スネ夫・ジャイアン理論
社会人になってまず知ったのは、それなりに地位が高くなるとメッセージを伝えることが重要な仕事になるということです。
私は、社会人1年目を外資企業の開発部署からスタートしましたが、私のチームは新年の社長メッセージに異常なほど耳を傾けていました。
社長が目指している会社の方向性に沿った製品開発をしていることをアピールできなければ、開発費の予算を確保できず、開発メンバーの何人かを切り離すか、最悪チームを解散する必要があるからです。
学生時代の校長挨拶とはわけが違うことを思い知ったのです。
特にアメリカではメッセージを発する側が、聞き手がどう受け取るかをかなり意識して発言していることが多い気がします。
先日、ナバーロ大統領補佐官がFRBに大幅な利下げを要求する発言をした翌日に、今後はトランプ大統領が畳み掛けるようにFRBに利下げを求める発言をしたように、発言の内容だけでなく「誰」が「どの順番」でしゃべるかも意識してメディアを使っています。
基本的によく使われるのが、ジャイアンのような主役クラスが出てくる前に腰巾着のスネ夫がジャブとなる発言をし、その後にジャイアンが同じ発言を繰り返すパターンです。スネ夫・ジャイアン理論ですね。
このスネ夫・ジャイアン理論は、気をつけてみていると結構いろんなところで使われていることに気づきます。
FRBも駆使するスネ夫・ジャイアン理論
アメリカ中央銀行のFRBもまたスネ夫・ジャイアン理論の巧妙な使い手です。
例えば、2019年5月の大幅な株価下落に見舞われた後、セントルイス連銀総裁(スネ夫)がまず金利引下げを示唆する発言をし、その翌日FRBパウエル議長(ジャイアン)が同様の発言をしたことで、冷え込んでいた投資家心理は一気に回復して株価は持ち直しました。
「米政策金利引き下げ、早期に必要になるかも知れない」セントルイス連銀が発言(2019年6月4日)
「米中央銀行は経済拡大のために適切に対処する」FRBパウエル議長(2019年6月5日)
これも一種のスネ夫・ジャイアンです。
ジャクソンホールでのパウエル議長講演前の各連銀の発言
8月23日は年に1回のジャクソンホールでの経済シンポジウムがあります。そこではFRBパウエル議長の講演が予定されていますが、その前の週から連銀総裁が9月の政策決定会合FOMCでの利下げに賛成する発言が相次いでいます。
利下げ支持検討、経済阻害リスク考慮=米クリーブランド連銀総裁(ロイター)
追加利下げおそらく必要、迅速な対応を=ミネアポリス連銀総裁(ロイター)
利下げに賛同しているクリーブランド連銀総裁もミネアポリス連銀総裁も、次回9月FOMCでの投票権を持っていないのですが、そこにまたスネ夫らしさを感じてしまいます。
市場の予想では9月のFOMCでは100%利下げをすると見ていて、その大半は0.25%引き下げで政策金利を1.75-2.00%にすると見ています。
FRB議長がどんなメッセージを発するか、それを市場がどう受け取るのかに注目が集まります。