7月のアメリカの金融政策を決める会議(FOMC)の議事録が公開され、それを受けて8月17日の株式市場は少し下げる場面がありました。
>>米国株続落、テーパリングに焦点-FOMC議事要旨受け(ブルームバーグ)
アメリカ中央銀行FRBが毎月購入してる債券の金額を、2021年内にも縮小開始するという意見が見られたことに反応して株が売られたようです。
それでも、この日の下げ幅は気にするほどの大きさではなかったと思います。
今後もこうした債券購入の縮小(テーパリング)の話が進んでいくと思いますが、国債が大きく売られない限りは株価の下落を気にしなくてもよいと思っています。
この記事のポイント
- FOMCメンバーの多くは2021年内に債券購入の縮小(金融緩和の縮小)があり得ると考えている模様。
- これを受けて株は下落したが、気にするほどの下落ではなかった。2013年の債券購入縮小開始でも株はそれほど下落しなかった。
- アメリカの中央銀行の政策変更はかなり注意は必要だが、まだ株から手を引く段階ではない。
7月のFOMC議事録について
7月のFOMCの議事録が発表されましたが、ざっと確認したところ、以下が注目ポイントかなと思いました。
議事録サマリーの注目ポイント
- 2021年内の債券購入の縮小を示唆。一部のメンバーからは2022年早い時期まで待つのが好ましいという言う意見もあった。
- インフレのゴールは到達し、雇用はゴールに近づきつつある。ただし、政策金利を引き上げるほどの雇用は強くない。
- 「債券購入の縮小」と「政策金利の引き上げ」は別物。
- 何人かのメンバーは上昇しているインフレについて懸念を表明。
ただし、こうした内容が出てきても多くの投資家にとっては、想定の範囲内だったのか、市場はそれほど大きく動きませんでした。
10年国債利回りもほとんど変化がありませんでした。(つまり、ほとんど売られなかったようです)
米国株は国債に比べたら割高ではないという判断で米国株は買われてきたので、国債が売られなければ株価は心配する必要はなさそうです。
債券購入縮小が始まってもしばらくは株に強気
2021年内には中央銀行の債券購入の縮小が始まりそうですが、それでも(インフレの高止まりがなければ)米国株はまだしばらく大丈夫だと思っています。
前回は2013年に同じような債券購入の縮小が議論されたのですが、そのときも米国株は大きく減少しませんでした。
それどころか債券購入額が始まっても米国株は上昇を続け、その後に利上げも始って、購入した債券の処分も進んだ2018年にようやく米国株のまとまった下落が見られたぐらいでした。
今回の2021年のほうが米国株は金融緩和に依存しているようにみえるので、前回よりも早く米国株の下落は始まるだろうと思いますが、まだ株から手を引く時期にはきていないと思います。
万が一、債券購入の縮小がきっかけで米国債が売られて急激に長期金利が上昇したときにもそなえて、長期金利の上昇の悪影響を受けやすい割高な銘柄は私はあまり持たないようにしてはいます。
また、この記事を書いている2021年8月時点で国債はやや買われすぎていると思っているので、これから何度か投資家がヒヤッとするような10%程度の株価の下落は何度かあるかも知れませんが、2018年のような20%を超える下落にはならないと思います。
気をつけるのはやはり2022年後半に予想される利上げ以降の展開です。
過去の景気後退の前には、必ずと言っていいほど中央銀行の政策金利の引き上げがありました。
ただし、その利上げですらも開始から景気後退入りまでは3年半から長くて7年ほどかかっているので、金融政策の縮小には過度に警戒しすぎないようにしたいと思います。
(A)利上げ開始 | (B)景気後退入り | (B)-(A)利上げから景気後退まで |
---|---|---|
1983年3月 | 1990年7月 | 88ヶ月 |
1994年2月 | 2001年3月(ITバブル) | 85ヶ月 |
2004年6月 | 2007年12月(金融危機) | 42ヶ月 |
2015年12月 | 2020年2月(新型コロナ) | 50ヶ月 |
最初の利上げから景気後退までの期間は、思っているよりも長い。
政策金利の引き上げられ、最終的に景気後退につながれば米国株に大きな下落があるのではないかと心配しています。しかし、実際に調べてみると、政策金利を引き上げてから景気後退になるまでは、かなりの長い期間がかかっていることがわかります。