アメリカの消費者物価指数の発表があった4月12日、この日は3月のFOMC(金融政策を決める会議)の議事録も公開されました。
少し驚いたのですが、この議事録にはrecession(リセッション、景気後退)の文字がありました。
今まではどんなに景気拡大期の終盤だとわかっていたとしても、FOMCでは簡単にリセッションが起こるとは言わなかった気がするのですが、今回はハッキリと明記してます。
この記事のポイント
- 3月のFOMC議事録では2023年後半にリセッションが始まるというスタッフの見通しが明記された。
- 今までFRB高官もスタッフもリセッションの可能性を感じても、リセッションが起こるという見通しを明言しなかったが、今回はハッキリと書かれている。
マイルドなリセッションを予想したFRBスタッフ
議事録の中で、リセッションという単語が使われたのは「スタッフによる経済見通し(Staff Economic Outlook)」の章になります。
FOMCではFRB高官たちが金融政策を決める前に、FRBのエコノミストたち(スタッフ)がまとめたアメリカ経済や金融市場の動向の報告を受けて状況確認をしているようです。
このスタッフの経済見通しの中で、2023年後半にアメリカで緩やかなリセッションが始まるという表現がありました。
少し前から、FRBのスタッフが作成したアメリカ経済見通しでは、今年の実質GDP成長率は控えめに抑えられ、労働市場も軟化することが見込まれていました。そして、最近の銀行業界の動きが経済に与えうる影響を考えると、3月現時点でのスタッフ予想では、今年後半から緩やかなリセッション(a mild recession)がはじまり、その後の2年間では回復が訪れると見ています。
(太字は筆者によるもの)
FOMCの議事録の中でハッキリと時期を明記して「これからリセッションが起こる」と書かれることはかなり珍しいです。
明言をさけてきたFRB
2023年にリセッションが起こる事は恐らく頭にあったはずなのですが、今までそれを明記することはありませんでした。
ニューヨーク連銀のサイトで公開されている景気後退確率モデルでは、数ヶ月前から2023年12月までに景気後退が起こる確率は57%にもなると予想していました。
また、2022年末の段階からFOMCの参加者たちは2023年12月になれば失業率が4.6%まで上がると予想していました。
ただ、2022年末で3.5%だった失業率が1年で4.6%にも上がればほぼ間違いなく景気後退になることは、FOMCに参加しているメンバーなら全員知っていたはずです(以下、ルール参照)。
- 【サームルールによる景気後退の判断】過去3ヶ月間の平均失業率が、過去12ヶ月間の最低失業率よりも0.5%上昇していたら景気後退期。
なので、3月にいくつかの銀行の破綻による混乱がなかったとしてもFRBは2023年後半にリセッションを予想していたはずですが、それでもリセッションという単語は今まで使われませんでした。
しかし、今まで言わなかったリセッションという単語を公式文書で使ったことで、アメリカの景気後退は恐らく不可避になったのだと思います。
アメリカの景気後退が近づく
問題は(1)リセッションがいつやってくるのか、(2)景気悪化の程度は本当にマイルドなのかどうかです。
時期については、FRBは2023年後半と言っているからそうなのでしょう。2023年後半というと、あと最短2ヶ月から最長8ヶ月です。
ただし、マイルドな景気悪化で済むのかどうかは疑問です。
今回のFRBの金融引き締めは歴史的なハイペースで行われたので、私の直感では傷は浅くない気がしています。