前日からホワイトハウスが警告していた通り、5月のアメリカの消費者物価はとても大きな値になりました。
FRBはインフレを抑え込もうとしていますが、今のところこの試みは成功してないので、さらなる金融引き締めが必要な状況に変わっています。
これは米国株にとってはマイナス材料なので、昨晩も株は大きく売られました。
以前から言っていた通り、インフレとの戦いは長期化すると思われるので、米国株は買い(ロング)ではなく売り(ショート)で良いと思います。
この記事のポイント
- 5月のアメリカの消費者物価指数は8.6%で、1981年以来の約40年ぶりの高水準を記録した。
- 投資家の中には3月以降にアメリカのインフレ圧力が弱まったとの見方があったが、残念ながらその見方は否定された。
- これから数回大きな利上げが予想されており、米国株は下落なくそれに耐えるのは困難だと個人的には考えている。
予想以上に伸びたアメリカの消費者物価
既に知っている人も多いと思いますが、5月のアメリカの消費者物価指数を見ていきます。
- 前年比:8.6%(予想:8.3%)
- 前月比:1.0%(予想:0.6%)
前年比と前月比どちらも予想を大きく超えた数字が発表されました。そして、そのどちらも良くない点があります。
まず、前年比についてですが、市場の投資家の一部には「3月で既にアメリカの物価の伸びはピークを超えた」という声が上がっていました。
しかし、今回ピークと思われていた3月の物価の伸びに逆戻りしてしてしまっています。
もう一つまずいのは、前月比でも消費者物価がかなり高い伸びを見せていることです。
先程、5月の物価の伸びは前月比で1.0%だったお伝えしましたが、このペースがもしも12ヶ月続くと(年率)12.3%の物価の伸びになってしまいます。
物価の伸びは各月にバラツキがあるので、アメリカの物価がすぐに12%になるわけではありませんが、5月の物価上昇ペースは今までの月に比べても大きく、「既にピークを超えた」と考えていた投資家の期待を裏切る形になったようです。
懸念している住居費は高い伸び
そして半年以上前から心配していた、アメリカの住居費の伸びはかなり心配な状況になっています。
5月で、とうとう消費者物価の住居費の伸びは前年比5.4%にまでペースを上げてきています。
「前年比5.4%の伸びなら全体の伸び(8.6%)よりも低いし、たいしたことないではないか」と思われるかも知れません。
しかし、恐ろしいのはこれからです。
この住居費はアメリカの消費者物価の計算で3割を占める大きな比重が置かれているのですが、上の図で見たように伸びが一定して続いていて鈍化の兆しは全く見えていません。
過去のデータ(以下)を見ると住宅価格の伸びが止まって2年くらい経たないと「消費者物価の住居費」の数字が鈍化しないようなのですが、住宅価格は3月のデータまでは上昇が続いていることがわかっています。
今のハイペースな利上げを考慮に入れても、これから1年以上は「消費者物価の住居費」が上昇を続けて、アメリカのインフレ率を押し上げることになりそうです。
さらなる利上げを心配する投資家
インフレが予想以上だったので、投資家は「インフレを抑えるためにはさらなる利上げが必要だ」と考えたようです。
来週のFOMC(金融政策を決める会議)では大半の投資家は0.50%幅の利上げを予想していますが、7月には0.75%の予想をする人も出始めています。
さらに、9月FOMCの政策金利予想を見てみると0.75%幅の利上げが多数派になっているようです。
去年から私は「1.75%-2.00%への利上げに、米国株は耐えられない」と話をしていましたが、その水準には7月に達すると見込みです。そこに耐えたとしても、次に0.75%幅で2.50-2.75%へと利上げできるのかはとても大きな疑問が残ります。
たぶん、9月の0.75%幅の利上げは耐えられないと思います。今まで「アメリカの景気後退か、株価の大幅下落が起こるまで利上げは続く」と言ってきましたが、2022年は株価の大幅下落のほうが先にやってくる可能性が高くなった気がします。
だから、やはり米国株は買いではなく、売りで良いと思っています。