最近はアメリカの景気の悪さが経済指標になって、現れ始めています。
昨日の記事ではNY連銀製造業指数を取り上げましたが、その他もさまざまなデータが悪化しているので、ここでまとめて確認していきます。
この記事のポイント
- 企業の景況感悪化:12月から製造業・サービス業そろって景況感悪化。テクノロジー企業を中心にレイオフが始まっている。
- 消費の低迷:小売売上高は低迷。クレジットカードで消費を続けてきたが、その金利も上がり消費に余裕がなくなっている。
- インフレ圧力の低下:消費者物価も卸売物価も低下している。背景にあるのは供給の正常化と需要の減少。
企業の景況感悪化
まず、何よりも明らかに悪化が進んでいるのは企業の景況感です。ISMの調査によると、12月のアメリカ企業は製造業もサービス業も景況感が大きく低下しています。
さらに、NY連銀によると1月も製造業は景況感がさらに悪化した模様で、過去5番目の低水準をつけて「景気悪化」しています。
企業の景況感が悪化が見られたので、今後は雇用が悪化し、そして収入を失った人から消費が減る動きが見られるはずです。テクノロジー企業に関しては、既にレイオフが始まっているようです。
消費の低迷
12月時点でアメリカの失業率は歴史的な低水準なので、本当なら消費もまだ強いはずなのですが、今回は既に消費に息切れの兆候がみられます。
昨晩発表された小売売上(前月比年率)を見てみると、11月と12月は2ヶ月連続で前月比で年率マイナス10%超えのペースで売上が減少しています。
消費低迷の理由
雇用がまだ強いのに、なぜ既に消費が低迷し始めているかですが、恐らく背景にあるのはインフレです。2022年のアメリカの平均時給は伸びてはいるものの、インフレ(消費者物価)には勝てていませんでした。
そこで、2022年の消費者はクレジットカードなどを活用して消費を続けてきました。
しかし、FRBの金融引き締めの影響で2022年後半からクレジットカードの金利は過去10年見なかったほど高くなり、負担が増えています。
以上から、2022年の消費者は賃金の伸びがインフレに勝てずにクレジットカードで消費していたが、そろそろクレジットカードによる消費にも限界が見え始めてきたという状況が垣間見えます。
ただし、それでもまだアメリカは現時点(2023年1月時点)で景気後退ではないと思います。
失業率は過去最低で、数日前の記事で書いたとおり消費者のローン延滞率も過去の景気後退の突入時に比べるとまだ低いと思われます。
まだ景気後退ではないと思いますが、この先の景気後退が避けられない状況へと追い込まれつつあるのが2022年12月から2023年1月の認識です。個人的にはアメリカはあと半年くらいあれば、景気後退に陥ると思っています。
インフレ圧力の低下
最後にアメリカのインフレの状況について書きます。この記事が長くなってきたことと、最近はインフレの重要度が下がったので軽く触れて終わりにします。
2021年から2022年前半までは「コロナで減った供給」と「現金給付とコロナ明けの強い需要」でインフレが加速しましたが、そのどちらの要因も弱まったのでアメリカのインフレは収まりつつあります。
これから雇用が冷えて消費も低迷すればインフレはさらに低下して、(少なくとも2023年のうちは)人々の話題から消えるはずです。
最後に
昨日の記事でも書きましたが、これらの経済指標の悪化は2022年からのFRBの金融引き締め影響を受けています。
FRBはさらなる数回の利上げを予定していること、また簡単には利下げに転じないつもりであることを予告していることから、既に悪化がみられている経済指標はさらに悪化するものと思われます。
投資家の懸念事項はインフレではなく、FRBの引き締めすぎにこれから移るはずです。この展開に拍車がかかるなら株は売り、国債は買いです。