以前、2020年11月15日時点で今後の米国株の上昇を阻むような出来事が何か、それはどれだけ脅威が差し迫っているかについて、以下の記事で書きました。
株高シナリオをおびやかすリスクを点検
2020年のアメリカは景気後退の最悪期を過ぎ、これから景気回復と株高を迎えようとしてます。この記事は2020年11月時点で株高を脅かすリスクは何か、それが実際に危険シグナルを発してるかどうかを点検します。
それから4ヶ月が経過して、米国株を取り巻く環境も少しずつ変わってきているので、この記事で再び取り巻く環境とリスクについて点検をしていきたいと思います。
この記事のポイント
- アメリカの新型コロナウイルスの脅威はほぼ過ぎ去ったと見て良さそう。ワクチンの接種は順調に進んでおり、2020年秋冬を超える感染拡大は起こらない可能性が高い。
- 全米での大規模ロックダウン(都市封鎖)が行われた2020年3月からずっと懸念されていた企業の倒産も、ほぼリスクはない。
- 残るリスクは(A)金利上昇、(B)インフレ率上昇、(C)コロナの回復が落ち着いた後に訪れるかも知れない低成長の3つ
新型コロナウイルスの脅威が去ったアメリカ
11月の時点であげたリスクは次の5つでした。
11月15日の記事時点で見えていた米国株のリスク
- (1).ワクチン開発が軒並み失敗に終わる。
- (2).2020年秋冬にかけてウイルスが再流行し、都市封鎖が必要になる。
- (3).企業に倒産の連鎖が起こる。
- (4).低い金利を背景に株高が続いていたが、長期金利が上昇してしまう。
- (5).インフレ率が上昇して、政策金利を引き上げざるを得なくなってしまう。
このうち、(1)(2)の2つはアメリカに関してはもはやリスクではなくなりました。
(1)のワクチンについてはファイザー、モデルナ、ジョンソン&ジョンソンが開発したものが承認され、アメリカでは1日250万回もの接種が行われています。先進国の中では、アメリカはイギリスについでワクチンの投与が進んでいるようです。
世界ではまだ今後も感染拡大の第4波、第5波が続くと思われますが、ワクチン接種が進んでいるアメリカでは2020年秋冬が最後のピークだったと思われます。
アメリカの感染拡大は約3-5月毎に起こっていましたが、ブルームバーグによればあと4ヶ月すれば(7月末には)アメリカ国民の75%がワクチンを打ち終えて集団免疫を獲得するようなので、次の感染拡大では2020年秋冬以上の被害はでないと考えられるからです。
倒産リスクも限りなく小さくなった
ちなみに、ワクチンで新型コロナウイルスの拡大が抑えられるなら、(3)の倒産リスクも限りなく小さくなったと思われます。
2020年夏頃に、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは「2020年末から2021年前半にかけては、貸倒れのリスクが高まると見ている」と発言していましたが、幸い2021年3月現在で倒産リスクが高まっている様子はありません。
倒産リスクが高まるといち早く反応する社債の市場を見ても、現時点では安定そのものです。
これからアメリカで金利が上昇して資金繰りに苦しむ企業が出てくると倒産が増える可能性はありますが、現時点では米企業の倒産リスクは極めて低いと思います。
米国株に残る3つのリスク
以上の話から、新型コロナウイルスの感染拡大リスクと企業の倒産リスクを除き、今回新たに見えてきたリスク1つを加えた合計3つが現時点で米国株に残っているリスクです。
今後の米国株のリスク
- 今まで低い金利を背景に高い株価がついていたが、長期金利が上昇してしまう【わずかに進行中】。
- インフレ率が上昇して、政策金利を引き上げざるを得なくなってしまう。【現時点で問題なし】
- [NEW]コロナからの力強い景気回復期が終わったあとの低成長期。【現時点で問題なし】
長期金利はわずかに上昇中でもS&P500
長期金利が上昇して株価に悪影響を与えはじめている点については、2月中旬から話をしているとおりです。
しかし、上昇しているとは言っても(実質の)長期金利はまだわずかで、S&P500も横ばいでほとんど下落していないので、まだ気にするほどではないです。
景気が強くなる5-6月頃までは金利が上昇で株が下落しやすい展開が続くと思っていますが、もしも既に大きく株価が下落していると感じるなら、リスクを取りすぎているか割高な株をもってしまっている可能性があります。
2021年の米国株、5月から6月頃の一時的な下落を少し警戒しています。
また本格的な株価下落は2022年後半だとしても、それまで右肩上がりに株価が上昇するのではなく、何度か雲行きが怪しくなって一時的な下落も経験すると思っています。直近で警戒しているのは5-6月頃です。この記事では、なぜ5-6月に下落が起きやすいと考えているのかを書いていきます。
悪いインフレ率の傾向もまだ見られず
今後は抑えられないほどの高いインフレ率(例えば4-5%以上の高いインフレ率)になるという予想をする投資家もいますが、2021年2月までのインフレ率を見る限りは目標の2%にも届いていなく、むしろ低インフレの状態が続いています。まだインフレが経済や米国株を脅かすような兆候は見られません。
ただインフレ率に警戒が必要なのは、21年5月から1年程度だと思います。
2021年のアメリカでは37年ぶりの好景気が予想されていますが低金利は継続される見通しなので、景気が加熱しやすくモノの値段(インフレ率)が上がりやすい環境になるからです。
2021年の一時的な好景気の後は低成長の可能性も
一方で、この好景気は恐らく一時的なものなので、2022年や2023年と時が経つにつれて、アメリカが低成長・低インフレの経済に入る可能性も十分にあります。
低成長になる理由は、本来なら2020年の不況で倒産するような低成長企業も金融緩和で救われているからです。
対応策について
以下の記事でも書きましたが、「長期金利が上昇するうちは、恩恵を受ける銀行株への投資を継続」、「インフレ率が増加するなら、その恩恵を受けるコモディティや貴金属への投資を増やす」、「低インフレ・低成長なら株に投資を増やす」という投資の切り替えができるように、今後1年は景気の流れを注意深く見ていたいと思っています。
2022年以降のアメリカ経済と市場が通るかも知れない3つのパターン
株に投資する時には、1年後や2年後の未来を見越して投資する必要があります。この記事では、2022年以降でいくつか起こりそうなパターンを書いて、それぞれのパターンで有利になる投資はどのようなものかを書いておきます。