いよいよ今晩からマイクロソフトやアルファベット(グーグルの親会社)の決算を皮切りに、決算シーズンもピークを迎えます。
一方でそれまでは少し時間があるので、10月のアメリカの経済について今までわかっていることをつらつらとまとめていきたいと思います。
この記事のポイント
- アメリカの雇用はまだ強い。そろそろ失業者が増えると言われているが、10月の週単位のデータではまだ雇用の弱まりが見られない。
- しかし、最近は雇用が増えても平均時給の伸びが下がっていること、原油価格は10月に下がっていることを考えるとインフレの心配はない。
- 製造業の景気は良くない&消費はまだ強いという9月までの流れも続いている。
アメリカの雇用はまだ堅調
多くのアメリカの経済指標は9月分のデータの発表を終えて、10月分は来月発表というものが多いです。
しかし、週次で発表されているデータを見ると10月のアメリカの好不調を覗き見ることができるので、そういうものを確認していきたいと思います。
まずは雇用についてです。アメリカのインフレを根絶するためにはある程度の景気の弱まりが必要ですが、失業率は恐らくまだ上がっていないようです。
次のグラフは新規失業保険申請件数のグラフですが、10月に入って上がるどころか低くほうに安定しています。
失業保険の継続利用者数(下図)を見てみると10月からわずかに上がっているので、雇用は少しずつ弱まっているようにも見えますが、いずれにしても夏場のほうが雇用は弱かったようにも見えます。
ダメ押しに、毎週発表されるindeedの求人件数も見てみましたが、こちらは横ばいといった感じです。
先日ブログでお伝えしたようにWARN Notice(集団解雇の事前通知)通りならそろそろ失業者が急増してもおかしくない時期にきているはずなのですが、10月の中旬までにアメリカの雇用が弱まっているデータは見られませんでした。
その他10月のデータについて
このペースで話をすると膨大な文字数になるので、雇用以外のデータはざっくりと見ていきたいと思います。
- (1)インフレは安定している。
- (2)10月も製造業の景気は良くない
- (3)小売売上は10月も強い。つまり個人消費はまだ強い。
上にも書いたように雇用は強いのですが、(1)アメリカのインフレについてはあまり心配いりません。9月のアメリカ雇用統計でも見たように最近数ヶ月はフルタイム労働者が減って、パートタイムの雇用の増加していて平均時給の伸びは下がっているので、この形が続くなら雇用者が増えてもインフレにはなりにくいです。
また、イスラエルの戦争が始まってから原油に注視しているのですが、今のところ大きな原油価格に大きな上昇は見られません。むしろ9月末からは価格は下落傾向が続いているようにすら感じます。よって、原油高からのインフレ再燃というシナリオは今のところ起こっていないです。
アメリカの物価を日々追いかけているTruflationというサイトが算出した現時点のアメリカのインフレ率は2.35%でいい感じに安定しています。いずれ失業者が増加すれば2%を下回ると思いますが、今は良い感じに推移しています。
ニューヨーク連銀製造業指数などすでに10月分のデータが発表されたものを見ると、(2)製造業の景気は一時期ほど悪くないものの良くない展開が続いています。9月までの流れほぼ同じです感じです。
また、10月に入ってから小売売上は伸びているようにも見えます。消費はまだ強いというのも9月までのアメリカ経済の流れとほぼ一致しています。
さいごに
10月のデータについて色々見てきたので、ここに書いたことを振り返ろうと思います。
アメリカの雇用はまもなく弱まると思われるのですが、週単位で発表されているデータにはまだ雇用の弱まりは確認できませんでした。よって、10月の雇用統計では失業率が大きく増加することは考えづらく、まだ景気後退には時間が必要という2023年のテーマが続きそうです。
しかし、雇用は強くでも最近は時給が伸びていないことから、インフレの懸念は強くなさそうです。10月は原油価格が下がっているのもインフレ低下にプラス材料です。
雑にまとめると9月までのアメリカ経済の流れが10月も続いているように見えます。雇用まだ強い、インフレ低下傾向、製造業景況感低め、消費はまだ強いと言った感じです。
何か変わることがあるとすれば戦況が変化して原油価格からのインフレ上昇か、失業者増加からの雇用環境の悪化はあるかもしれません。
ただ、どちらもいつ起こっても不思議ではない展開ではありますが、どちらも10月のデータでは確認できませんでした。