昨晩、アトランタ連銀がGDPNowというGDP成長率予想を更新したのですが、前回よりもさらに引き上げたようです。
このブログを書いている時点で最新の予想では2023年第3四半期のアメリカの実質GDP予想は+5.9%となっています。
この記事のポイント
- GDPNowは2023年7-9月期で前期比年率+5.9%を見込んでいる。
- 実質GDPの予想を押し上げているのは個人消費。個人消費だけで+3%を牽引すると見られている。
- しかし、このままアメリカ経済が回復を続けるようにはまだ見えない。学生ローン支払い再開、金融引き締めの悪影響がまもなく企業利益に及ぶこと、商業用不動産の不調など不安材料は多い
高成長を予想するGDPNow
すでに冒頭でもお話をしましたが、現時点でGDPNowは2023年7-9月のアメリカの成長率予想を前期比+5.9%と見ています。
今年のはじめは多くの投資家が、2023年のアメリカが景気後退になると考えていたはずなのに、5.9%成長というのはとんでもない好景気の数字に見えます。
この5.9%の内訳を見てみると、成長を牽引するのは個人消費のようです。
上の図で寄与度を見てみても、5.9%成長のうちの半分以上の3.3%を個人消費が稼ぐようです。
たしかに、最近は雇用が強く、そして賃金の伸びもまだまだじわりと伸びています。しかし、それにしてもこの経済成長率は高すぎな気がします。
不安材料
このGDP Nowの数字を見ていると、2023年の景気後退はなさそうな気配しか感じないのですが、この1年間このブログで確認してきたアメリカの景気後退のサインは何だったのでしょうか。
本当にアメリカはこのまま健全な景気回復を遂げるのでしょうか。
私はまだ感覚的にアメリカの経済に強気になれません。確かに第3四半期はまだ調子がいいとしても、次の項目が今後のアメリカの押し下げ要因になると思っているからです。
- (1)学生ローンの支払い再開(10月以降)
- (2)金融引き締めの悪影響が企業利益や消費に今後出始める(Q3からQ4以降)
- (3)銀行をめぐる不安の再燃(2024年以降)
(1)の学生ローンの再開については、影響があるならわかりやすく10月以降の消費の落ち込みで現れるはずです。
また、気になるのは(2)の今回の金融引き締めはまだほとんど企業利益に悪影響を与えていない件です。
先日データで見たように、金融引き締めが企業の利益に悪い影響を与えるのは1年半から2年弱はかかります。2022年3月に引き上げた金利の影響は、今はまだ企業利益を押し下げてない段階だと言えます。
この秋か冬に金利の影響で企業の利益が低下するなら企業はいよいよ雇用を弱めるはずで、そうなると強い雇用と消費は弱まる恐れがあります。
最後に、(3)の銀行を巡る問題については私はまだ解決していないと思っています。今後は商業用不動産の不調で地銀を中心に問題になり、銀行不安が次の局面に入ると思っているのですが、それが起こるにはまだ時間がかかると思われます。
一足早く不動産価格の下落が起こっていた中国の不動産業界でようやく債務不履行が問題になり始めている程度なので、アメリカの商業用不動産が問題化するのは2024年以降の話だと今のところ思っています。