この記事で書いていること
少し長いので、この記事で何を書いているのかを箇条書きで先にお話します。
- 市場は1つ1つのニュースに敏感に反応します。
- ただし、個人投資家が大きなニュースの度に売買を繰り返していると、速さで勝るプロが買った後の高い株を買う(または、売った安い株を売る)ことになるので不利です。
- では個人投資家はどうニュースに向き合えば良いのか、上手なニュースの付き合い方を2つ紹介します。
1つのニュースに過剰に反応する市場
2019年は先を見通せない展開が非常に多いです。
レイ・ダリオは個人投資家に対して、「日々のニュースを見ないほうがいい」とアドバイスを送っていますが、これには全面的に賛成です。
試しに2019年9-10月の間に起こった出来事を以下に書きましたが、状況を把握するのが面倒になるくらい事態が複雑です。そして、一番厄介なのが複雑な状況がいずれもたった1日の出来事で、好転したり悪化したりしています。
以下は長いので、全部読まなくていいです。次の段落まで流し読みして下さい。大事なのはいずれも「わずか1つの出来事で市場の期待が一転」しているということです。
- 【米中貿易協議】:10月の閣僚級会談が始まる直前までアメリカが中国企業等を取引禁止のブラックリストに追加する緊迫した展開。しかも、トランプ大統領は部分的な合意はしないと宣言している中、中国は自国に不利になる争点は協議しない意向を示した上に、協議を切り上げて帰国も計画していると報道されて、協議は難航必須と予想された。しかし、会談初日が終わった後、順調な交渉だったとトランプ大統領が発表。協議も予定通り2日間で行われることが発表され、市場は「今回の協議で最低でも部分的な合意がありえる」とわずか1日で期待が大きく好転。
- 【英EU離脱】:3年に及んで合意を得られていなかった離脱交渉の期限が10月に迫っている中、10月10日にイギリスとアイルランドの両首相が会談。会談後、両首脳は「離脱への道筋が見いだせる」との見方で一致したと発表。市場の期待がわずか1日で好転。
- 【中東情勢】:サウジアラビアの石油施設がドローンによる攻撃を受け火災発生。サウジの石油生産能力が半分になったと報道。ところが、サウジアラビアは数週間でほぼ攻撃前の生産能力復旧を宣言。しかし、一息ついた約1ヶ月後、今後はサウジアラビア沖でイランのタンカーが爆発したことで一転、中東に再び緊張感が走る。
ニュースに振り回される個人投資家は分が悪い
さて、ニュースばかり見ているとどうしても、次のような考えになりがちです。
- 「米中対立が激化したら、リスクを資産の株を売ったほうがいいか」
- 「部分的な合意で関税がなくなったら、株を買い増したほうがいいのではないか」
ただし、上の1ヶ月の動きで見たように、高頻度で急転回する事態にあわせて株を売買していると、1ヶ月で目まぐるしいほどの売買をしなければいけなくなり、一貫性のある投資も難しくなります。
このような短期間でタイミングを見計らった投資は、どうしても圧倒的な情報量を瞬時に集まられるプロの投資家のほうが強いので、個人投資家にはどうしても分が悪くなってしまいます。
速さで勝るプロが買った後の高い株を買ったり、プロが売って安くなった価格で株を売ることになるので個人投資家はどうしても不利になるのです。
個人投資家とニュースの付き合い方
では、個人投資家としてニュースとどう上手に付き合えばいいでしょうか。個人的な考えでは、次の2つのスタンスが良いと思います。
- 【付き合い方1】:ニュースを見ず、何が起こっても株へ投資を続ける
- 【付き合い方2】:1つ1つのニュースを投資判断にしない
【付き合い方1】ニュースを見ず、何が起こっても株へ投資を続ける
1つ目は、そもそもニュースを見ないという潔い選択してです。実はこれはかなり有効です。
この方法が成功するポイントはニュースを見ないようにすることではなく、むしろ日々のニュースを見なくても良いような投資をすることです。
具体的な方法として、(1)購入銘柄を予め決めて、毎月定期的に購入する方法や、(2)アメリカ株全体に投資できるETFと呼ばれる商品を定期的に購入して長期に保有する方法があります。
【付き合い方2】1つ1つのニュースを投資判断にしない
ただし、これでは満足できない投資家も多いでしょう。投資を「他人から儲かるノウハウを教えてもらって、その通り実行するもの」ではなく、「生きていくための一生使う金融リテラシーを身につけようと」と思っている人に、ニュースを見るなと言っても無駄です。
そこで2つ目の方法としては、金融リテラシーを身につけたい人はどのように1つ1つのニュースと付き合えば良いかを考える必要があります。
あくまでも私の個人的な経験からは、次のようにするのが良いかなと思っています。
- ニュースのつながりを考える。
- ニュースの出来事ではなく、より客観的な指標を見て売買の判断をする。
一番補足が必要なのは「ニュースのつながりを考える」についてだと思われるので、これについてお話します。
ニュースのつながりを考える
10月の協議にも、米中は部分的な合意をする可能性があります。仮に、部分的な合意をすれば株式市場は上昇するでしょうが、この1つ1つのニュースで売買をするのでは、反応が早いプロに先を越されて高くなった株を掴むだけです。
ただ10月に部分的な合意を結んだとしても、過去のニュースとのつながりを見ると、決して楽観視できないことがわかります。
10月の部分的な合意の協議の前にも、米中で似た合意をしたことがありました。2019年6月の米中首脳会談で、米農産物の購入とファーウェイ取引禁止解除を約束し、今後新しい関税を発動しないと宣言しましたが、結局は両国とも合意を守らず、9月1日に互いに新たな関税を発動しています。
1つ1つのニュースではなく少しだけ俯瞰してみると、10月の協議で大事な争点を棚上げにして合意できるものだけで手を組んだとしても、今後の争点の協議が難航した場合には合意内容に反して、関税が引き上げられる可能性もあることがわかります。
過去のニュースのつながりを見ないと、その都度売買しプロに負ける失敗を繰り返すことになります。
ニュースの出来事ではなく、より客観的な指標を見て売買の判断をする
最後に、「じゃあ、個人投資家は1つのニュースや出来事ではなくて、何を頼りに売買のタイミングを判断するのか」とい疑問が湧いてきますが、より客観的な指標を見て売買の判断をするいうのが、今のところの解だと思っています。
毎月発表している企業の景況指数や消費者信頼感指数の変化を見て景気の低迷が見えたら売るでもいいですが、私はFRBニューヨーク連銀が発表している景気後退予測モデルと銅の価格はわりと景気の先行指標として使えそうです。
ニューヨーク連銀の景気後退予測モデル
ニューヨーク連銀の景気後退予測モデルはかなり高確率で過去の景気後退を言い当てているので、個人的にはオススメです。
調べ方はこちらの記事の後半で解説しています。
2020年夏に米景気後退か。ニューヨーク連銀の予測モデルが警告。
銅の価格を先行指標の使った景気把握
また、10年に1度しか来ない景気後退ではなく、もう少し短いスパンで先行指標が欲しい場合は、銅の価格がわりと使える気がしています。
こちらに検証した記事を掲載しています。
2019年だけでなく、これからますます先が読みにくい展開になることが予想されます。くれぐれも1つの出来事で一喜一憂しないように、ニュースとはうまく付き合いっていきたいところです。