小さい頃、「ヒカルの碁」というアニメを見ていました。
簡単に言うと囲碁を志す少年の成長の物語なのですが、プロになったばかりの主人公達をいつも気にかける一見温厚そうな中堅プロ棋士が、自分よりもランクが上の上流棋士の影で「自分を抜く存在は常に下から現れる。下を侮ってはならない」というような事を、ほくそ笑みながら、言い放つシーンがあった気がします。
当時まだ子供だったため、そのシーンはおぼろげに覚えているだけで内容は間違っているかもしれませんが、本当に強い人間は虎視眈々と上を狙っているだけでなく、そして抜け目なく実力差関係なしに格下にも全力で叩き潰しに来るんだという、大人の本気の怖さをゾクゾクと背中に感じたのを覚えています。
Windows以外のPCを試し始めた韓国
さて、ここからが本題なのですが、Microsofに関して気になるニュースを見かけました。
韓国政府の一部署のパソコンでWindowsを使用しないでどこまで業務ができるかを実験して、うまく行けば段階的に他部署に広げる脱Windows化(Linuxと呼ばれるWindowsではない無料の製品の使用)を計画しているというのです。
さようなら、Windows」韓国政府、コンピュータのLinux移行を発表。(NEWS CARAVAN)
Windowsの搭載マシンを世界で10億台を軽く超えるユーザを持つ世界最大手のIT企業Microsoftにとっては、韓国政府のPCの脱Windows計画など些細なニュースかもしれません。実際、このニュースがMicrosoftの決算に与える影響はほぼゼロと言えます。
しかし、気になる点はあります。私はWindowsの真の価値は「パソコンと言ったらWindowsが入っているものと人々が思っている点」あると思っているのですが、Windows以外のパソコンでも問題ないことを人々が知ってしまったら、Microsoftのメッキが剥がれる可能性が、万に一度にでもあると思っています。
そして確率的には相当低いですが、メッキが剥がれた場合には、投資先としてのMicrosoftの価値(経済的濠)も崩れ始める恐れもあります。
後ほど、しつこいくらいに触れますが、Microsoftの製品はWindowsだろうがクラウドだろうが基本的に「イケてない製品」で、人々がそれに気づき出すとガラガラと音を立てて、崩れる可能性もなくはないからです。
ミュンヘンも脱Windows化に取り組んでいた
ちなみに、こうした行政の試みは韓国が初めてではありません。リンク先の記事にも書いてあるように、ドイツのミュンヘン市は韓国政府に先駆けて、有料のWindows OSをやめ、無料のLinux OSに切り替えて仕事を行う取り組みを2003年から行っていました。
しかし、Windowsで作ったファイルをLinuxで開くと改行がうまく表示できていないなどWindowsとの互換性の問題が見られたため、結局ミュンヘン市はLinuxを打ち切り、2020年からWindowsでWindowsに復帰させることを2017年時点で発表しています。
私が考えるMicrosoft製品の価値
なんだ、ミュンヘン市が先に実証していて、しかも結局Windowsに戻っているなら、やっぱりMicrosoftは安泰じゃないかと考えるのは早計です。
ミュンヘン市が懸念していた互換性の問題は世の中クラウド化が進んで段々解決されつつありますし、IT企業ではない行政のような一般的なITスキルの集団ですら、Windowsじゃなくてもやっていけると判断が出た場合には、世の中の脱Windows化が少しずつ進む可能性があるからです。
ちなみに私は、もう15年以上個人用PCでWindowsを使っていませんが、何も困ったことはありません。むしろ快適です。
仕事用PCでWindowsを会社から支給されることはあるのですが、周りの人間はPCを使いこなしている人ほど、Windows PCの中にLinuxを使えるようにしたりして、「イケてない」Windows標準機能から遠ざかる傾向がありました。
先程からWindowsやMicrosoft製品が「イケてない」と話をしていますが、何がイケてないのかを具体的に列挙します。総じて言えるのは、Microsoft製品以外なら同じことをもっと速く実行できるということです。
- Window PCの起動が遅く、時間が無駄。
- MacやLinuxに備わっている圧倒的な時短を実現するキー操作がWindowsでは不十分で、時間の無駄。
- MicrosoftのブラウザのIEは挙動が遅く、Google Chromeをダウンロードするためのツールになっている。
- 簡単な集計はGoogle Spread Sheetで十分。集計作業自動化も、Google Spread Sheetのほうが使いやすい。
- ちゃんとした統計をやりたい場合は、エクセルではなく無料ソフトRを使うので、エクセルの登場シーンがない。
- 経営コンサルタントをして実感するのは、そもそもパワーポイントを作る時間が無駄。
- マイクロソフトのクラウドのAzureを一部使ってみても、AmazonのクラウドAWSやGoogleのクラウドGCPよりも優れているところがほぼ無い。
…まだいっぱいあるのですが、この辺でやめておきます。
Windowsファンの方には、本当にお気を悪くされたと思います。すみません。
仕事場で見て感じるのは、PC作業での生産性を高める人間はまずはMicrosoftの製品を極める傾向がありますが、ある一定のITスキルになるとMicrosoft製品から距離をとっているということです。
Microsoftの離脱率と、ITスキルの高さは相関があるように見えます。
Microsoftの濠が崩れる時
先程も言いましたが、Microsoftにとっては、今回の韓国政府の脱Windows計画は取るに足らないニュースです。また、韓国政府は脱Windows化したものの、ミュンヘン市のように結局Windowsに舞い戻る可能性のほうがむしろ高いと思います。
しかし、ここで思い出されるのは、冒頭の囲碁のプロ棋士の発言です。Microsoftがこの韓国政府の脱Windowで足元を救われることは無いですが、Microsoftへの投資を考えるものとしては優位性を脅かす可能性がある出来事には、たとえ今は小さいものであっても目を光らせておきたいと思います。
「PCと言ったら、Windows」や「みんな使っているから使う、安心のMicrosoft Azure」が最大な価値だと思っているのですが、Microsoft製品以外にも良いものが世の中にたくさんあることを、世間の人が知ってしまったら、メッキが剥がれます。
ただ、おそらくこうした変化はすぐに起こるものではないです。
だから、私の購入銘柄候補の一つとしての、Microsoftは依然として変わりありません。
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では、本格的にMicrosoftのメッキが剥がれる恐れがあるのは、いつになるでしょうか。
私は、10年後の2020年代後半、今の小学生のような年代の子どもたちが社会に出る頃に変化が起きる気がしています。
本格的に、幼少期からスマホを使い、世界的にも教育の一環でプログラミングを行ってきており、ITリテラシーが高い世代には、Microsoftの良さが何もピンとこないことは多々あるし、そうした世代が世に出ていくに連れて、Microsoftの濠はなくなると思います。