先日、今後のアメリカがたどる道は3つのパターンがありそうだというお話をしました。
その3つは「2010年代のコロナ前のほどほどの成長率とインフレ率の景気に戻る」か「2000年代のITバブルのような株の熱狂が起こるか」、「1970年代のような高いインフレ率に悩むか」です。
2022年以降のアメリカ経済と市場が通るかも知れない3つのパターン
株に投資する時には、1年後や2年後の未来を見越して投資する必要があります。この記事では、2022年以降でいくつか起こりそうなパターンを書いて、それぞれのパターンで有利になる投資はどのようなものかを書いておきます。
そしてこの記事を書いている2021年4月時点の市場を見てみると、2021年から景気が急回復しても一時的で、その後は景気回復もインフレも緩やかになって【2010年型】の景気になると多くの投資家は見ているようです。
この記事のポイント
- 今後のアメリカはコロナ前のような緩やかな成長の時代、バブルのような時代、高インフレの時代のいずれかになりやすいと考えている。
- 市場の動きを見てみると、高インフレにはならずに景気回復の勢いは今後緩やかになっていくと、投資家の多くが予想しているように見える。
2022年以降にたどるパターンのおさらい
私は2022年以降にアメリカの景気が以下の3パターンのどれかになると思っています。
2022年以降に想定しているアメリカの景気のパターン
- 【2010年代型】コロナ前の低いインフレ率と金融緩和が続いた2010年代後半の状態に戻る(景気刺激策による2021年からの好景気は一時的)。
- 【2000年ITバブル型】好景気と金融緩和で株式市場が過熱して、ハイテク企業を中心にしたバブルになる。
- 【1970年代型】高いインフレ率と高い金利の環境が発生し、景気が低迷する。
コロナを一時的な現象だと捉えるなら、コロナ収束後に待っている世界はコロナ前の【2010年代】のような景気のはずです。
この時代は金融緩和が歴代最高値の株価を支えた一方で、景気はそれほど強くなく、インフレ率も2%をやや下回る低いインフレ率が続いていました。(この状態なら株は一番リターンが高く、国債もかなりの儲けが出ました。)
しかし、もしもコロナの不況を乗り越えるために打ち出した景気対策の規模が大きすぎたり、金融緩和が大きすぎた場合には、コロナ後の世界で市場か景気が過熱してしまう恐れもあります。
株式市場を過熱させた場合にはITバブルのような【2000年代型】の高揚感が訪れるかも知れません。
また、景気が良くなるのに金融緩和を続ければインフレ率が高くなって最悪【1970年代型】のような高インフレ時代になるかも知れません。
現時点で市場はコロナ前の2010年型を想定か
そして2021年4月時点の市場の動きをみるかぎり、多くの投資家は今のところ【2010年型】になると見ているようです。
中央銀行のFRBは以下のグラフのようなアメリカのGDP成長率予想を出していましたが、おそらく投資家の大多数も同じ姿を思い描いています。
出典:FRED
つまり、2021年の景気はかなり良くても、しだいにGDP成長率もインフレ率も2%に向かって成長スピードが緩やかになっていくと投資家は考えているようです。
そのような投資家の考えが透けて見えるのは、債権投資家の期待インフレ率(予想インフレ率)です。

今後5年の期待インフレ率は2.55%で、今後10年の同2.33%を上回っています。
これは今の景気が強く、年を経るほどに年々成長率が緩やかになっていく、上のグラフのような世界を投資家が思い描いているように見えます。
強いインフレ率予想も年内の金利引き上げもない
期待インフレ率が2%台にとどまっているところを見ても、1970年代のような二桁を超えるインフレ率とは程遠いです。
また、インフレ率が上昇すれば予定よりも早く政策金利を利上げするはずですが、投資家の年内の利上げ予想は現時点で約14%程度で少数派です。

つまり、市場は高いインフレ率はそれほど予想していないようです。
景気の回復期はすでに後半に入っているかも知れない
そもそも5年期待インフレ率が10年期待インフレ率を上回るのは、かなり珍しい現象です。
2000年以降を振り返ってみても、景気回復が後半に差しかかっているようなタイミングでしか発生していません。具体的には2000年代なら2004年から数年、2010年代なら2016年に一瞬見られただけで、いずれでも景気のほぼ折り返し地点と言える時期でした。
今回も同じような動きをするなら、既に景気は回復期の前半を終えてこれから緩やかになっていくのかも知れません。
まとめ
この記事では、債券市場の動向から投資家の景気の見方を推測していきました。
今のところ市場は2021年からの好景気は一時的で、これからアメリカの成長率は年々緩やかになっていくと見ているようです。
少なくとも5年-10年では高インフレよりも低インフレになると予想している投資家のほうが多いようです。
また、短期の期待インフレ率が高いのは景気回復の半ばに見られる現象だという点に着目すると、景気回復は既に折り返し地点を迎えている可能性もあります。
ただ、これからのアメリカの景気が【2010年型】になると早々に決めつけるのは誤判断になりかねないので、じっくりと様子を見ていきたいと思います。