フェイスブックの2020年1-3月期の決算発表がありました。
結果は思っていたより悪くなかったです。利益も収益も事前のアナリスト予想を超えてきました。
2018年まで売上成長率が40%を超えていたフェイスブックにとっては、前年比+17%の成長率は決して良い内容ではありませんが、もっとひどい結果になるかと思っていたので、予想以上の健闘で決算発表後に株価も上昇しました。
この記事のポイント
- 収益・利益ともにアナリストの予想を上回った。
- ただ、売上成長率は2018年から低下傾向にある。利益は前年比で大幅増加しているが、これは前年の利益が極端に少なかったためで、前年は政府との和解金で30億ドルも余分な出費があった。
- 3月2週目に新型コロナウイルスの影響でFacebookの売上は急減したが、「4月から売上減少が落ち着いた」と話し、4月は売上が前年比±0%成長で推移していることを発表。
- 4-6月にアメリカの景気の落ち込みによっては、広告業界にさらなる逆風が吹くかもしれないとフェイスブックは警告しているが、市場は3月末にフェイスブックは底を打ったと見て株価は上昇している。
2020年1-3月期結果
フェイスブックの1-3月期の決算を確認していきます。
- 一株利益:1.71ドルで、予想を0.01ドル上回った。(前年比+101%)
- 収益:177.4億ドルで、予想を5.2億ドル上回った。(前年比+17.6%)
アナリスト予想では悲観的な見方が多かったのですが、予想ほど業績は悪化しなかったようです。
「そもそも、どうしてフェイスブックの業績予想が悲観的だったの?」と思う方もいると思うので、サラッとだけ理由を触れておきます。
フェイスブックは基本的に無料で使えるアプリ(フェイスブック、インスタグラム、WhatsAppなど)を提供していますが、ユーザーからは利用料金を取らずにアプリに表示する広告で収益を上げるビジネスをしています。
2020年は世界的に不景気になり、あらゆる企業が広告費を削ることが予想されるので、ユーザがどれだけフェイスブックやインスタグラムのアプリを盛んにやっていたとしても、フェイスブック社の売上は減るのではないかと思われていました。
ところが、いざフタを開けてみるとフェイスブックの売上はそこまで落ち込んでいなかったというのが、今回の決算の結果から見えてきました。
単位:10億ドル | 1Q20 | 1Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 17.4 | 14.9 | 17% |
営業収益 | 5.9 | 3.3 | 78% |
営業利益率 | 34% | 22% | – |
純利益 | 4.9 | 2.4 | 102% |
純利益率 | 28% | 16% | – |
ちなみに、利益は前年比で101%と著しい成長を見せていますが、これは前年の数字が極端に悪かったためです。ちょうど一年前の2019年1-3月期はアメリカ政府に対して和解金30億ドルを支払ったために、利益が小さくなっています。
少し気になるのは、今期も売上成長率の鈍化が止まらなかったことです。2018年にアメリカがまだ景気が良かった頃は、フェイスブックの売上は前年比40%で成長していたのですが、景気の低下とともに苦しい戦いを強いられています。
この動きは同じインターネット広告業界のGoogleにも言えることです。
Google、決算で株価大幅上昇も不安の残る内容【20年1-3月期決算】
Googleの親会社アルファベットの1-3月期の決算は、個人的にはそれほど内容は良くなかったと思っています。予想ほど売上の成長が鈍化しなかったので決算後に株が買われたようですが、新型コロナウイルス流行後の3月に急減速した点、主力のGoogle検索の売上成長率のさらに減速している点を見ていると、「世界の景気が最悪期を迎える4-6月、Googleにとって苦しいだろう」と感じる内容でした。
新型コロナウイルスが与えた影響
新型コロナウイルスの影響というと悪いイメージが先行するかもしれませんが、フェイスブックは良い影響も悪い影響も両方受けています。
良い影響はフェイスブックの利用数が劇的に増えていることです。最近、インスタグラムでライブ配信をしている有名人を多く見かけるようになりましたが、いくつか面白いデータをCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が紹介していたので、以下のまとめました。
新型コロナウイルス渦中で増えるフェイスブックの利用
- フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップ、メッセンジャーの4つのいずれかのアプリを使うユーザは30億人を突破した。
- フェイスブック単体のユーザは26億人、毎日使う人は23億人。
- 新型コロナウイルスの流行前後で、世界の多くの地域でメッセージ送信数が50%上昇、電話やテレビ電話の回数は2倍に上昇。
- 特にイタリアではフェイスブック社のアプリの使用時間は70%増加、インスタグラムとフェイスブックのライブ動画配信は2倍、グループテレビ電話は10倍以上に増えた。
この新型コロナウイルスの流行を経て、フェイスブックのソーシャルアプリとしての存在感はますます強まったようです。
一方で業績についてはCOOのシェリル・サンドバーグ氏が、詳細を伝えてくれています。3月2週目から急激に広告収入が減ったものの、4月から減少が落ち着いたと言います。
1-3月とその後の業績についてのフェイスブックの見解
- 1-3月期のスタートは力強い業績だったが、3月2週目から新型コロナウイルスの影響の影響を急激に受けた。
- しかし、どの業界の広告収入も同じように変化したわけではなかった。ゲーム業界の広告は力強い成長を見せ、テクノロジーとネット通販業界は比較的堅調だった。これらはフェイスブック広告が得意とする業界だったのは幸いだった。
- 一方で、旅行業界と自動車業界からの広告は著しい低迷が訪れた。これらの業界の厳しい現状を物語っている。
- 4月に入ると、3月に見られた広告収入の急減速が収まった。4月3週間の売上は前年同期比で±0%成長で推移している。
- フェイスブックは4-6月期のGDP成長率にかなり注意を払っている。歴史的なGDPの低迷で、広告業界はさらなる厳しい状況に置かれる可能性もある。
難しいのは、フェイスブックのメッセージのとり方です。
恐らく市場は「4月に売上下落が落ち着いた」というメッセージに重点をおいたため、最悪期を脱したと判断して決算発表後に株価が急上昇したのだと思います。
また今後も新型コロナウイルスの第2波や第3波があれば、断続的に世界の各地で都市封鎖があるのかもしれませんが、これだけの世界中で同時に都市封鎖が起こるのは今回が最後かもしれません。そう考えるなら、「フェイスブックの最悪期は3月末でこれからは買いだ」と考えるのもうなずけます。
ただ、フェイスブックのサンドバークCOOが4-6月期のアメリカの景気の落ち込みで、広告業界にさらなる逆風が吹く恐れがあるとフェイスブックが警告している点は、要注意です。4-6月のアメリカのGDP成長率はマイナス20%-30%にもなり、歴史的な景気の低迷が訪れていると言われます。
最近のアメリカ株は過度に楽観的でこうした企業の警告メッセージも無視して、株価が上昇しているのが個人的に気になっています。なので、私はフェイスブック株の上昇に乗り遅れたとしても、もう少しだけ様子をみてから投資をするつもりです。