「Googleが将来に向けて、やっていることを知りたい」、「Googleって、投資先としてどうなの?」と気になっている人向けの記事です。
Googleの株を投資する場合には、親会社のアルファベット(シンボル:GOOGLまたはGOOG)を買うことになります。
この記事では「Googeやアルファベットの関連会社が取り組んでいる事」と「近年の株価や業積などの数字」の定性と定量の両面を見て、投資先としてのアルファベットの魅力を見ていきます。
あらかじめお断りすると、この記事は結構長いです。アルファベットは新しい分野に次々と投資して挑戦しているので、直近の1年間の動向だけでも、これだけの分量になっています。
Google株の銘柄分析:ビジネス動向編
- インターネット広告業界の中で、支配的な位置にいるGoogle
- 大きな成長余地を残す広告ビジネスとそれを狙うGoogle
- AIを搭載したハードウェアに顧客接点を広げる戦略
- 次世代のコンピュータ、量子コンピュータの開発で業界をリード
インターネット広告業界で圧倒的な地位にいるグーグル
Googleの主なビジネスはインターネット広告です。
Google検索はユーザに無料で提供されていますが、Googleは検索結果画面に広告を表示することで企業から収入を得ています。
テレビ・ラジオ・雑誌・新聞などの従来型の広告に比べて、インターネット広告が伸びていることは有名です。ネット広告市場は約22%で成長していて、この業界は勢いがあります。
広告を扱っている米国企業は多数ありますが、GoogleとFacebookの2社はこの業界をリードする存在です。米国の広告収入の金額を比較してもGoogle、Facebookが他を圧倒していることがわかります。
なぜこれだけGoogleが広告業界をリードできるかですが、Google検索の圧倒的なシェアの高さがものを言っています。2019年6月時点のインターネット検索の世界シェアは92%と、独占状態にあります。
世界検索エンジン | 19年6月時シェア |
---|---|
92.6% | |
bing | 2.5% |
Yahoo! | 1.8% |
Baidu | 1.1% |
出典:statcounter Search Engine Market Worldwide
つまり、グーグル検索の高いシェアを利用して、年率20%以上で拡大しているインターネット広告市場でトップに立っている企業がGoogleだと言えます。
大きな成長余地を残す広告ビジネスとそれを狙うグーグル
「でも、2000年代から既にネット広告は勢いがあったし、そろそろ市場の成長も止まるんじゃないの?」と思う人もいると思います。
確かに、グーグル検索の結果画面に乗せる広告の伸びしろはそれほど大きくないかも知れません。グーグルもそれがわかっているので、次々と新しい手を打っています。
- YouTubeなどの動画広告に注力
- 世界のインターネット人口を増やして、インターネット広告市場を大きくする。
- 人口増加を見越して、発展途上国のシェアを伸ばす。
- AR技術で、空間に広告を浮かび上がらせる技術を展開する可能性
動画広告へのフォーカス
近年インターネット広告で大きなトレンドになっているのは、動画広告です。一昔前にグーグルがYoutubeを買収したのも、動画に広告を配信できるようにするためでした。
長い時間動画を見れば、その分だけ広告を流すチャンスが増えることになります。
長時間動画の代表といえばゲーム動画ですが、GoogleはYoutube画面からボタン一つで瞬時にゲームができるStadiaと呼ばれる新サービスを、2019年から米国で開始しています。
2019年Google最大の一手。ゲーム版ネットフリックス、Stadiaの価値を解説します。
Googleはゲーム版ネットフリックスと呼ばれるゲーム定額制ストリーミングサービスのStadiaのリリースしました。「ゲームストリーミングサービスって何?」「ゲーム業界にGoogleが参入して勝てるの?」という疑問に答えます。
Stadiaは、Youtubeと同じようにダウンロードしながらゲームができるようにする、ストリーミングという技術を使っています。
音楽や映画は見たいときにダウンロードしながら楽しむスタイルに変わりましたが、ついにゲームも遊びたい時にダウンロードしながら遊ぶ時代が来ました。
- 音楽ストリーミング:Google Play Music
- 動画ストリーミング:YouTube
- ゲームストリーミング:Stadia
ゲームほどの大容量コンテンツでもストリーミングサービスを始めた背景には、2019年から徐々に次世代通信(新規格Wi-Fi6や携帯電話通信網5G)が始まることがあります。今後ネットの速度がさらに増すことを見越して、手を打ってきています。
インターネット人口の拡大
実はGoogleは世界のインターネット人口を増やして、広告ビジネスを拡大させる計画があります。
2019年時点で、世界中でインターネットが使える人はたった50%ほどしかいません。
全世界でインターネットが使えるようになれば広告ビジネスを拡大できるという考えから、気球を使った世界のネット人口を増やす取り組みも進めています。
Googleが目指す、世界中の人々がインターネットを使える世界。
Googleが進める近未来的なプロジェクトの一つにLoonと呼ばれるものがあります。まだインターネット回線が行き届いていない地域に、インターネット環境を提供するためのプロジェクトです。ここでは、GoogleがLoonを使って何をしようとしているのか、Loonはどういう仕組みなのかに触れたいと思います。
ただ、残念ながらこの取り組みはなかなか進んでいません。
でも、テスラのイーロン・マスクCEOが率いるスペースXやアマゾンは、大量の人工衛星をばらまいてインターネット通信網を作り、世界中でインターネット接続ができる環境を作りはじめています。
棚からぼたもちではありますが、グーグルはこの恩恵を受けて、広告ビジネスを拡大できるチャンスを手にしつつあります。
完成すれば全世界で接続可能。2020年は人工衛星ネット通信網の幕開けで、デジタル広告に追い風。
2020年にはイーロン・マスクCEO率いるスペースXが人工衛星インターネットサービスをアメリカとカナダで開始すると見られています。これが完成すれば、世界中でインターネット接続できる環境ができあがりネット人口が急増するため、デジタル広告ビジネスに追い風が吹いています。
人口増加が期待できる発展途上国に投資
Googleの広告ビジネスが将来的に拡大できるように、人口増加が見込まれるインドやアフリカで検索シェアをとっていることも忘れてはいけません。
また、低速で不安定なネット環境でもGoogleのスマホアプリが使えるように、容量が小さくて、ネット接続の中断が起こっても影響をうけにくい「軽量アプリ」を発展途上国向けに作成して、これらの国の人口増加の波に乗ろうとしています。
GoogleとFacebookが軽量アプリを作る理由。デジタル広告の伸びしろ
近年、スマホアプリの軽量化が進んでいます。GoogleやFacebookにSpotifyなどが続々と軽量をアプリを出しています。なぜ、このような軽量アプリをIT企業達は熱心に作っているのでしょうか。特にGoogleやFacebookは10年後も大きく成長する余地があると思っていますが、その理由も交えてお話します。
AR技術、空間に広告を浮かび上がらせる可能性
近年のグーグルは現実世界のリアルタイムの映像にCGを組み合わせるARと呼ばれる技術の開発にも取り組んでいます。
たとえば、GoogleマップにARを技術を組み合わせると、今見えている周りの景色を表示しながら道案内ができるようになります。
この技術を使えば将来的に、現実世界のリアルタイムな映像に広告を入れることも可能になるかも知れません。そうなれば、GoogleはPCやスマホなどの画面の外に飛び出して広告を出せるようになるので、大きなチャンスが眠っています。
ARクラウドはデジタル広告の未来
ガートナーが発表した2019先進技術ハイプ曲線で、紹介されているものの中で、私が注目している1つが「ARクラウド」です。ガートナーのハイプ曲線では、まだまだ「黎明期」に位置していて、本格的に世の中に広まるまでには5-10年かかりますが、将来性があります。
AIを搭載したハードウェアに顧客接点を広げる戦略
Googleの戦略は2016年から大きな方向転換をしています。
「GoogleはモバイルファーストからAIファーストの世界へ移る」、「スマートフォン、ウェアラブル(時計・イヤホンなど)、自動車、ホームの4分野でAIを使って賢くしていく」とピチャイCEOが宣言しました。
広告モデルの売上を増やすためには、多くのユーザに長い時間Googleサービスを使ってもらう必要があります。ユーザがGoogleのサービス・製品に触れる接点を増やすため、Googleはスマホ・スピーカー・時計などのハードウェアビジネスを展開しています。
なぜ、Googleは収益性の低いハードウェアビジネスに乗り出すのか
一般的にハードウェアは、ソフトウェアに比べると収益性が低いです。つまり、頑張った割に効率が悪い商売だと言われていますが、Googleやアマゾンやアップル等のIT企業はなぜハードウェアを販売しているのでしょうか。その理由を考察します。
すでにスマホ・時計などを売っているライバル企業に勝つための戦略が、Googleが得意とするAIをハードウェアに組み込むという作戦です。2016年以降のGoogleはスマホ・時計・車など身の回りの製品にAIを組み込んで販売する行動に出ています。
Google、ヘルスケアデバイスFitbitに買収提案。狙いはAIファースト戦略。
グーグルがヘルスケアウェアラブル機器のFitbit(フィットビット)に買収提案をしているようです。この背景にあるのは「あらゆるモノをネットとAIでつなぐ世界」を目指すグーグルのAIファースト戦略だと思っています。
その取り組みは少なくとも、車とドローンでは既に成功しつつあります。Googleの自動運転開発部門が分社化して出来たWaymo社は、世界で初めて自動運転のタクシー配車サービスを開始するなど、この業界をリードしています。
グーグルの自動運転Waymoが大きくリード。自動運転開発競争に終止符か。
少々早いですが、自動運転技術の開発競争はすでに勝負がついている可能性が高いです。そのトップに立つのは、やはりGoogleの自動運転Waymoでした。Waymoは2018年に世界初の自動運転配車サービスアプリを開始、さらに自動運転車の量産化大勢に入っており、安全性の面でも他社に比べて数段上回っていることがわかりました。
UBSはWaymoを高く評価していいて、2030年にはWaymoの売上は1,140億ドルと試算しています。2018年のGoogleの売上が1,368億ドルなので、あと10年でwaymoは2018年時のGoogleに迫る巨大企業になると見ているようです。
また、自動運転で荷物を配送するドローンサービスWingもサービスを開始しています。
Googleのドローン配送サービスWing、ついにアメリカの大空を舞う。
Googleの関連会社でドローン配送サービスを手掛けるWingが、アメリカのバージニア州でついにドローン配送の試験飛行を開始しました。アメリカのドローン配送サービスとしては初めてになります。
2020年代や2030年代にはヒトとモノの移動が大きく変わることが予想されていますが、アルファベットはその中心技術を持っています。
次世代のコンピュータ量子コンピュータの開発で業界をリード
Googleの取り組みの最後は、かなり先の将来の話をします。
今後20-30年後で花開くとされている次世代のコンピュータに、量子コンピュータというものがあります。今までのコンピュータと仕組みが全く異なるので、今まで何万年、何億年かかっても処理できなかった計算ができるようになる画期的な技術です。
完成すればあらゆる世界が変わると言われる、このコンピュータの研究でもGoogleはリードしています。
グーグル量子コンピュータでスパコン超え性能「量子超越性」を達成。一般人の私達が抑えておくべきポイント
グーグルは次世代のコンピュータと言われる量子コンピュータで、従来のスーパーコンピュータの性能を超えの性能「量子超越性」を達成したと科学誌ネイチャーで発表しました。スーパーコンピュータで10,000年かかる計算を量子コンピュータを使ってたった200秒で解いた模様です。このニュースで抑えておくべきポイントをまとめます。
>>【数式なし】量子コンピュータのニュースを読むための知識まとめ
次世代コンピュータを期待して投資するにはまだ早いですが、世の中にまだ存在していない必要な技術は自分たちで作るという、Googleらしい取り組みです。
Google株の銘柄分析:株価・業績編
ここからは、内容をガラッと変えてGoogle株(アルファベット株)のリターンと業績について触れていきます。
GoogleとS&P500のリターン比較
過去10年間のGoogleと米国株(S&P500)の株リターンを比較を見てみます。
Googleかなり優秀ですね。アップルやアマゾンほどの派手さは無いものの、終始安定して株価が上昇していることが分かります。
アルファベットの収益構造
アルファベットは数多くの小会社を抱えますが、基本的にGoogleが99%を占めます。
- アルファベットの中で、Googleが売上の99%を占める。
- Googleの売上は84%が広告収入。クラウド・スマホ・定額制音楽サービスなどの広告外収入は16%。
注目はGoogleで広告以外の収入が前年比40%で成長していることです。
近年はGoogleのスマホ(Pixelシリーズ)や、クラウドの売上が増えていて、広告だけにかたよっていた収益源が、多様化する兆しが見えます。これは投資家にとっては朗報です。
売上(100万ドル) | 19年3Q | 売上比率 | 前年比 |
---|---|---|---|
Google(広告) | 33,916 | 84% | 17% |
Google(広告外) | 6,428 | 16% | 39% |
Google以外の子会社 | 155 | 0.4% | 6% |
合計 | 40,499 | 100% | 20% |
アルファベットの業績
収益グラフを見ると、かなり右肩上がりで順調です。
あえて良くない点を上げるとすれば、近年は利益率が鈍化していることです。以前は売上に占める純利益の割合は30%半ばまであったのですが、この数年は20%前半まで落ち込んでいます。
2017年以降、さまざまな分野に積極的に投資していたので、その影響もあると思います。
フリーキャッシュフローは右肩上がりで健全な経営です。ただ、2017年以降投資を増やしていて、キャッシュフローも2017年をピークに減少していることがわかります。ここでも近年の投資の増加の様子がわかります。
つまり、近年のGoogleは広告ビジネスで得た現金を使って、別の事業を育てる再投資の時期に来ています。
決算
こちらにアルファベットの直近の決算記事をまとめておきます。決算ごとに随時更新予定です。
- 【20年2Q決算】アルファベット予想超えの決算も、初のマイナス成長
- 【20年1Q期決算】Google、決算で株価大幅上昇も不安の残る内容
- 【2019年3Q決算】Google、クラウドの費用がかさみ利益が伸び悩むも、広告ビジネスは堅調
- 【2019年2Q決算】絶好調のGoogle、決算発表後に株価8%上昇。
まとめ:アルファベット(Google)株をおすすめする理由
私はアルファベット(Google)の株をおすすめしているだけでなく、長年実際に保有しています。この株を保有する理由は以下2つです。
- 今後も拡大が見込まれているインターネット広告の市場で、長年高いシェアを維持する力がある。
- 優秀な研究者・開発者を抱えて今後の技術を自ら作り出している。(先行者利益を得やすい状況にある)
現時点でGoogleはweb広告で高いシェアを取っていますが、今後ますます拡大する市場で高いシェアを維持する工夫をしているのは、既にお話したとおりです。
また、Googleは近年、自動運転、AR、ストリーミングゲームなどたくさんの新しい技術に挑んでいます。特に自動運転については、既に10年以上開発を進めてきましたが、2020-30年代で大きく発展する分野です。
IT業界の内部にいるとわかるのですが、同じIT企業でも新しい技術そのものを作っていく企業と、既存の技術を組み合わせて商売をする会社と2つに別れます。
たとえば、Google・IBM・Facebook・Twitterはまだ世の中にない技術を作り出しては無料で公開し、世の中の発展を加速させる先駆者的な技術の企業、アマゾン・マイクロソフト・アップルは既存の技術を組みあわせて稼ぐタイプの商売上手な企業です。
2010年代はスマホやクラウドなど既存技術の組み合わせた製品・サービスが流行りましたが、今後注目されている自動運や量子コンピュータなどは、技術がないと展開できないサービスも多いです。
スマホやクラウドではGoogleは出遅れましたが、ようやく次のブームでは、Googleは波に乗る準備ができている状態だと言えます。