2020年からのパンデミック期に蓄えた余分な貯蓄が、いよいよなくなってきているというレポートがサンフランシスコ連銀から発表されています。
少し面白かったので、その内容を紹介したいと思います。
この記事のポイント
- サンフランシスコ連銀の推計では、パンデミック時に貯めた余分な貯蓄の2.1兆ドルは2023年第3四半期にも使い切る。
- 2023年のアメリカは所得が堅調に伸びているが、10月以降は学生ローンの支払い再開もあるので、今後のアメリカの消費が維持できるかに注目
パンデミック時の余分な貯蓄はまもなく使い切る
冒頭でお話したサンフランシスコ連銀のレポートは、こちらから読むことができます。
>>Excess no more? Dwindling pandemic savings
しかし、このレポートは全部英語なので、読むのがすこし面倒です。なので、先に要点だけまとめておきます。
- (1)アメリカの家計では20年2月から21年8月までに通常のペースよりも2.1兆ドルも多くの貯蓄をした。
- (2)反対に、21年8月以降は通常よりも貯蓄のペースが大きく落ちた。23年6月までに超過貯蓄は1.9兆ドル減って0.2兆ドルになった。
- (3)このペースが続けば、7-9月期にも超過貯蓄はなくなる。
貯蓄を増やした時期
アメリカでは2020年2月にパンデミックが始まりましたが、それ以降に現金給付が数回あったり、外出禁止でお金を使いたくても使えない時期があったために、人々はいつもより毎月たくさんのお金を貯めていきました。
下図のグラフはアメリカの個人の貯蓄額を示したものですが、緑で塗られたエリアを見ると2020年2月から2021年8月までは、パンデミック前よりも毎月多くの貯蓄をしてきたことがわかります。
この時期の余分な貯蓄(超過貯蓄)は累計で2.1兆ドルだったと言います。
余分な貯蓄を減らして消費をした時期
この2.1兆ドルの余分な貯蓄があったお陰で、2021年からアメリカ経済は急回復することができました。
しかし、2021年8月からはお金をハイペースな勢いで使い始めて、今後は反対に毎月の貯蓄額がパンデミック前の水準を大きく下回るペースになります。(上図の赤いエリアです)
この時期には何があったのかを記憶している人は多いかもしれません。2021年夏といえば、アメリカの消費者物価が5%を超えてインフレが問題化しはじめた時期です。
2021年夏から人々は「お金を溜め込んでいても仕方ない。どうせ必要になるものなら、値上がりする前に購入しよう」と消費を増やしたことになります。
サンフランシスコ連銀の試算によると、2021年8月に2.1兆ドルあった超過貯蓄は、2023年6月までに1.9兆ドル分を使ったようです。
2023年6月の時点では、2.1兆ドルから1.9兆ドル引き算した0.2兆ドルの超過貯蓄が残っていることになります。そして、これまでの減少ペースが続くなら、超過貯蓄は2023年の第3四半期(7-9月期)にも底をつくということのようです。
以上がサンフランシスコ連銀のレポートの内容です。
2023年第3四半期に消費は鈍化するのか
2023年第3四半期に超過貯蓄がなくなるという話ですが、それがなくなったらすぐに消費ができなくなるわけではありません。
余分な貯蓄を使った消費ができるボーナスタイムが終わるだけです。
実は2023年に入ってから。個人の実質可処分所得は前年比+4%を超えるハイペースな伸びが続いています(下図)。もしも、収入が安定して伸びているなら、アメリカの堅調な消費はまだ続くはずです。
一方で、気になる点がないわけではありません。
10月からはアメリカで学生ローンの支払いの再開もあると言われているので、超過貯蓄がなくなることと合わせて消費にどれだけ影響があるのかはデータを注意してみたいと思います。