景気が悪化する前や米国株が崩れるタイミングでは、たいてい格付けの低い社債が大きく売り込まれる傾向があります。
なので、私は社債を買っているわけではありませんが、社債市場の動きは意識して見るようにしています。
その社債市場ですが、そろそろターニングポイントに差しかかっているようなので、ここで状況を確認します。
この記事のポイント
- 2022年6月時点でハイイールド債は大きく売られ、米国債よりも5%も高い利回りがついている。
- 利回り差5%を開いたタイミングでは、過去に大きな出来事があった。ITバブルや世界金融危機の株価の下落が始まった時期がそうだった。
- 過去に利回り差5%になっても、大幅な株価下落を免れたのはいずれもすぐに金融緩和に動いた場合。今後FRBがどこで金融引き締めを止めるかが注目。
ターニングポイントを迎えている社債市場
私が注目しているのは、格付けが低い企業の社債(ハイイールド債やジャンク債と呼ばれる社債)の動きです。そのハイイールド債はそろそろ危険な水準にまで売られ始めているようです。
景気が悪くなる前にはハイイールド債が売られ、米国債と比べた利回り差が急拡大する動きがあるのですが、2022年6月現在では国債との利回り差は5%にまで広がっています。
この利回り5%という数字は普通ならほとんど見られない大きな数字です。
ためしに過去に利回り差5%を超えた時期を見てみると、たいてい何かの名前がついたイベントが起こっています。
- 1998年:ロシア通貨危機
- 2000年:ITバブル崩壊の直後
- 2007年:世界金融危機前の株価下落直後
- 2015年:ギリシャ債務危機とチャイナ・ショック
- 2018年:FRBの予想外の利上げ
- 2020年:新型コロナ不況
2022年6月現在もあとで振り返ると、何か名前がついて歴史に名を刻むような時期になるのかも知れません。
景気後退を回避するには
しかし、よく見返してみるとハイイールド債と国債の利回り差が5%を上回っても、必ずしも景気後退やその後の大きな株価下落につながったわけではありません。
景気後退に限れば、2000年以降で「ITバブル崩壊」「世界金融危機」「新型コロナ不況」の3つのみです。
その他、ハイイールド債と国債の利回り差5%を超えても景気後退を回避できた場合を見てみると、アメリカやその他の国がいち早く金融緩和をしたり、景気対策をしていることがわかります。
- 1998年:アメリカFRBによる保険的利下げ*で、景気後退回避。
- 2015年:EUによるギリシャ救済、中国利下げ。
- 2018年:アメリカFRBが利上げ即停止。保険的利下げ*で景気後退回避。
(*注:保険的利下げ:アメリカはまだ景気が良かったが、世界の景気低迷を考えて前もって利下げをした。)
もちろん、利下げをすればいつでも景気後退を回避できるわけではありません。世界金融危機や新型コロナ流行時のように金融利下げをしても残念ながら景気後退になっている場合はあります。
しかし、景気後退を回避するならハイイールド債と国債の利回り差が5%を超えるタイミングで金融政策を緩和的にする必要はあるようです。
まだ利上げを続けなければならないアメリカ
最後に話を2022年現在に戻すと、今のアメリカはハイイールド債と米国債の利回り差が5%を超えているので、本当なら少なくとも利上げは止めたいところです。
しかし、アメリカでは相変わらずインフレが厳しいので、利上げ停止はまだまだ先の話になりそうです
同じようにハイイールド債と米国債の利回り差が5%を超えても、なかなか利下げに踏み切れなかった例はITバブル崩壊時に見られます。このときは下図のように結局、ズルズルと大きな株価の下落と景気後退を招いています。
利回り差とFRBの動きの関係だけで言えば、今の状況はこのITバブルの時期に似ているというのは、米国株投資家にとって嫌な印象です。