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景気の減速を織り込むアメリカの債券投資家

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最近、債券投資家の中には景気の減速を織り込むような動きが見られます。

10月下旬になると30年国債が買われて、20年米国債の利回りよりも低くなる日が見られ始めました。こういう現象は政策金利引き上げで、景気が減速する心配があるときに見られます。

この現象が起こってもしばらくは景気後退(不況)にはならないので、まだ株は売らなくて良いと思いますが、年単位で少しずつ警戒を強めていく必要はありそうです。

この記事のポイント

  • 一部の投資家でアメリカの景気減速を懸念するような動きが見られる。
  • 10月末に30年国債の利回りが20年国債よりも低くなる動きが見られた。
  • すぐに景気後退や株価の下落を心配する必要はなさそうだが、要警戒。

景気減速の警戒から米30年国債の利回りは低下


この1週間ほどは、やたらと30年米国債が買われました。

普通は20年米国債のほうが利回りは小さいのですが、今ではあまりにも買われた30年国債のほうが利回りが低くなってしまう逆転現象まで起こっています。


出典:米財務省

このような動きは、政策金利の引き上げが行われるような時期で、なおかつ政策金利を引き上げた後に景気が冷え込むような恐れがある場合に見られます。

早い話、債券投資家はアメリカでこれからの景気が減速する恐れがあると警戒しているようです。

アメリカの景気後退について


ただし、30年米国債の利回りが20年米国債よりも下回ったからと言って、直ぐに景気後退になるわけではありません。

以下のグラフは、30年米国債と20年米国債の利回りの差をグラフ化したものです。

景気後退前に30年米債利回りのほうが低くなることは多い(以下のグラフで値がマイナスになることが多い)のは確かですが、1990年代を見てみると7年間その状態が続いた後に景気後退入りしたように、直ぐに景気後退になるわけではなさそうです。

30年米国債と20年米国債の利回りの差(灰色は景気後退)

出典:FRED

景気後退の訪れを知りたいなら他のデータを使う

上のグラフをよく見てみると、新型コロナウイルスによる2020年の景気後退の前には、30年債の利回りが20年債利回りよりも小さくなる(グラフの値がマイナスになる)現象は発生していませんでした。

より精度高く、景気後退の訪れを知りたいのなら、「10年債と2年債の利回りの差」かもしくは「10年債と3ヶ月債の利回りの差」を見ると良いと言われます。

以下は「10年債と2年債の利回りの差」をグラフ化したものですが、10年債利回りのほうが2年債よりも低くなったら(グラフの値がマイナスになったら)ちゃんと半年から数年で景気後退になっています。

10年債と2年債利回りの差(灰色は景気後退)

出典:FRED

2021年10月現在の「10年債と2年債の利回りの差」は1.07で、まだまだマイナスにはなりません。

前回の景気サイクルで同じ1.07を記録したのは、2017年4月でした。政策金利引き上げの悪影響で株価が崩れるまでは1年半前、コロナの景気後退までは3年弱前という時期です。

前回と同じペースで景気が変わっていくのなら、政策金利の引き上げで株価が崩れるまではまだ1年ほど時間があるようです。

さいごに


この記事では、一部の債券投資がアメリカの景気の減速を織り込み始めているという内容を書きました。

政策金利の引き上げを予想して期間の短い国債は売られて利回りが上昇する一方、期間が長い国債は景気の減速を見越して国債が買われて利回りが低下する動きが見られています。

具体的には、10月末には30年米国債が20年米国債の利回りよりも低くなる逆転現象も見られました。

ただし、すぐに景気後退がやってくるとか、株価の下落がやってくると言うのも、また違う気がしています。

より正確に景気後退の訪れを知らせてくれる、「10年債と2年債の利回りの差」かもしくは「10年債と3ヶ月債の利回りの差」を見てみると、まだ逆転現象は起こっていないからです。

だから、まだ株は手放さなくていいと思っています。

しかし、2022年後半や2023年になったら、今以上にかなり神経質になって株の投資を進めないといけないと思います。


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