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ドル離れが進むことを示すいくつかのニュースについて

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あまり真新しい話題ではないのですが、ゆっくりと少しずつ動いている動きがあります。

世界の国でドルを使わない取引が増えていることです。最近、それを伝えるニュースをいくつか耳にしました。

とは言え、これを理由に「これからはドル安一辺倒だ」とも「ドルの時代が終り、暗号通貨の決済の時代が来る」とも思いません。こういう極端な考えはまだ持たなくていいと思います。

ドルが世界で一番使われる通貨という状況はまだ当面は(少なくとも10年くらいは)続くと思うからです。

ただ、長期的に見るとドル離れによるドル安はかなり高い確率で進むはずなので、日本から投資する米国株の旨味はドル安によって一部は失われるのだろうとも思います。

この記事のポイント

  • 決済にドルを使わない取引が世界で増えている印象がある。
  • こうした動きが加速している背景にはウクライナでの戦争で米国がロシアに対してドルの決済ネットワークから締め出したことがある(ドルの武器化)。
  • 長期的にはドル安になる。長期投資で気になる人には米国株だけでなく、いくらかのゴールドや新興国株を長期保有するのも吉。

ドル離れが進む世界

最近、決済にドルを使わない取引を伝えるニュースが増えている印象があります。

>>中国、初の人民元建て決済 仏トタルとLNG取引(ロイター)

>>インド新通商政策、ルピー建て貿易促進へ(ロイター)

中国やインドやその他の新興国はドルをあまり使いたくなくないと思っているようで、ドル以外の通貨で取引をする動きが広まっています。

長期的なドルの支配力低下

ドルの力が相対的に弱まっているという話はそれほど新しいものではありません。そもそも長期的に見れば、ドルの一極集中からの脱却はかなり長い年月をかけて進んでいます。

たとえば、1999年から2021年までの世界の外貨準備のシェアを見てみると、ドルは少しずつ支配力を低下させていることがわかります。


出典:IMF

ウクライナ戦争でドル離れは加速したか

ただ、このようなドルの支配力低下の動きは、2022年のウクライナ戦争以降に加速したかも知れないと少し不安に感じています。

2022年にロシアがウクライナに侵攻してから、米国はドルの決済ネットワークからロシアを締め出すという経済制裁を行いました。

これを見ていた世界の他の国は、「今までいろんな国とドルを使って貿易をしてきたけど、米国と対立に巻き込まれれば使えなくなる通貨ならあまり使いたくない」 とでも考えたのでしょうか。

ドルから離れていく動きを見る度に、ウクライナ戦争での米国の対応がドル離れに拍車をかけていないかと考えてしまいます。

ドルの支配力低下の影響

ドルの支配力が低下すれば、投資にはどのような影響があるのでしょうか。

20年から30年以上先のかなり長期的な動きとしては、ドル安が考えられます。ドル安になれば、一般的には次のような動きが起こるはずです。

  • (1)ゴールドやコモディティ(暗号通貨も含む)価格上昇。
  • (2)新興国株は米国株に比べて相対的に良い上昇率になる。
  • (3)米国債の価格下落(利回り上昇)。

ただし、ドルの支配力低下はかなりの長期的な話なので、ほとんどの投資家にとってはそれほど意識しないテーマになるかも知れません。

たとえば、30年後の年金暮らしの時のための投資のほんの一部に長期でゴールETFをド保有をしてみたり、米国株だけではなく新興国株もほんの一部だけ保有するという程度になると思います。

2022年のウクライナ戦争からドル離れの動きが加速したと言っても、先程の外貨準備のシェアのグラフを見ても分かる通り、まだまだ圧倒的にドルの支配が強い世界に私達はいます。

なので、急にドル安が止まらないような状況になるとかいう事はまだ起こらないと思っています。

2020年代はまだドルに代わる通貨が芽を出しはじめる時期で、劇的な変化が現れるのはどんなに早くても2030年代か2040年代という感じだろうと思っています。


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