2日前の記事で、アメリカの中央銀行FRBが金融緩和に踏み切っても買いにはならないということを書きました。
>>これから景気後退になるなら、FRBが金融緩和に転じても買いのサインにならない。
次にFRBが株式市場に救いの手を差し伸べる時には、すでに株価は坂道を下るように下落に向かっている恐れが高いと思っています。
では、一体どういう展開になったら再び米国株を買いに行けばいいでしょうか。
一言で言うなら、ほとんどの投資家が悲観的になっていたのが解消されはじめたら、買いに行って良いと思います。その判断の目安を書いておきます。
米国株を買いに行くタイミング
- 株式投資家が総悲観が解消されたら。VIXと呼ばれる数字がピークを超えたことを確認してから株を買う。
- 債券投資家の総悲観が解消されたら。安全資産の国債買いが落ち着き、今後10年のインフレ率が上向き、低格付け社債の売られすぎが解消されたら株を買う。
株式投資家の総悲観が解消され始めたら
株式投資家の多くが悲観的になっているときには、株は売られて安くなります。
米国株S&P500の投資家の恐怖心理を数値化してくれているVIX指数と呼ばれるものがあるのですが、この値がピークをつけて総悲観が解消されたら買うという目安はシンプルですが使えると思っています。
7月1日現在のVIXを見てみるとリーマンショックやコロナショックに比べて、まだまだかなり低い値になっていて、まだまだ総悲観になっていない(まだ株価はこれから売られる)ことがわかります。
今後、VIXが大きく上昇した後にピークをつければ、株の購入を検討したいと思います。
債券投資家の総悲観が解消され始めたら
債券投資家も景気の底(≒株価の底)を見破る優れた目を持っていることが多いです。
債券投資家の動きと株価の底を把握するには、次の3つの数字が参考になります。
- 10年国債利回りの急低下の解消
- 10年期待インフレの上向き
- 低格付け社債の売られすぎの解消
国債買いの落ち着き
景気が悪化するときには、一般的に株を売って長期国債を買う動きが見られます。
景気後退前後に見られる株価の急落時には、国債が大きく買われて利回りが急低下することが多いのです。なので、この利回りの急低下が落ち着ついた後が買いのタイミングです。
期待インフレ率の上向き
景気が悪化している最中は、債券投資家が予想する長期のインフレ率(期待インフレ率)も急に下がるのですが、景気の見通しが上向くと期待インフレ率も上向きます。
この性質を利用して、景気の底(≒株価の底)を感じ取ることもできます。
出典:FRED
低格付けの社債の売られすぎ解消
最後の目安は低格付け債券の売られすぎの解消をみることです。
債券投資家は景気が悪化している最中は低格付けの社債を売りますが、景気の底を感じ取ると低格付け社債を買い戻していきます。
次のグラフは、国債に対して低格付け社債(ハイイールド債、ジャンク債)がどれだけ売られているかを数値化したものですが、ピークをつけた後に株価の底が訪れています。
各指標のピークとタイムラグ
この記事では、景気後退の株価が底値を付ける前にピークをつける4つの指標を紹介しました。
最後にこれらの指標のピークが、リーマンショックとコロナショックの株価の底値からどの程度タイムラグがあったかを書いておきます。
ピーク | リーマンの株価の底値 | コロナの株価の底値 |
---|---|---|
VIX指数 | 約3.5ヶ月前 | 7日前 |
10年国債利回り | 約3ヶ月前 | 14日前 |
期待インフレ率 | 約3.5ヶ月前 | 4日前 |
ハイイールド債 | 約3ヶ月前 | ピークと底値一致 |
これを見るとコロナショック時はどの指標もかなり正確に株価の底値を当てていますが、リーマンショック時には株の底値と3ヶ月もタイムラグがあったことが分かります。
なので、次の景気後退で各指標がピークをつけても、株価が底値をつけるまでにまだ数ヶ月かかる恐れも考えて、少しずつ株を買い始めるのが良いと思います。
そして、株にアクセル全開で買いに向かうのは、景気後退期を抜けたと判断してからで良いです。その判断は失業者の増加が止まったことでいち早く確認できます。