株価がついているはず」という数字を出す方法があります。
この記事では、「今後12ヶ月分の一株あたりの予想利益(予想EPS)」と「予想PER」という2つの数字を使って、とても大雑把に株価の価値を推測する方法を見ていきます。
ほんの少しだけ式はでてきますが、この記事に数学の知識は全くいりません。かけ算とわり算だけできれば大丈夫です。
過去5年間の予想PERから株価を推測する方法
株には一株あたりの予想利益(予想EPS)が上昇すると、株価もつられて上昇する傾向があります。
「株価」が「予想EPS」の何倍になっているかを予想PERと言いますが、試しにマクドナルドの予想PERを調べてみると、どの年も過去5年の平均値23.26前後でまとまっていることがわかります。
つまり、だいたいどの年も「今後12ヶ月の一株利益(予想EPS)」の23倍の株価がついていると言えそうです。
なので、マクドナルドの予想EPSさえわかれば、その数字に予想PERの23.26倍をかけ算することで、株価のおおよその推測値を出せそうです。
今後12ヶ月の一株利益を知る方法
「現在の株価」と「現時点の予想PER」さえわかれば、次の式で「予想EPS」を調べることができます。
(予想EPS) = (現在の株価) ÷ (現時点の予想PER)
この記事を書いている時点の株価は214.86ドル、マクドナルドの予想PERは以下の図のとおり、25.38でした。
なので、予想EPSは(株価:214.86ドル)÷(予想PER:25.38倍)=8.46ドルと計算できます。
現時点の株価の価値を推測
ここまでわかったことは次の2点です。
- 過去5年間のマクドナルドの株価は、予想EPSの23.26倍の株価がついていた。
- 現時点の予想EPSは8.46ドル
なので、過去5年と同じ株価の傾向が続くなら、マクドナルドの現在の株の価値は(予想EPS:8.46ドル)×(予想PER:23.26倍)=196ドルとなることがわかります。
これは現時点の株価214.86ドルのほうが、わずかに高いです。価格のほうが価値よりも9%割高だという計算がでました。(※ただし、今回はおおざっぱな計算なので、9%ならほぼ誤差の範囲です。特に急いで売る必要もないくらいです。)
ちなみに
ちなみに「9%分だけ割高」ということだけ知りたいなら、もっと簡単に知ることもできます。「現在の予想PER」と「過去5年の予想PERの平均値」の値さえ分かれば、それを割り算するだけで計算できます。
(現時点の予想PER:25.38)÷(過去5年間の予想PER平均値:23.26)=9%
普段、私はこの方法を使っています。
今後の株価の推測
マクドナルドの株価は予想PERを23倍することでだいたいの値が推測できると言いましたが、数年先の将来の一株利益が分かるなら、将来の株価を推測することもできます。
将来の一株利益は、どこで調べても良いのですが、今回はSeeking Alphaというサイトで調べてみました。
上の図で調べた2020年末と2021年末時点の予想EPSに、過去5年間の平均予想EPS23倍をかけ算すれば、各時点での予想株価を計算できます。
マクドナルド | 2020年末 | 2021年末 |
---|---|---|
(1)今後12ヶ月分の予想EPS | 8.34ドル/株 | 9.02ドル/株 |
(2)過去5年の予想PER | 23倍 | 23倍 |
予想株価(1)×(2) | 194.0ドル | 209.8ドル |
2020年12月15日時点でマクドナルドの株価は214ドルですが、既に2021年末の予想株価を超えているようです。
この状態でマクドナルドに投資をしても、そんなに旨味はないと思われます。
さいごに
この記事では予想PERと予想EPSの値を使って、過去5年の傾向が続くなら株価はいくらになっているかを計算してみました。
ただし、この方法にはいくつか注意点があります。
注意点
- (1)マクドナルドのように過去5年間の予想PERが比較的安定している企業なら、この方法は使える。
- (2)2020年のアメリカは歴史的な低金利に支えられるため、少々高い予想PERでも株価は下がらない。
予想PERが毎年安定していたマクドナルドのような企業にはこの方法は使えますが、黒字転換をしたばかりのテスラや、ビジネスモデルを変えようとしているアップルのような企業の場合は、予想PERの変動が大きくて使えません。
そして利益が出てない企業の場合も、予想EPSがマイナスになってしまうのでこの方法は使えません。意外と制限が多いのが難点です。
この記事ではマクドナルドがやや割高という結果になりましたが、2020年は歴史的な低金利で、普段の基準なら割高でも簡単には株価は下がらない環境になっています。
なので、過去5年間に比べたら9%割高だとしても、金利の影響まで考えれば「そんなに割高ではない」と判断して、ほとんど無視して良い誤差にも見えます。