前回の記事で、「さらなる利下げを求めるトランプ大統領は欲しがりですね。」といった内容のことを書きました。
10月1日に発表されたアメリカの製造業の景況感は悪化していて歯止めがかかっていませんでした。特に海外から受注に苦戦している様子が伺えたのですが、中央銀行のFRBが利下げをしないせいでドル高になっていて、製造業が苦戦しているとトランプ大統領が主張し、利下げを迫ったのです。
アメリカの金利を下げれば、他の通貨に比べて米ドルをもつメリットが減るのでドル安になります。そうすれば、アメリカ製品が安く売れるので製造業の輸出が増えるという考えです。
9月米製造業の景況悪化で株式市場は下落。非製造業や個人消費への影響拡大に注視。
しかし、よくよく調べてみると利下げを欲しがり始めたのはトランプ大統領だけではなかったようです。
市場も10月1日に発表された製造業の景況感の悪化を受けて、たった1日で態度を急変させています。
10月30日の金融政策決定会合FOMCで景気刺激策のために利下げをすると予想する人は39%でしたが、10月1日にはそれが64%まで上昇しています。
トランプ大統領が欲しがりなら、市場は手のひら返しがお得意のようです。
利下げ打ち止めを考えていたFRBは悩ましい状況
さて、FRBも大統領や市場の顔色を見ながら、金利を決めているわけではありませんが、この状況には大変悩んでいることでしょう。
なぜなら、9月の金融政策決定会合FOMCで2回連続で利下げを決定して、政策金利を1.75-2.00%としましたが、2019年末までは現状の1.75-2.00%が適温と考えていたFRBメンバーも多く、中には現状よりも高い2.00-2.25%の金利が良いと考えている人もいたからです。
以下は、9月18日に公開されたFRBメンバーの金利予想ですが、一番左端の2019年末での金利予想は17標中の10票が「現状の水準」または「0.25%の現状よりも高い金利水準」を想定していました。
少なくとも、利下げは打ち止めしたいというのがFRBのメッセージだったと思うのですが、前々から大幅利下げを求めているトランプ大統領はさておき、市場までもが「10月に利下げしたほうがいいのでは?」と提案をしてきていることになります。
FRBは悩ましいですね。
FRBはアメリカは当面景気後退しないという見解を持っているのに、市場の意見に従っていたら金利がどんどん下ってしまいます。そうなると、本当にまずい景気後退局面が来た場合に、景気刺激策として金利引下げをする余地がドンドン少なくなってしまいます。
ただし、上でも言ったように市場の予想は大変移り気です。10月上旬に発表される雇用統計やその他の指標が問題なければ、再度市場の金利引下げ予想も低下してくると思われます。
10月は企業の決算発表シーズンでもありますが、経済指標もいつも以上に要チェックです。