アメリカの中央銀行FRBの資産の増加ペースが2020年になってから、鈍っています。
「ん?それがどうした?」と思われるかもしれませんが、資産増加ペースが鈍っているということは、FRBが市場に資金を供給するペースを鈍らせている可能性があります。
2019年9月以降は、FRBが市場にたくさんのマネーを供給してきて、株などの資産価格が上昇していました。なので、FRB資産増加ペースが鈍ったり、今後減少に転じれば、米中貿易や新型ウイルスよりもずっとアメリカ株に大きなインパクトを与える可能性があります。
この記事のポイント
- FRBの資産の増加ペースが2020年に入ってから鈍っている。
- FRBは2019年9月から不安定だった市場にマネーを供給するために、市場の短期債を購入して資産として持っていた。
- この資産の伸びが鈍化していることは、市場への資金供給ペースが落ちているかもしれない。
- FRBから供給された資金は、アメリカ株の押し上げにも貢献していたので、FRB資産ペース鈍化はアメリカ株にも影響しうる。
『景気拡大は何年たったから終わるものというものではなく、FRBが終わらせるものだ』と言われます。
1月29日に控えた2020年最初のFRBの会合(FOMC)では、2019年の市場を大きく支えた資金供給ペースを今後どうしていくのかパウエル議長の発言に注目が集まります。
FRBが資産を拡大した背景
FRBの資産ペースが鈍化の話の前に、「なんで、そもそもFRBの資産が増加してるんだっけ」という背景からおさらいしておきます。
FRB資産増加の背景
- 2019年9月にレポ市場(超短期な現金調達市場)の金利が急上昇した。
- レポ市場は、銀行や投資家が税金支払いなどの一時的な現金を調達する大事な機能を持っていた。
- このままでは、銀行や投資家が現金を用意するために、泣く泣く国債や株を売って、資産価格下落の動きが出てしまう。
- それを防ぐために、FRBは市場から大量の短期債を購入して、銀行や投資家の現金を増やした。
- 結果として、FRBが保有する債権が膨らんで資産額が増え、投資家は得た現金で資産を買って、株価などが上がった。
2019年9月以降の流れをまとめる、上のような感じでした。レポ金利とか、レポ市場とか一部わかりにくい言葉はありますが、詳細はこちらで解説しましたので、あわせて一読下さい。
レポ金利とは何か。どうして金利は急上昇したのか。
「何度聞いても理解しにくいレポ市場・レポ金利ってわかりづらい」という人のために、1回でわかるレポ市場・レポ金利を解説します。またアメリカで2019年9月で突如レポ金利が上昇しましたが、その背景にも触れていきます。
もちろん、FRBの短期債購入だけが米国株上昇の要因ではないですが、2019年9月以降米国株は急上昇しています。
2020年からFRB資産額の増加が鈍化
しかし、最近のFRBの資産額の推移をみると、変化が2つ見られます。
- 2019年9月以降、資産額が急上昇していること(市場への大量な資金投入したことを意味)
- 2020年1月に、資産額の伸びが鈍化(市場への資金投入のベース鈍化か)
※グラフはFREDで作成。FREDの使い方はこちらを参照
もちろん、2020年1月で資産の伸びが止まったのは、FRBが資金供給を減らしたのではなく、レポや短期債が満期を迎えて現金化された(償却した)影響もあります。
1月29日には2020年最初のFRBの会合が予定されています。今回の会合では利上げも利下げも無いと予想されているので、レポ・短期債購入をFRBが今後どう継続させるかの発言に注目が集まりそうです。