先週の金曜日はアメリカ市場が休みで、のんびりできた人も多かったと思います。
私は株や国債の動きを見ながら、「何に反応しているんだろう」とか「今はこういう時期なのかな」とあれこれ考えるのが好きなタイプなので、米国市場が休みだと少し退屈をしていました。
そういう時間があるの時には、市場よりとゆっくりと変化する経済でも眺めて理解を深めるのがいいかも知れせん。
この記事では、ニューヨーク連銀製造業景況指数というあまり注目度の高くない数字を見ています。まだどう読んだらよいかわからないところもありますが、最近この数字は少し面白い動きを見せています。
この記事のポイント
- 先月まで大きく景気が低迷していたNY連銀製造業指数は、4月に急回復した。
- おそらくウクライナ戦争の混乱から、製造業は立ち直りつつある様子を写しているように見える。
- なお、価格指数は4月に過去最高を記録。6ヶ月後の見通しも最高値圏にあって、製造現場ではインフレにピークの兆しは見えていない。
急回復したNY連銀指数
NY連銀製造業景況指数は、FRBの1つのニューヨーク連銀が発表している景気の良し悪しをまとめた数字です。
この数字の特徴は他の経済指標に比べて早く発表されるので、今月の景気の様子をいち早く確認できること、また投資家の多くが景気の良し悪しを判断するために注目しているISM製造業指数と傾向は似ているので、先行指標としても使えると思っています。
NY連銀の景気指数の数字の見方はとても簡単です。プラスなら(前月に比べて)景気が拡大、マイナスなら景気縮小と見ます。
前回3月の調査では、製造業の景気はマイナスを記録していました。景気後退時でなくても一時的にマイナスになることは過去にもあったのですが、やや不安の残る結果でした。
>>「景気悪化」を示したNY連銀の製造業景気指数(22年3月16日)
しかし、今月のNY連銀製造業指数は大幅に改善されています。
- 予想:1.0
- 結果:24.6(前回マイナス11.8)
3月の景気指数がマイナスに沈んだこと、そして4月に大きく景気が回復しているのですが、これは何があったのでしょうか。
興味深いので、少しだけ考えて見ることにします。
景気の回復の要因はウクライナ戦争対応の落ち着き
先月3月が大幅に景気が低迷して、4月には反対に大きく改善した要因はなんだったのでしょうか。
私の考えではアメリカの製造業がウクライナ戦争の混乱から、落ち着きを取り戻したのだと思っています。
前回景気指数がマイナスになった3月の調査時期を見てみると、3月2日から3月9日でこれはウクライナ戦争が始まってからわずか2週間目のことでした。一方で、大きく数字が前回から改善した4月の調査期間は4月4日から11日の調査で、この間には戦争による混乱から立ち直り始めたと見えます。
考え方のアップデート
前回の3月のデータが公開されたときには、「景気指数のマイナス一時的かも知れないし、景気後退の兆候かも知れない」というようなことをブログに書きました。
しかし、4月のデータを見て、3月の景気指数のマイナスはアメリカの景気後退の予兆ではなく、ウクライナ戦争の影響を受けたものだったと考えを改めました。
3月の景気の不調が一時的なものだったのなら、アメリカの景気後退が始まるまでにはしばらく時間がかかるのかも知れません。それなら景気後退が起こるまで続くと思われる政策金利の引き上げ(利上げ)は、今後も続くのだろうと思います。
先月までは、「アメリカの景気後退が近いなら市場の投資家が予想しているほど利上げはできずに、株が上昇するチャンスはある」と書いたのですが、このチャンスは少し遠のいた印象です。
インフレの収束はまだ見えていない
また、最近いろいろな投資家からアメリカの物価上昇は3月でピークを超えたという話が聞こえますが、NY連銀の調査を見ると少なくとも製造現場では4月も物価は上昇しているようです。
4月の製造業が支払った価格は、過去最高を記録しました。
また、NY連銀の調査では6ヶ月先の見通しも発表しているのですが、価格指数の見通しは前月からわずか0.2ポイントしか減少せず、最高値圏にとどまり続けています。
この長引くインフレを抑えるために、金融引き締めをしなければいけないことを考えると、米国株も米国債も売られやすい展開はもう少し続くのかなと考えてしまいます。