ディズニーの2019年7-9月期(4Q)の決算発表がありました。利益・売上ともに予想以上の好決算でした。そして、11月12日のアメリカでの動画ストリーミングサービス「ディズニー+」のリリースを前に、決算の話題も自然とディズニー+に集まっています。
「ディズニー+でどんな発表があったのか」「アマゾンのFire TVでもディズニープラスが見れるようになるって聞いたけど、どういう意味なのか」この辺りに焦点をあてて、この記事で触れていきたいと思います。
この記事のポイントはこちらです。
- 2019年7-9月期の決算は、売上・利益ともに予想を上回る好決算だった。
- 社運をかけた動画ストリーミングサービス「ディズニー+」は11月12日に米国でリリース予定。オランダでのサービス試験も成功したと報告あり、ディズニー+のリリースに向けていよいよ準備が整った。
- 動画ストリーミング業界のライバルのアマゾンのFire TVでもディズニープラスを見れるようになると発表。アマゾンは、Amazonプライムビデオもディズニープラスも契約するユーザを想定していることを意味する。
- ディズニー+はネットフリックスやアマゾンなどの大規模動画ストリームサービスとライバル関係ではなく、共存する道を進んでいる。ユーザは複数動画ストリームサービスを契約する時代に移り、その中でディズニー+は躍進する。
ディズニー19年7-9月期は予想以上の好決算
まずディズニーの決算の結果を振り返りたいと思います。売上・利益ともに予想よりも良かったです。この結果を受けて、株価は時間外で5%ほど上昇しています。
- 一株利益:予想0.95ドルを上回る1.07ドル(前年比-28%)
- 収益:190.4億ドルの予想を上回る191億ドル(前年比+34%)
前年比でみると、利益は大幅減少、売上は大幅増加で凄いことになっていますが、この1年の間に21世紀フォックスを買収した影響があるので、これはあまり当てにならない数字です。
新サービスのディズニー+をリリースに向けた多額の投資の影響で利益が落ち込むことは、3ヶ月前の決算発表時にも注意喚起がありましたが、警戒した中でも予想された利益も、そして収益も予想を上回ってきました。
部門別売り上げの注目はD2C部門
以下の表は、ディズニーの部門別の売上です。注目はD2C(Direct to Consumer)です。
既にディズニーはスポーツ専門の動画ストリーミングサービスEPSN+などを手掛けて前年から急成長を遂げていますが、ここに来季以降はディズニー+が乗ってくることになります。
ディズニー+のストリーミングサービス開始を前に、オランダで試験を試験をしたそうですが、「極めてうまく言った」とボブ・アイガーCEOがご満悦で話をしています。ディズニーの収入源としては3番目に大きなものになっていますが、来季以降どこまで伸ばすかが注目です。
売上(単位:100万ドル) | 2019年4Q | 2018年4Q | 前年比 |
---|---|---|---|
メディアネットワーク | 6,510 | 5,325 | +22% |
パーク&グッズ | 6,655 | 6,135 | +8% |
スタジオエンターテイメント(映画など) | 3,310 | 2,177 | +52% |
D2C&海外(ESPN+動画ストリーミング等) | 3,428 | 825 | +316% |
その他 | -803 | -156 | -415% |
合計 | 19,100 | 14,306 | +34% |
アマゾンFire TVがディズニー+サポートを発表した意味
この決算で一番のポイントは、Amazon Fire TVでもディズニープラスが見れるようになったと発表されたことです。これで、Android, iPhone, iPad, Apple TV and Rokuなど、さまざまなデバイスでディズニー+が見れるようになりました。
ただ、見れる機器が増えた以上に、アマゾンがディズニー+を見れるようにした意味は大きいです。動画ストリーミングサービスでライバルになると見られていたアマゾンが、ディズニー+と共存する形を選んだのです。これは非常に面白い動きです。
2019年に絶賛激化中の動画ストリーミング戦争ですが、その結末はクラウドコンピュータのように勝者の1-2社が独占する勝者総取りの世界になると今までは思われていました。
しかし、ディズニー+が月6.99ドルの安価な価格設定をしたことで、ユーザはアマゾン・ネットフリックス・ディズニーの中から1社を選ぶのではなく、「アマゾンやネットフリックスを見ながら、ディズニー作品が見たい人はディズニー+も契約する」という流れに変わりつつあります。
戦い方が変わった動画ストリーミングサービス
このディズニー+の低価格戦略によって、業界の構図や戦い方も最近になって変わったと私が考えています。
注目のストリーミングサービスをまとめると以下のようになります。
動画ストリーミングのタイプ | サービス名 |
---|---|
大規模コンテンツで月1000円以上 | ネットフリックス・アマゾンプライム |
小規模ながらオリジナルコンテツが魅力の1000円/月以下のサービス | ディズニー+・アップルTV+ |
ユーザは全ての中から一つの動画ストリーミングサービスを契約するのではなく、「大規模コンテンツを契約しつつ、人の好みによって小規模コンテンツながらディズニー+やアップルTV+を選択して契約する」形に変わりつつあります。
これはネットフリックスやアマゾンにコンテンツの数で劣るディズニーにとって、非常にうまい戦術です。真っ向から勝負したら、間違いなく潰されていたはずです。ネットフリックスやアマゾンとの直接対決を回避したからこそ、ライバルのアマゾンのFire TVでも見れるようになり、結果的に多くのユーザを取り込むことに成功しそうです。
メディアの最大手のディズニーらしからぬニッチ戦略(ネットフリックスやアマゾンとの対決を避けた隙間ビジネス)ですが、価格設定を抑えて戦い方を変えたことで、アマゾンとも共存でき、ユーザ数を一気に増やせる可能性が開けてきました。
近い将来、MBAの教材の事例になりそうな見事な戦術だと思います。
サービスリリースはこれからですが、このディズニー+が成功すれば、ディズニーの株価はしっかりと上を目指すことができます。コンテンツの数に不足はあれど、質には全くの不足はありあせん。ディズニー+がどこまで世の中に浸透するか、そしてディズニー株をどこまで押し上げることができるか、期待がかかります。