今週は6月のアメリカの消費者物価の発表が予定されています。
これからのアメリカの消費者物価で気にする点は1つです。住居費(Shelter)の伸びがどれだけ鈍化するかどうかです。
この住居費の鈍化さえ起これば、アメリカの消費者物価は(数年後にインフレ再燃はあるかもしれませんが、とりあえずは一時的にでも)解決したと同然です。
この記事のポイント
- 今のアメリカは住居費の伸びを除くと、すでに高インフレではない。
- 次の6月の消費者物価の発表では、住居費の伸びが鈍化しているかどうかが鍵。
- 住居費が鈍化していない場合には金融引き締めが長続きして、アメリカは結果的に後で大きな経済的ダメージを負う
鍵は住居費
あと数日でアメリカの消費者物価の発表ですが、冒頭でも振れたように見どころは住居費のインフレ鈍化が進むかどうかだと思います。
消費者物価の中でにはエネルギー、食料品、交通費などさまざまな項目がありますが、その中でも一番大きな割合をしめているのが住居費です。しかも、前月まで前年比+8.0%と大きな価格の伸びを記録して消費者物価を押し上げています。
この住居費さえインフレの鈍化が進めば、アメリカのインフレ(少なくとも消費者物価)の高止まりの問題は解決されると思っています。
試しに、住居費を除く項目で消費者物価の伸びを確認すると、2023年4月にすでに前年比2.1%まで低下していることがわかります。
サービス価格も家賃が押し上げている
「いやいや、今のアメリカは賃金上昇率が高くてサービス価格が上昇しているのでは」という考えを持っている人もいるかも知れません。
たしかに、今後はそのような展開になるかもしれませんが、今の消費者物価が下がるためにはやはり住居費が下がれば十分だと思います。
家賃を除くサービス価格の前年比を以下でグラフにしてみましたが、やはり家賃さえなければ順調にインフレは下がっているように見えます。
これを見る限り、やはり今ネックなのは家賃(住居費)です。
コア指数を押し上げているのも住居費
「今のアメリカは消費者物価は下がっている。高止まりして問題なのは、エネルギーと食料を除いたコア指数なのでは?」という疑問もあると思います。
ただ、コア指数こそ住居費が占める割合が高いので、住居費の伸びが収まれば大きく鈍化するはずです。
次のグラフは、消費者物価の中でも一度価格が上がったらなかなか下がらない品目だけを集めた(エネルギーと食料を除く)粘着性コアと、住居費を除いた粘着性コアの数字を比較したものです。
これを見ると、インフレがなかなか鈍化していないと言われるコア指数でも、住居費さえなくなれば大きくインフレ率が鈍化することがわかります。
まとめ
ここまでで、住居費の伸びさえ収まれば、アメリカの消費者物価の伸びが収まるという話をしてきました。
そして、消費者物価の住居費よりも先に動くと言われている他の賃貸価格指数はすでに大きく低下していることから、住居費もそのうち鈍化すると思われます。
問題は住居費が鈍化するペースです。住居費の鈍化ペースが遅いならインフレ率がすぐには下がらず、「まだインフレは高い」という見方をされかねません。
FRBは消費者物価をそれほど気にしないかもしれませんが、同じように動くPCEデフレータの数字は気にしています。
なかなかインフレ率が鈍化しなければ、さらなる利上げや金融引き締めの長期化につながります。それは株にも国債にも逆風なので、いち早くインフレ率が下がるに越したことはありません。
そのインフレ鈍化の鍵は、やはり住居費だと思います。