5月のアメリカの消費者物価が発表になりました。
結果はマチマチだったと思います。
全体としてはエコノミストが予想してたよりもインフレの鈍化は進んでいましたが、価格変動の大きなエネルギーや食料品を除いたコア指数では予想ほどインフレ鈍化が進んでいない様子も見えてきました。
この記事のポイント
- 5月のアメリカの消費者物価は予想よりもインフレ鈍化が進んだ。
- 一方で、コア指数ではインフレ鈍化がゆっくりだったことがわかった。
- ただ、コアを押し上げている住居費は時間とともに解決する。これ以上の金融引き締めは低インフレをまねく恐れがある。
5月の消費者物価指数
まず、アメリカの消費者物価全体を見てみると、予想よりも物価の上昇は緩やかで良い傾向が見られました。
- 前月比:+0.1%(予想:+0.3%)
- 前年比:+4.0%(予想:+4.2%)
下の図は、消費者物価の前年比をグラフにしたものですが、順調に鈍化が進んでいることがわかります。
前回4.9%だった伸びは、4.0%にまで低下しました。とても良いペースで、そろそろインフレ鈍化のペースをゆるめないと目標の2%を通り越して低インフレになってしまう恐れが出てくるような気配すらあるくらいです。
まだ下がらないコア指数
しかし、今月の消費者物価はエネルギー関連の価格が多く下がっていることが効いているようです。
変動の大きなエネルギーと食料品を除いたコア指数で見てみると、予想ほどインフレが鈍化していないことがわかっています。
- コア前月比:+0.4%(予想:+0.4%)
- コア前年比:+5.3%(予想:+5.2%)
コア前年比はまだ5.3%と、目標の2%までかなり高い状態が続いています。
特に、インフレの鈍化を期待していた住居費で、前回よりも前月比が大きかったのはいただけないかったです。
というわけで、住居費のインフレ鈍化が思ったほど進まず、コア指数の鈍化は思ったほど進まなかったようです。
低インフレへの懸念
5月の消費者物価にはコア指数でもインフレの鈍化を期待していたのですが、期待通りにはなりませんでした。
それでもいずれコア指数も大きく下がると、私は思っています。
既に何度も話をしていますが、住宅価格は既に大きな鈍化をしているので、消費者物価の住居費にもいずれ大きな鈍化の波がやってくるからです。
まだコア指数が強かったこともあり、来月7月にアメリカはまだ1回利上げがあるという見方をしている人が多い気がしますが、これ以上の金融引き締めをすれば、アメリカは別の問題を抱えるリスクがでてきます。
その問題は低インフレです。
住居費の項目を除くと、5月のアメリカの消費者物価は既に前年比2.2%まで低下しています。
前述の通り、住居費がこれから下がるなら、あとは時間がインフレの問題を解決するはずです。それにも関わらず、金融引き締めを続ければ2%を下回る低インフレかデフレを招くのだろうと思います。
低インフレやデフレで恩恵を受けるのは米国債です。2023年前半の米国債のリターンはさえないものでしたが、これから1年程度で大きく上昇するチャンスはまだ十分にあると思っています。