ディズニーの2020年10-12月の業績が発表されましたが、予想したよりも良い決算でした。
売上、一株利益、動画サービスの加入者数のすべて項目でアナリスト予想を上回りました。まだ映画やテーマパークがコロナの影響を受けている上、動画配信ビジネスへの多額の投資が続いて厳しい時期が続いていますが、今期の決算では久々に黒字化もした模様です。
ただ、それでも売上は前年比マイナス22%で復調までの道のりは遠そうです。
株価はすっかりコロナ前の水準に回復していますが、業績の回復をかなり早く織り込んでいるか、動画配信サービス「ディズニープラス」の期待が先行して株価が上がっているように見えます。
この記事のポイント
- 2020年10-12月は予想を上回る好決算だった。3四半期ぶりの黒字化も達成した。
- アニメ動画配信サービス「ディズニープラス」は予想を上回るペースで加入者を伸ばしている。またスポーツ動画配信サービスの「ESPNプラス」の加入者数も予想を上回った。
- 長期的に保有できる銘柄だと思って信頼している銘柄だが、今は買い増しはしない。動画配信中心のビジネスに大きく舵をきる変革期で投資が加算で利益が出にくい上に、株価は2年から3年先の利益を見越して目一杯の価格がついている。コロナ後の業績回復も既にかなり株価に織り込まれている。
私はディズニーの株は、コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンなどのように超長期的に保有できる銘柄だと思って、信頼しています。
ただ、今は投資家の期待が高く、株価が高くなっているので「予想よりも良い決算だったから」、「これからコロナが収束すれば、映画やテーマパーク収入が回復するから」という理由で買い増さなくてよいと思っています。
予想を上回る業績を発表
今期のディズニーもコロナの影響で業績の低迷が続くかと思われていたのですが、予想ほど悪くなかったです。
- 売上OK:162.5億ドル(予想158.8億ドル、前年比マイナス22%)
- 一株利益OK:0.32ドル(予想マイナス0.34ドル、前年比マイナス79%)
- ディズニープラス加入者数OK:9490万人(予想9070万人)
- ESPN加入者数OK:1210万人(予想1150万人)
上にあげた主要な数字は全てアナリストの予想を超えています。また、3四半期ぶりに赤字を脱出している点も印象が良いです。
ただ本来のディズニーの強さは戻っていないようで、売上や利益は前年比で軒並み大きなマイナスが続いています。
単位B:10億ドル | 21Q1 | 前年比 |
---|---|---|
売上 | $16.2B | -22% |
営業収益 | $1.33B | -67% |
調整後一株利益 | $0.32 | -79% |
売上成長率も前四半期とほぼ変わらずのマイナス22%で、業績回復が足踏みしています。
今期は久々に赤字を脱出しましたが、純利益はほぼゼロです。
この企業はコロナ前から動画配信サービスへの投資が重荷になっていた上に、コロナで映画やパークが大きな赤字になって二重の苦しみを抱えています。
今に始まったことではないですが、コロナ前の2019年から純利益が急減しているところを見ると、投資意欲は減ってしまいます。
コンテンツとテーマパーク売上はなお大きく低迷
ディズニーの部門別の売上を見てみると、やはりコロナの影響で映画などのコンテンツ売上とテーマパーク部門の売上が前年比マイナス50%台で大きく低迷している様子が見えてきます。
売上(単位B:10億ドル) | 21Q1 | 前年比 |
---|---|---|
メディア・ネットワーク(テレビなど) | $7.7B | +2% |
動画配信サービス | $3.5B | +73% |
コンテンツ売上(映画など) | $1.7B | -56% |
テーマパーク&グッズ | $3.6B | -53% |
部門別売上の中で唯一高い売上成長率を見せているのは、動画配信サービスです(正式なセグメント名はDirect to Consumerです)。
これだけ見ると「やはり、好調なディズニープラスが売上に貢献している」と思うかも知れません。確かにディズニープラスは確かに急成長しています。
しかし、決算書の数字を使って調べてみると、ディズニープラスの四半期の売上規模はまだ小さく$1.1B(11億ドル)しかありません。この部門で大きな売上規模を持っているのは、ディズニープラスではなく買収したHuluです。
サービス名 | 売上(10億ドル) | 前年比 |
---|---|---|
Disney+ | $1.1B | +160% |
EPSN+ | $0.2B | +85% |
Hulu | $2.3B | +35% |
合計 | $3.5B | +75% |
もしも今後もディズニープラスが大成功を納めて今のネットフリックスと肩を並べるまでになり、世界でユーザ数を2億人にまで伸ばしたとしても、四半期の売上は約$2Bにまでしかなりません。
今期のディズニーの売上$16.2Bでしたが、この規模の会社の成長エンジンとしては、ディズニープラスの売上規模が小さいのが気になっています。
ディズニープラスは段階的に大幅な値上げが必要になってくると思われます。
既に2-3年先の利益まで織り込んだディズニーの株価
ここまで、ディズニーは予想されたほど業績が低迷しなかったこと、また3四半期ぶりに赤字を脱出したという良い知らせをお伝えしました。
一方で不安な点としては、いまだにコロナの爪痕が大きく売上は前年比で大きく低迷してること、メディアで成長の牽引役と言われているディズニープラスは成長しているものの、売上規模がかなり物足りないので、今後の成長エンジンになるには火力不足だという点をお話しました。
とは言え、コロナの爪痕は今後1年程度で癒えるはずで、ディズニープラスもネットフリックスのように毎年値上げをすれば良いので、問題は何年もかければいずれ解決するのだと思います。
なので、長期投資をする上ではこの銘柄は問題ありません。ただ、今は買いではないと思っています。
アナリストの利益予想を見てみると、既に2-3年先の予想一株利益の30倍以上もの高い株価がついていて、この数字は私には割高に見えます。
今の投資家はディズニーにかなり強気なようです。コロナを克服して、ネットフリックスとの競争にもたくましく打ち勝ち、成長を続けるシナリオを思い描いて、既に株が買われているように見えます。