昨晩、4月のアメリカのケースシラー住宅価格指数が発表されました。
結果は良くなかったです。ある程度、前月よりも住宅価格が上昇しているだろうという予想はしていましたが、想像以上の伸びでした。
この伸びが続くようなら、アメリカの物価指数は今の鈍化傾向がおちついた後に、インフレ再燃が起こる可能性があります。
この記事のポイント
- アメリカの住宅価格が再び上昇している。4月は前月比年率で11%超えのペースで住宅価格が伸びていた。
- 消費者物価に住宅価格が反映されるまでにはかなりの時間がかかるので、インフレ指標(消費者物価やPCEデフレータ)にはすぐに反映されない。
- インフレ指標は今のインフレ鈍化傾向がしばらく続くが、住宅価格の上昇が続くなら半年から1年後にインフレ再燃するリスクはある。
再び上昇を始めたアメリカの住宅価格
まずは前年比から見てみます。5月のケースシラー住宅価格はエコノミストの予想よりも住宅価格は高かったようです。
- 予想:マイナス2.55%
- 結果:マイナス1.70%
前年比でマイナスになっているので、「住宅価格は去年よりも下がっている」という見方はできるかもしれません。
ただし、前年比がマイナスだからといってアメリカのインフレが落ち着くというように考えないほうがいいかもしれません。
次のグラフはケースシラー住宅価格指数(前年比ではなく、価格指数)ですが、この数ヶ月は上昇に転じていることがわかります。
問題は住宅価格の伸びが毎月ペースを上げていることです。
次のグラフは「前月からの価格の伸びが1年間続いたら、住宅価格は何%上昇するか(前月比・年率)」という見方で、ケースシラー住宅価格指数の伸びを見てみたものですが、2023年から価格の上昇ペースがあがっていることがわかります。
そして、5月にはついに年11%超えのペースにまで、価格上昇が加速しています。
この数字は2020年のパンデミック前の水準をかなり大きく超えてます。この伸びが続けば、インフレの再燃を招く恐れもでてきました。
インフレ再燃は今すぐには起こらない
ここまで、最近の数ヶ月で住宅価格の伸びが加速していること、それが続けばアメリカでインフレの問題が再燃することを書いていきました。
ただし、インフレの再燃はすぐに起こるものではないことに注意しておく必要があります。
住宅価格が上昇してもかなり時間が経たないとアメリカのインフレ指標に反映されないからです。
例えば、ケースシラー住宅価格指数の前年比は2020年6月には上昇を始めましたが、PCEデフレータや消費者物価にその影響が見られたのは2021年1月から2月頃で半年以上の差がありました。
また、ケースシラー住宅価格指数が下落をはじめて1年経った今の時期に、ようやくPCEデフレータや消費者物価に反映されはじめたくらいです。
なので、しばらくはPCEや消費者物価は今見られているインフレ鈍化の傾向が見られると思っています。しかし、先行する住宅価格の伸びが止まらないなら、半年から1年以内にそのインフレ指標の鈍化は止まってインフレ再燃が起こるリスクは高まったと思います。