7月のFOMCを無事に通過しました。
多くの人が予想した通りの内容だったので特筆すべき点があまりないのですが、無視するほど軽いイベントでもないので一応触れておきたいと思います。
気になった点と言えば、パウエル議長が「FRBスタンスは既に景気後退を予想していない」と発言したことでしょうか。私は「本当かなあ」と疑っています。
この記事のポイント
- 予想通りに政策金利は0.25%引き上げられた。また今後の利上げについても経済指標のデータしだいというスタンスが示された。
- 投資家は9月の利上げを予想していない。これから数ヶ月の経済指標を見ながら、11月1日にFOMCで利上げがあるかどうかが投資家の話題になりそう。
- パウエル議長はソフトランディングに自信を深めたコメントも見られるが、個人的には油断は禁物だと思っている。
7月FOMCを無事通過
ほとんどの投資家の予想通りに政策金利は0.25%の利上げが行われ、今後の利上げについては見通しは示されずに経済指標しだいで決めるというスタンスが発表されました。
つまり、サプライズは特にありませんでした。
また、投資家は9月の利上げは現時点ではほとんど想定していないので、経済指標を見ながら11月1日のFOMCで利上げがあるかどうかを議論する数ヶ月の経過観察期間に突入した模様です。
この間にインフレ圧力(雇用とインフレ率の両方)が鈍化していれば利上げなし、そうでなければ利上げという展開になりそうです。
パウエル議長のコメント
FOMC後のパウエル議長の記者会見のまとめは、別のニュースサイト(以下リンク)におまかせしますが、気になった点を一つあげておきます。
FRBのスタッフがもはや景気後退を予想していないとパウエル議長が伝えたことです。
それはだいたい次のような文脈で語られていました。
- 失業者を大幅に増やすことなくインフレ率を2%の目標に戻す(ソフトランディングさせる)青写真を、われわれは持っている。
- たしかに、ソフトランディングのためには、進展させなければならないことが多く残っている。そのためFRBスタッフは今年後半から経済成長率がはっきりと鈍化する(a noticeable slowdown)という見通しを持っている。
- しかし、最近の経済の耐える力を考えると、もはやスタッフは景気後退を予想していない。
このパウエル議長のコメントで話されているように、数十年ぶりの急な利上げがあった割にアメリカの雇用は強く、失業者の増加はほとんど見られません。
水面下では求人数は減っているのですが、それでも2023年末まではコロナ前の水準をキープできそうなペースです。
年始からずっと2023年の景気後退を予想し続けてきた私も、そろそろその確率の低さをヒシヒシと感じつつあります。確かに、2023年末までの景気後退の確率は低いかもしれないと思い始めています。
しかし、2024年になっても景気後退がないという話なら、その意見には賛成しません。
FRBは今後の利上げは「データしだいで決める」と言っていますが、このやり方は景気後退のリスクが高いと思うからです。
当たり前ですが、経済指標は過去のアメリカ経済を映しているものです。過去のデータをもとに金利を決めるというのは、例えるなら車の運転でバックミラーだけを見て走るというようなものです。
しかも、FRBが見ているデータの中には消費者物価やPCEデフレータのように実体経済から何ヶ月も遅れて数字が変化するものもあります。
さらに、その経済から何ヶ月も遅れるデータがインフレ鈍化の兆しを見せても、まだ動かずに数ヶ月様子を見る必要があるという慎重姿勢を崩していません。
6月の消費者物価は歓迎されたが、1カ月分の報告に過ぎない(パウエル議長)
だから、FRBがインフレの鈍化に確信を持って金利引き下げを決める頃には、既に景気がかなり悪くなっているのではないかと思うのです。
加えて、金利の効き目は雇用やインフレに影響が出るまではさらに時間がかかります。効きの悪いブレーキやアクセルのようなものです。
先程の運転の例を出すなら、FRBの発言は「何十秒か前に見たバックミラーの景色を見ながら効きの悪いブレーキで運転するけど、事故は起こしません」と言っている感じです。
最近のFRB議長や連銀総裁の話ではデータを見て金利を決めるという発言が聞こえますが、そのたびにその方法でソフトランディングが可能なのか考えてしまいます。