景気見通しで小さな変化が起こっているECB
10月24日は、ヨーロッパ中央銀行ECBが金融政策を話し合う理事会がありました。
大きな金融政策の変更も特になかったですし、ECBトップのドラギ総裁の最後という以外に特に触れなくてもいいかなと思ったのですが、やっぱり大きな変化はなくとも、変化は変化としてきちんと情報はひろっておこうと思い直しました。
スポーツなどの勝負の世界では思わぬ小さなミスで足元をすくわれるとよく言いますし、小さな変化に気づいて対処できない人間はどの分野でも大成しないと、入社直後の偉い人も昔言っていた気がします。
ここで取り上げるのは、ECB理事会後のドラギ総裁の会見の発言と、その翌日に下方修正が発表されたECBのヨーロッパGDP成長率予測です。どちらも、ヨーロッパの景気に弱気になってきたことを感じる内容でした。
ECBの会見で見えた弱気への変化
ドラギ総裁の最後の会見は、ヨーロッパの景気の景気に少し弱気になったなと感じました。具体的には、以下の箇所です。
- 「成長の鈍化」が、賃金上昇やインフレ率上昇を遅らせていると指摘。
- 雇用者数の伸びが順調だという発言をしなくなった。労働市場が力強さを幾分失ったことを示唆した。
- 景気の見通しリスクは「下方向に傾いている」から、「下方向だ」と断定口調に変わった。
微妙な言い回しの変化もあるんですが、要は「今の景気拡大ペースは数ヶ月前より減速している」とECBなりに表現しています。
2020年までは景気減速を予想するECB
そして投資家にとっては、次の情報のほうが重要だと思うのですが、ドラギ総裁の会見の翌日、ECBは2019年から2021年までのGDP成長率予測の可能修正を発表しました。
ECB GDP成長率予想 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 長期予想 |
---|---|---|---|---|
2019年10月発表時 | +1.1% | +1.0% | +1.3% | +1.4% |
2019年7月発表時 | +1.2% | +1.3% | +1.4% | +1.4% |
上の表は、ドラギ総裁の弱気な経済見通し発言よりも多くの情報を落としてくれています。この表からは少なくとも、2つのことがわかります。
- 「2019年に景気の底を打って回復に向かう」という従来シナリオを修正。新シナリオは「景気の悪化は続き、2020年で底を打つ」
- 2021年になっても景気は長期見通しに届かず、回復の途中の段階。(つまり2021年まで景気は弱い)
まず一つ目ですが、ECBは今まで「2019年は低迷して1.2%成長にとどまるものの、底を打ってから、2020年には1.3%成長に加速する」という見方をしていましたが、これを「景気の底を打つのは2020年で、その2020年は1.0%成長まで減速する」と悲観的な予測に変わっています。
また、長期的なGDP成長率は1.4%に置いていますが、修正後の弱気な予測では2021年になっても1.4%成長には届いていません。2020年まで落ち込む景気の回復の途中段階で、2021年までは景気が弱いと見ていることがわかります。
ちなみに、景気後退前には、こうした予測の下方修正が連続して繰り返し行われることが知られています。まだまだ現時点では、ヨーロッパ全体は深刻な景気減速は見られませんが、おそらく既に景気後退入りしているドイツとイギリスのブレグジットがヨーロッパ全体にどう影響を与えるかが、今後の焦点になりそうです。