11月のアメリカの消費者物価の発表がありました。
内容は既に知っている人も多いと思います。大きな問題もなくイベントを通過したように見えますが、若干気になる点も見られました。
この記事のポイント
- 全体的には11月のアメリカは予想通り低い物価の上昇が続いた模様。
- しかし、インフレ鈍化を牽引しているのはエネルギーとモノで、住居費やサービスの価格はまだ高い伸びが続いている。
- インフレ鈍化があらゆるモノ・サービスに行き渡らないと、市場予想の2024年5月の利下げは後退するリスクがある。
予想通りの落ち着いた物価上昇
11月の消費者物価は予想通りの内容でした。エネルギーや食料品などの変動の大きな項目を除いたコア指数で見ても予想と相違ない結果になっています。
- 前月比:0.1%(予想:0.1%、前回:0.0%)
- コア前月比:0.3%(予想:0.3%、前回:0.2%)
前年からの伸びを下のグラフで見てみても、ちゃんとインフレ率は低下しているように見えます。
おおむね問題ない内容だったと思います。
インフレ鈍化が見られる品目はかたよっている
しかし、内訳を見てみると2点ほど少しイヤな面も見えてきます。
1つ目は住居費の伸びが高い状態がまだ続いていることです。次のグラフは住居費の前月比を年率で表示したものですが、11月の住居費の伸びは年間5.5%でコロナ前よりもだいぶ高い状態でインフレ鈍化が弱まっているように見えます。
もう一つの良くない点は、サービス価格の上昇です。
サービス価格は賃金上昇の影響受けやすく、一度高止まりするとなかなか下がらないと言われますが、こちらも高い伸びが続いています。
最新11月の伸びは年間7.1%のペースです。これは少しよろしくない状況にも見えます。
全体的にはアメリカのインフレ鈍化は進んでいますが、モノのインフレ鈍化が大きいだけでサービスや住居費などには根強いインフレがはびこっているようです。
このあたりの懸念はつい先日も書いたばかりだったのですが、11月の消費者物価でも解消していなかった模様です。
>>米インフレは鈍化が続いているが、サービスと住居費に課題あり(2023年12月10日記事)
さいごに
さて、11月のアメリカ消費者物価は全体的に予想通りにインフレが鈍化していることを示して、市場は歓迎したように見えます。
しかし、内訳を見てみるとエネルギーやモノの価格が落ちているのに、住居やサービスなどが根強い価格の上昇が続いていて、インフレ鈍化が全体に行き渡っていない様子が見えてきます。
こうした状況が解決しない限り、2024年の利下げ開始はじわじわと延期される恐れがあり、それは株価や債券価格にマイナスの影響が出る恐れがある点には注意が必要です。