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世界各地で貿易が急減速。2008年以来のマイナス成長圏内に突入。

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米中の貿易戦争が、世界の景気に影響を与えるのではないかとの懸念が毎日のようにニュースに流れています。しかし、世界の貨物取引量を見る限り、既に2019年上半期の時点で世界の貿易取引量は急減速しているようです。

上のグラフは世界の貿易取引量を表していますが、2019年には前年同期比の取引高成長率でマイナスに落ち込んでいます。取引高のマイナス成長は2000年、2008年以来の出来事で、この2つの年はともに景気後退期にあたります。

ふむ。とっても心配なデータですね。

先日の記事で主要な3つの投資銀行が、2019年の米国経済についてかなり楽観的な見方から悲観的な見方まで、三者三様の見解があることを紹介しましたが、私はやはり一番悲観的なストーリーのモルガン・スタンレーの意見に近いです。

モルスタ、ゴールドマン、JPモルガン三者三様の相場観。

モルガン・スタンレーは「そもそも米中貿易戦争が加熱する2019年5月以前から、景気は減速している」という主張を持っていますが、貨物の取引高の推移を見てもこの主張と一致するように見えます。

もう少しだけ、細かくデータを見てみましょう。確認できたデータは多くないのですが、世界の主要な航空貨物や船貨物の取引高は軒並み減少か良くても横ばいで推移していますが、その傾向は米中貿易が加熱した5月より、もう少し早くから始まっているように見えます。

世界主要空港で取引高が減少する航空貨物

航空貨物は高価で急ぎの品物を主に取り扱いますが、貨物セクターだけでなく、景気全般の先行指標として用いられることがあります。主要空港の直近3ヶ月の貨物取引高をみていると、軒並みよろしくありません。

  • 世界最大の航空貨物を誇る香港国際空港、3-5月の貨物高が前年同期比5%超減少
  • 米テネシー州メンフィス空港の貨物は、2-4月に前年同期比で約1%減少
  • フランクフルト、2-4月に前年同期比で約3%下落
  • ロンドンヒースロー空港、3-5月の貨物高が前年同期比4.5%減少。2013年以来最悪

この内、ロンドンはBrexitによる混乱もあるかも知れませんが、その他の空港もかんばしくありません。

香港国際空港の取引高推移:

テネシー州メンフィス空港の取引高推移:

ロンドンヒースロー空港の取引高推移:

世界主要港でも取引高が減少する船貨物

この傾向は船貨物でも同じように起こっています。

  • 海運輸送の最大規模の米カリフォルニア州ロングビーチでは、3-5月のコンテナ取扱高が前年同期比10%減少。2015-16年以降で最悪の水準。
  • シンガポールの3─5月コンテナ取扱高は前年同期比1%増加したものの、昨年第1・四半期の16%増に比べて急減速。

カリフォルニア・ロングビーチの取引高推移:

シンガポールの取引高推移:

以上、世界各国で軒並み減速する貨物輸送の現状を見ていきました。米中貿易が加熱すれば、低調な傾向は今後も間違いなく続くでしょう。また米中貿易戦争が収束に向かったとしても、そもそもの景気サイクルが原因で取引高が回復しないようであれば、世界各地で景気後退に陥る可能性もあると思います。


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