米国株で知っておいたほうがい数字シリーズの2回目になります。
米国株投資向け数字・数式
- (1)1日の最大下落率
- (2)大恐慌下の最大下落率(本記事)
- (3)市場平均リターン
- (4)72と115の法則と使い方
前回の記事では、ダウ平均の1日最大下落率について振れました。今回は1日だけでなく、もっと長い期間に渡ってピークから底値までどれだけの株価が下落するのかを見ていきたいと思います。
不況時のダウ平均市場の最大下落率は…
さて、前回記事の1日最大下落率22%と違って、今回の不況時のダウの最大下落率はかなり有名なので、サラッと結論から紹介してしまおうと思います。
ダウの不況時の最大下落率は89%です。世界史の教科書にも載っているほど有名な世界恐慌の中で、ダウは89%の下落を記録しています。
1,000万円を投資していたら890万円の損失、5,000万円の投資なら4,450万円の損失です。計算が面倒なので、だいたい資産の額が10分の1になると考えればわかりやすいと思います。
ブラックサーズデーから始まった1929年株価大暴落
この史上最大の下落が始まったのは1929年です。この年の前半までは、ダウ平均はいわゆる絶好調で右肩上がりに上がり続け、直近6年間で5倍にまで上昇していました。
1929年9月3日に当時のダウ平均の最高値381.17をつけた後、ケネディ大統領の父のジョセフ・P・ケネディ氏が「ウォール街の靴磨きをする少年までが株の話をするのを見て、株式市場はそろそろ危ないと気づいた」と言ったとされる逸話はあまりにも有名です。
お笑い芸人がビットコインの話をし始めた2017年と同じですね。
最高値をつけた直後も17%下げて、半値を戻してはまた下げるなど、不安定な相場が続きましたが、決定的な下落は10月24日木曜日のブラックサーズデーから始まります。この日は世界で最も歴史に名を残す有名な木曜日になるわけですが、この日から始まる1週間だけでも立派な本が1冊書けるほど、波乱に満ちた展開を迎えます。
その要点だけまとめると、以下のような展開です。
- 10月24日(木)ブラックサーズデー:マーケット開始直後に11%の下落で迎える。取引量が膨大で証券会社のテッカーテープの価格表示が数時間遅れになり、取引をしているかもわからず投資家がパニック状態となる。市場の混乱を抑えるために、大手金融トップが緊急会合を開き、1907年の恐慌を抑え込んだ策を真似て優良銘柄を市場価格より遥かに高い金額で買い支える決定をした。結果、前日比-6.38%の下落まで回復してこの日を終えた。
- 10月28日(月)ブラックマンデー:週末の間、ウォール街の混乱を伝える紙面がアメリカ中の新聞で取り上げられ、週明けは全面安の展開になった。1907年の恐慌を抑えた大手金融機関による株の買い支えも効果なく、1日で12.82%下落。ダウ史上2番目の下落率を記録した。
- 10月29日(火)ブラックチューズデイ:連日の大幅下落でマイナス11.73%で取引を終えた。前日に続きダウ史上3番目の下落率を記録。この1週間の損失は300億ドルとなり、当時のアメリカの年間予算の10倍以上で、第一次世界大戦でアメリカ費やした金額よりも大きい損失額を記録した。
さて激動の1週間を終えた後も株価の下落は続き、結局1932年7月8日にダウ平均41.22でようやく底値を付けます。1929年9月の最高値と比べると89%の下落でした。
下落率もさることながら、底値をつけるまで3年もの時間がかかったこと、さらに1929年の最高値を超えたのは1954年11月24日で、最高値更新までに25年も要しているのは驚きです。名実ともにダウ市場最大の下落だったことがわかります。
逃げるは恥だが、役に立つ
私は2007年サブプライムショックと2008年リーマンショックを経験していますが、1929年の世界恐慌を調べていて「ああ、そういえばリーマンショックのときもこういう動きあったな」という類似点がいくつか見つかります。
- 連日開かれる金融トップの緊急会合と、世の中に漂う独特な緊張感
- 数ヶ月単位ではなく、1年から数年続くどこまでも底が見えない下落
特に、普段だったら間違いなく一同に集まることがない金融トップのそうそうたるメンバーが瞬時に緊急会合で集まる様子は、危機時独特の緊張感が走ります。この緊張感は、たとえ一度も不況を経験していなくても直ぐにわかります。大地震の時のように、どのニュース番組を見ても、金融トップ会合と市場下落で一色に染まるからです。
今後いかにも時給が高そうな金融トップのメンバーが急に集まりだしたときは、本当に注意です。その時は、基本的に売らないと決めている長期投資家でも、売って市場から逃げてもいいのではないかと思っています。
「恐怖におののいて、狼狽売りした」などと周りの人から悪口を言われるかもしれませんが、いざ本当に大きな景気後退局面が来た場合には数カ月後ではなく長いと数年続くので、この時点での逃げは恥になるかも知れませんが、役に立つと思います。
なお、この記事を書いている2019年時点では、1929年ウォール街大暴落や2008年リーマンショックのような大きな暴落の前のような印象は受けません。米中貿易戦争で世界経済に減速のリスクが高まっているのは確かですが、今直ぐにこれらの大きな株価下落に見舞われる恐れは少ないと思います。
ただし、過去3年間に渡って89%もの下落があった事実を見て、次の不況ではどのタイミングで自分は逃げるのか、もしくは逃げないのか考える材料にするのは、とても意味があることだと思います。