米中貿易戦争での関税比の引き上げは2018年7月から第1弾から、既に1年以上が経過しています。
この1年間もの間に何度も追加で関税が発動されましたが、アメリカも中国も全体的に景気は持ちこたえていて、ニュースになっているほど両国とも貿易戦争の影響を受けていない印象すらあります。
しかし、19年8月の中国の貿易統計を見る限り、米中貿易戦争の影響は与えていないどころか、多大な変化を中国に与えている様子が見られます。
米国への輸出16%、輸入は22%減少
トランプ大統領が新たな関税発動を予告して米中の貿易の対立が激化した2019年8月、アメリカへの輸出は前年比16%減少、アメリカからの輸入は22%減少と、貿易戦争の影響を色濃く反映した数字が雇用統計にあらわれています。
- 米国への輸出:前年同月比で16%減少
- 米国からの輸入:前年同期比で同22%減少
全体では輸出はマイナス1%、輸入もマイナス5.6%
しかし、アメリカを含めた中国の貿易全体では、輸出はマイナス1%、輸出はマイナス5.6%とマイナス幅を抑え込んでいます。
- 輸出:前年同月比1%減少、予想の2.2%増加を下回る。
- 輸入:前年同月比5.6%減少、予想の6.4%減少を上回る。
このからくりは、中国の東南アジアへの貿易の強化にあるようです。
中国はベトナムとの貿易を促進するなど東南アジア各国への輸出を加速化させていて、アメリカとの貿易戦争の影響を軽減させてます。ベトナムへの輸出は前年比26%増加、東南アジアへの輸出は11%増加が見られていました。
アメリカ企業も、中国企業もともにベトナムを経由で生産して商品を貿易することで、米中の関税の影響を回避している構図があるとも言われています。
規模の大きなアメリカとの貿易の減少は、他でカバーしきれていない
しかし、中国にとってアメリカは最大の貿易相手国なので、いかに東南アジアへの輸出を増やしてもカバーしきれるものではありません。
順位 | 貿易相手国・地域 | 輸出割合 |
---|---|---|
1 | 米国 | 19.0% |
2 | EU | 16.4% |
3 | 香港 | 12.4% |
4 | 日本 | 6.0% |
5 | 韓国 | 4.5% |
6 | ベトナム | 3.2% |
7 | ドイツ | 3.1% |
8 | インド | 3.0% |
9 | オランダ | 3.0% |
10 | 英国 | 2.5% |
8月はアナリスト予想では輸出は2.2%の増加と見ていましたが、結果は1%の減少に陥っています。本来であればアメリカ関税引き上げ前に輸出の駆け込みが鮮明に見えてくるはずなのですが、その様子もなかった点は奇妙です。
中国は輸入が伸びなけれな、輸出を減らしてくる
今の中国はGDP目標達成のために、貿易の黒字を確保したい状況です。
もしも、このまま中国が輸出を減らすようならば、それ以上に輸入を減らしてGDPの目標を未達にならないようにしてくるはずです。そうなると、今度は中国に輸入を更に減らされるアメリカ製造業がダメージを被ります。
No | 米国から中国への輸出品 | 輸入割合 |
---|---|---|
1 | 機械・電気機器 | 22% |
2 | 車両・輸送機器 | 19% |
3 | 農産物 | 11% |
4 | 化学工業製品 | 10% |
5 | 光学機器 | 8% |
貿易の関税は中国を苦しめていますが、アメリカにもしっかりとダメージが跳ね返りそうです。