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最近、初心者に米国株インデックスの投資をすすめにくい理由

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2020年12月、これから投資を始める人から相談を受けることになっています。

毎月一定の金額を投資にまわして、投資先を複数に散させて、長期的に複利で運用するという、「積立」「分散」「長期」の3つの基本スタイルは何も迷いなく紹介できるのですが、問題は何を買うかです。

いつもなら米国株のインデックス(シンボル:VTIやVOOなど)を薦めると思うのですが、最近は少し気が進まなくなっている自分に気づきます。

米国株が好調な時代は10年以上続きましたが、既に買われすぎて割高になっているので、あと数年のうちに株価の上昇が一旦止まって、2020年代ではそれなりに苦しむ時期が来るのではと思っているからです。

もちろん、次の10年で米国株が低迷しない可能性も十分ありえます。

また低迷した時こそ買い増すことで、低迷期を抜けた後に大きな含み益を得られることは分かっていますが、成功体験が少ないままいきなり迎えた低迷期で忍耐強く積立をしろというのは、投資初心者にはかなり残酷な話です。

この記事のポイント

  • 通常なら、投資初心者は米国株を含むインデックス投資で良いと思う。超長期で見ても、過去10年で見ても成績は問題ない。
  • ただ、今は米国株だけのインデックス投資を薦めるのには、少し不安がある。今の米国株は割高なので、反動を受けて、次の10年のリターンはかなり低くなっても不思議はない。
  • 次善の策として、これから投資を始める人は、米国株だけでなく世界の国の株を含むインデックスを買い、下落した時のための少々の現金も持つのが良いかも知れない。

この記事は、既に投資経験がある人も米国株からすぐに資金を引き上げたほうが良いと言っているのではありません。

今は不安定な景気を支えるために歴史的な規模で金融緩和をして高い株が維持されているので、この状態が続く1-2年程度は株高が続くと思っています。

ただし、投資をこれから始める人に「金融緩和が縮小したら」、「金利が上がったら」という話を上手に伝えられる自信がないので、米国株100%の投資を薦めるのではなく、「米国を含む世界の株」にも投資して、なおかつ「下落時に買い増しできる現金も残す」という保険をかけておいたほうが良いのかなと思っています。

実績ある米国株

私はだいたい9割くらいの場合で、はじめて投資をする人は米国株インデックスに投資しておけば問題はないと思っています。

実際、この10年間の米国株は十分すぎるくらい上昇してくれました。

また歴史的に見ても、米国株は長期的に右肩上がりで、実績は十分です。

長期的に右肩上がりな米国株

実力以上に上がっている米国株


ただし、この10年間は本来の実力以上に株価だけが上がりすぎたと思っています。

利益の成長以上に株価があがれば、少しずつ割高になっていきますが、過去10年で今の米国株はもっとも割高になっています。

米国株インデックスのS&P500の割高度合いをはかる予想PER(株価を今後1年間の予想一株利益で割り算した値)は11月20日時点で21.7で、これは過去10年間の平均15.6に比べると、ずっと高いです。

もしも、過去10年の平均と同じ割高感になるまで株価が落ちるなら、株価は2020年11月の価格から約30%も下落することになります。

割高の時代の後には、低迷がやってくる

米国株全体が割高になると気がかりになることがあります。割高な株を掴んでしまった場合には、何年か投資をしたとても、その先で得られるリターンが低くなってしまいます。

割高と高リターンは両立しないことは、バブル崩壊後の株価を見ればわかります。

過去に2000年のITバブルが起こったときのS&P500は2020年よりも割高でしたが(予想PER25で今より株価20%高)、一度株価が下がってから、もとの水準に戻るまでには7年も時間がかかりました。

そもそもITバブルの例を出さなくても、1980年代に(PER70台で)割高だった日本株が未だに株価の最高値を更新できないことを考えても、割高と高リターンは両立しないことがわかります。

今すぐ米国株がバブルのようになるとは思わないのですが、既にある程度割高になっているので、2020年代前半のどこかで2000年と同程度の株価の下落か、少なくとも小規模なものは経験すると思っています。

私の場合はこのような下落が起きてもわずかでも損を減らすために、インデックスではなくできるだけ割高ではない米国企業の株を保有することを意識しています。

でも、それなのに投資初心者の人には米国インデックスをおすすめしていたのでは、話の筋が通らないです。

次善の策としての世界の株への投資と投資余力のキープ


2020年12月の時点で投資の初心者にオススメするなら、何が良いでしょうか。

あれこれ考えた結論としては、米国株の将来に少しの不安があるのなら、世界の株にも一度に投資できるインデックス(シンボル:VT)を買い、わずかの現金を持っておくのが良いのかなと思っています。

  • 米国に不安があるなら、他の世界の株式も保有できるインデックス(例えばVTなど)を保有する。
  • 2020年代に株価が下落しても、買い増しできるように一定の現金を余力として残しておく。

私は投資を初めて、1年以内にサブプライムローンの焦げ付きとリーマンショックを経験しましたが、投資の初心者のうちに大きな損失からスタートするのはだいぶ精神的にこたえました。

「下がり続けても毎月積み立てて投資を継続すること」が正論だと頭で分かっていても、出鼻をくじかれると正直しんどいので、米国以外の株も買って米国株のリスクを抑えたり、下落しても買い増しできる現金がある余裕があったほうが良いだろうと思っています。


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