投資で安定して成績を残すためには「儲かる方法を知るよりも、何に投資すれば良いかの自分で判断できるようになること」のほうがずっと大事な気がしています。
例えば、他の人に「アップルの株が良いらしいよ」とか「マイクロソフトがおすすめ銘柄だ」とアドバイスをもらって、その通りに上手くいったとしても、アップルやマイクロソフトもこの先ずっと好調を続けるとは限りません。
私も10年近く投資を続けて、昔よりは少しは自分で色々と判断ができるようになった気がするので、単調な毎日に無意識にやっていたことの中で、何が投資スキルを磨くのに役に立ったかをメモしていきます。
この記事のポイント
- 当たり前だけど、人のアドバイスで投資するよりも、自分で投資を判断できたほうが強い。
- 投資で良い判断をするには、料理と同じで「良い食材(情報源)」と「調理方法(情報処理の仕方)」が必要。
要は、良い判断をするためには、「良い情報」と「適切な情報の処理の仕方」があると思っています。
「良い情報」の条件はできるだけ情報ソースに近いことだと思っていますが、「良い情報の処理の仕方」については、正直言って「これが正解」と言えるほど確かなものはまだ掴んでいません。
この記事の後半では、あくまでも参考程度にはなりますが、私が普段無意識にやってきた「情報の処理の仕方」を一例として紹介します。
自分で投資を判断できる強さ
冒頭でも触れましたが、投資のアドバイザーが一生となりにいてタイミングよく助言してくれるとは限らないので、自分でどんな投資をしたら良いか判断できる力を養っておく必要があります。
先程のマイクロソフトやアップルを例に考えてみます。
あまり良くない例
- 誰かがアップルやマイクロソフトがオススメと言っていたから、買う。
上の良くない点は、判断の根拠が自分の中にないので、投資が人まかせになっている点です。
結果的にアドバイスを受けて、アップルやマイクロソフトを買うことになっても、「なんで買うのか」「今後、株があがると考える理由は何か」を考えておくと、先の投資に繋がります。
良い例
- アップルはサービス事業(定額制サービス等)に力を入れていて、収益が安定して株が上がりそうだから買う。
- マイクロソフトは高収益なサービス事業の売上比率が大きくなって、利益率が改善している。今後もクラウドの好調でこの傾向が続きそうだから買う。
このように考えておけば、アップルのように定額制サービスに力を入れている企業を他に探してみたりできます。
また、マイクロソフトのように利益率(特に営業利益率)が改善している企業が他にないか探せば、新たな投資先が見つかるかも知れません。
良い判断のために「情報源」と「情報処理の方法」を知る
さて、では何をすれば、自分で良い投資の判断ができるようになるでしょうか。
感覚的には、料理を同じで「良い食材(情報源)」と「調理方法(情報の処理の仕方)」が必要だと思っています。
できるだけ一次情報に触れる
良い情報源の理想は、できるだけ情報源に近いもの(一次データ)です。企業のデータなら決算書、ニュースなら他のニュースでも参照されるような信頼性高いものが候補にあがります。
良い情報源の例
- 企業データ:決算書、プレスリリース
- ニュースソース:ロイター、ブルームバーグ、CNBC、ウォール・ストリート・ジャーナルなど他のメディアが参照するニュース
ただ、いきなりこれらの情報を読めと言われても、しんどいと思います。
私も投資をはじめた学生時代の頃は、「何言ってるのかよくわからないな」と思いながら、気になった意味の分からない単語をグーグル検索しては、少しだけ分かった気になって流し読みしていました。
理解力は「螺旋(らせん)階段」を登るように、何度も同じような記事を見て、何年もかけて少しずつ身についていきます。今は理解が半分程度でも、焦らず気長に目を通してみて下さい。
情報の処理の仕方
ここからは情報源から得たデータ(ニュースや決算データ)のさばき方で、普段私がやっていることをツラツラ書いていきます。
情報処理の仕方
- ニュースや決算で出てくる意味の分からない単語は調べる。
- データが良いか悪いか判断するための基準を知る。
- 傾向を知るためにグラフを使う。
- より深く知るために、分解する。
- 他社と比較する。
意味の分からない単語を調べる
すごく当たり前ですが、日本語で書かれているニュースでも、言葉の意味がわからないと理解が出来ません。「量的緩和」という言葉がわからないまま、量的緩和について書かれたニュースを読んでも全く理解できないはずです。
私の経験ですが、用語の意味さえわかってしまえば、どんな業界の記事でもある程度読み進めることが出来ます。
私は新卒からIT業界にいますが、IT業界は担当するクライアントの業界が突然変わることが頻繁にあります。
翌週から突然、自分が知らない石油業界や通信業界の人と普通に会話できなければならない状況が発生するのですが、その業界の言葉を理解することが、いち早くその業界の人と会話できるようになるコツだったりします。
判断できる基準を知る
さて、ここから数字のデータの読み方の話をしていきます。数字は客観的な情報を与えてくれますが、同じ数字でも判断基準が違うと全く違う意味になるので注意が必要です。
例えば、身長200cmは人間なら大きいですが、像だったら小柄になります。
企業の決算の場合は「売上・収益はアナリスト予想を超えているか」が一つの目安になります。また、企業が具体的な売上目標があるならそれも目安になります。
例えば、コカコーラは長期的に4-6%の成長を目標に置いていますが、こういう情報はかなり重要なのでメモして置くと、決算の良し悪しを自分で判断できるようになります。
決算以外の情報は少し判断しづらいかも知れません。例えば、新型コロナウイルスはよく「収束までに時間がかかると経済に影響がでる」と言われますが、「時間がかかる」とはいつまでのことを指すのか基準があいまいです。
そういうときには、専門家の意見を参照にするのも手です。
例えば、以下の記事ではバイロンウィーン氏が「4-5月までに新型ウイルスが収束すれば、米国株は大丈夫だ」と言ってる発言を紹介しました。
【新型ウイルス】焦点はいつ収束するか。成長率の引き下げ予想相次ぐ
この発言から、「4-5月までに収束するかどうか」を判断基準にすれば、自分で情報を判断できるようになります。
データを時系列にグラフ化する
データを理解するために、「判断の基準」を持つ以外によく使う手は「時系列のグラフを作ること」です。
これは決算などで、よく役に立ちます。
例えば、近年グーグル(アルファベット)は売上の成長が落ち込んでいますが、グラフ化してみると鈍化の傾向がパッとみてわかるようになります。
そして、広告業界の同業他社のフェイスブックの売上成長もグラフ化してみると、同じように売上成長率が落ちていることがわかります。
こうなると、「グーグル単体の問題ではなく、デジタル広告業界全体に共通する問題なのかな」と考えることもできます。
ついでにこうしたグラフは一度エクセルを作っておけば、次の決算期にデータを追加するだけで自分だけのグラフでデータを見ることが出来ます。
スターバックスやマクドナルドなどの既存店舗売上を重要視している場合は、既存店舗売上のデータもエクセルでグラフ化しておくと気づきが多いです。
より深く知るために、データを分解する
さて、そろそろ長くなってきたのでここからはサクサク行きます。
企業全体として売上の好調や不調がわかったら、その原因がどこにあるのか突き止めたいものです。その場合には、決算書を見ながらデータを分解していきます。
具体的には、グーグルの売上成長率が低いことがわかったら、どの部門が不調だったのかを調べるために、部門別の売上や成長率を見ていきます。
以下、グーグルの部門別の売上成長率をグラフ化したものですが、部門別では「Google検索」と「Google Network(Adsense)」からの収入が特に落ち込んでいることがわかります。
「Google検索」と「Google Network(Adsense)」の売上規模は、Googleの売上の約7割を稼ぐ部門なので、この低迷が響いているなと理解ができます。
その他、ディズニーでは動画配信サービスのDisney+の好調ぶりが騒がれていますが、部門の売上を細かく見ていくと、ディズニーの売上の2%ほどしかまだ規模がなく、「収益が好調だとしても、ディズニー+の貢献度はまだ小さい」とわかります。
>>参考記事:ディズニー好決算。Disney+2,650万契約で株価上昇【2019年10-12月期】
同業他社と比較する
最後のデータの見方で、紹介するのは、同業他社と比較するという点です。
既に、グーグルとフェイスブックの売上成長率の鈍化の話でもしたように、同業他社で比較すれば「業界の問題なのか」、「企業固有の問題なのか」を見ることが出来ます。
その他、同業者と比較すると別々の強みに気づくことがあります。
例えば、ビザとマスターカードを比べた時、「ビザは米国での決済金額の比率がマスターカードより高く」、「マスターカードは国際間決済の成長率がビザより高い」傾向があります。
なので、「米国の消費が今後も順調に成長すると思うならビザを買う」、「国際間決済が今後成長すると期待するならマスターカードを買う」という判断ができるようになります。
まとめ
この記事では、投資の判断を自分でできるようになるために、どんな情報を集めて、何を見ていくかを解説しました。
情報の処理の仕方については、年々変化するはずなので、気づきがあれば定期的に更新して行きたいと思います。