ウォルトディズニーの2020年1-3月期の決算は、悪かったです。新型コロナウイルスの流行の影響を強く受けたものになりました。
ディズニー社の見積もりでは型コロナウイルスの影響で今期の営業利益は14億ドル失われ、その大半の10億ドルの被害をテーマパーク部門が受けたようです。
テーマパーク、クルーズ船やツアーなどの売上が大きく減少し、調整後の一株利益は63%減の大幅減少を記録しています。
唯一の希望の光は、2019年11月の北米でのサービス開始から注目度が高い動画配信サービス「ディズニープラス」が予想を上回るペースで加入者が増えていることです。

ただ、ディズニープラスのユーザ数は3月末で3350万になりましたが、売上規模が大きくないために不調な部門の売上不振を補うまでには至っていません。
また、現金を確保するために上半期の配当を停止するとCFOが発言したことで、投資家の一部には株を売る動きが出て、株価は時間外取引で-2%減少しています。
この記事のポイント
- ディズニーの調整後一株利益はマイナス63%減少した。予定していた動画配信サービスへの投資だけでなく、テーマパーク・クルーズ船・ツアーの売上低迷で利益が急減速した。
- 一方、巣ごもり需要を受けて動画配信サービスは好調だった。この部門の売上は前年比+260%で成長した
- 特に、ディズニープラスの加入者数の伸びは著しく、4月は加入者の増加が加速した。19年11月のサービス開始から20年3月末までに3350万人を達成。さらにわずか1ヶ月(5月4日時点)で5450万人まで加入者を増加させた。
- 手元の現金を温存するために、20年上半期に配当の支払いを中止するとCFOが宣言。6ヶ月以内に新型コロナウイルスの影響が明らかになったら、配当を再検討するという。これを受けて、株価は-2%下落した。
2020年1-3月期結果
2020年1-3月期決算
- 調整後一株利益:0.6ドルで、予想を0.3ドル下回る(前年比マイナス63%)。
- 収益:180.1億ドルで5.1億ドル予想を上回る(前年比+20.7%)。
- ディズニープラス:3月末での加入者予想2650万人を上回る3350万人を記録。決算発表時には最新情報として5月4日時点で5450万人に達したと発表。
単位:10億ドル | 2Q20 | 2Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 18.0 | 14.9 | 21% |
営業収益 | 2.4 | 3.8 | -37% |
営業利益率 | 13% | 26% | – |
一株利益 | 0.26 | 3.53 | -93% |
調整後一株利益 | 0.60 | 1.61 | -63% |
売上は前年比で21%成長したものの、利益は大きく下がったようです。
もともと近年のディズニーは動画配信サービスという新たな収益源を作ったりしたことで、売上は順調に伸びている一方で、利益が減っている構造にありました。
これは動画配信サービスを収益の柱の1つに成長させるため、2019年から当面の利益を犠牲にして大規模な投資を行っているためです。
ただし、今期はもともと利益が減りやすいタイミングに、新型コロナウイルスの流行がやってきたことで、ディズニーの利益が急減速しました。調整後の一株利益のマイナス63%減少は、株主としてはかなり痛い数字になりました。
新型コロナウイルスの影響
ここからディズニー社の各部門の業績を見ていきますが、その前にディズニーの部門名を振り返ります。
ディズニーの部門
- メディアネットワーク:ABCや21世紀FOXなどのテレビ局やメディア
- パーク&グッズ:テーマパーク、ツアー、キャラクターグッズ
- スタジオ・エンターテイメント:ディズニー・スターウォーズ・ピクサー・マーベルなどの映画
- Direct to Consumer(D2C)&海外:動画ストリーミングサービスのDisney+、EPSN+(スポーツ専門動画配信)、Huluの売上と米国以外の売上
少しわかりにくいのは「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」ですが、この中には今のウォルト・ディズニー社が力を入れている動画サービスと海外事業の売上が含まれています。
今期決算では各部門への新型コロナウイルスの影響について触れていたので、以下にまとめておきます。
新型コロナウイルスの影響
- 今期の新型コロナウイルスの被害は、営業利益で14億ドル。
- 最も被害を受けたのはパーク&グッズ部門で10億ドル。テーマパークやグッズ販売店は閉店し、クルーズ船やツアーは中止になった。グッズの供給網も混乱が生じた。
- スタジオ・エンターテイメント部門では映画製作の遅れ、映画上映やステージの中止が多く見られた他、メディア部門ではイベントの中止などでテレビ番組製作に影響が出た。
- メディア部門とD2C部門でも広告収入の落ち込みが見られた。
既に、何度か触れたように新型コロナウイルスの影響は甚大で、特にテーマパーク部門の収益に大きな被害がでたようです。
部門別業績
ここからは、既に触れた新型コロナウイルスの影響を意識しつつ、部門別の業績を見ていきます。
部門別収益
売上(単位:10億ドル) | 2Q20 | 2Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
メディアネットワーク | 7.3 | 5.7 | 28% |
パーク&グッズ | 5.5 | 6.2 | -10% |
スタジオエンターテイメント | 2.5 | 2.2 | 18% |
D2C&海外 | 4.1 | 1.1 | 260% |
その他 | -1.5 | -0.2 | – |
合計 | 18.0 | 14.9 | 21% |
今期はパーク&グッズの売上が大きく低迷しました。一方で、動画サービス部門を含むD2C部門は前年比260%で急成長し、全体の売上成長に貢献しています。
ユーザが急増したディズニープラス
ディズニー社の映画・テレビ番組が見放題になる動画配信サービス「ディズニー・プラス」が、新型コロナウイルスの流行下で加入者数を大幅に伸ばしたことは、今期の唯一の明るい材料かもしれません。
3月末で3350万人、決算発表前の5月4日の時点で5450万人までユーザが増加したようです。
Disney+ | ユーザ数(万人) | 単価(ドル) | 年間予想収益(10億ドル) |
---|---|---|---|
1Q20 | 2650 | 5.56 | 1.77 |
2Q20 | 3350 | 5.63 | 2.26 |
参考:20年5月 | 5450 | (非公開) | (非公開) |
サービス開始から半年の3月末に年間22.6億ドル(最新のユーザ数5450万人なら年間36.8億ドル)のビジネスを作り出したのは、さすがディズニーです。
ただし、以下の営業利益を見るとわかるのですが、D2Cは今は利益がでなくてもとにかく売上上昇を優先させるベンチャー企業のような成長段階にあります。なので、これだけの急成長をしても全く儲かっていません。
その上、今期は新型コロナウイルスの影響を受けて、パーク、クルーズ船、ツアーを含む「パーク&グッズ部門」、映画の売上を含むスタジオエンターテイメント部門で利益が圧迫されたため、全体的に営業利益はマイナス37%とかなり苦しい戦いを強いられました。
営業利益(単位:10億ドル) | 2Q20 | 2Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
メディアネットワーク | 2.4 | 2.2 | 58% |
パーク&グッズ | 0.6 | 1.5 | -58% |
スタジオエンターテイメント | 0.5 | 0.5 | -8% |
D2C&海外 | -0.8 | -0.4 | -111% |
その他 | -0.3 | 0.0 | – |
合計 | 2.4 | 3.8 | -37% |
上海ディズニーランド再開の明るいニュースも本格稼働には長い道のり
また最もダメージを受けたテーマパークでは、上海ディズニーランドで5月11日から営業を再開していく計画を明かしました。
ただし、本格的な業務再開には長い時間がかかりそうです。
中国政府は収容人数の30%を上限にテーマパークの再開を認めているため、当面は本来1日8万人来場できる上海ディズニーランドで30%に相当する2万4000人の来場を目指して、数週間かけて段階的に営業を再開するようです。
既に新型コロナウイルスの流行が去った中国でも、売上回復には長い時間がかかりそうです。
今のディズニーの唯一の希望の光は動画配信サービスですが、新型コロナウイルスのダメージをカバーできるほどの売上規模にはまだ成長していません。
ディズニー株の購入タイミングは密かに狙っているのですが、しばらくは苦戦が続くと思われるので、もう少しだけ購入するのを我慢しようと思います。