7月も中旬から2020年第2四半期(2Q)の決算が続々と発表されます。
この2020年2Qは4月に見られた新型コロナウイルス感染防止のための全米の都市封鎖の影響を受けて、アナリストたちが深刻な業績不振を予想している決算期でもあります。
ただし、低迷が予想されていること自体は問題ではありません。アナリスト達の利益予想が低いということは、決算発表でアナリストの予想を超えるためのハードルは既にかなり低くなったとも言えます。予想超えの決算なら、株価は上昇するはずです。
個人的には20年2Qの決算発表を消化して「企業の今後の見通しの改善(今後12ヶ月の利益予想の引き上げ)が起こるか」に注目しています。見通しの改善が起こるのなら、米国株に見られる割高感が少しは改善されるはずです。
逆に、今後の利益予想が悪化するようなら、株は割高の警戒感が出てきてしまいそうです。
この記事のポイント
- 2020年の第2四半期のS&P500のアナリスト達による企業利益予想は、いまだかつてない引き下げが起こった。
- 7月の決算期を経て、今後12ヶ月のS&P500の一株利益予想が増えるのか減るのかに注目。
- 業績回復見通しが強まれば、株の割高感が改善される。一方で、景気の回復の低迷見通しが続くようだと米国株の割高感は依然として残る。
企業利益の急減速を予想するアナリスト
アナリスト達は2020年2Qの決算発表で、かなり悲観的な数字を予想しています。
通常でもアナリスト予想は最初は楽観的で、だんだん決算発表が近づくにつれて予想を引き下げて悲観的になる傾向がありますが、2020年2Qは過去5年間で比較してもかなり大幅な予想の引き下げが起こりました。
この利益減少の原因はほぼ間違いなく、新型コロナウイルスによる都市封鎖による経済の停止です。3月以降、アナリスト達の20年2Qの企業利益予想はただただ下がり続けました。
終了した決算期の利益予想が低いことは問題ではない
ただし、アナリストの企業利益予想が下がったことは、今となってはそれほど悪いことではありません。
S&P500の企業の利益が実際に減少したとしても、減少幅がアナリストの悲観的な予想の範囲に収まるなら、株価が下がることもないはずです。「ああ、なんだ。予想通りか」で済むからです。
すでに終了した決算期の企業利益予想が低いことは、それほど悪いことではないと思っています。
大幅に引き下げられたアナリスト予想すらとどかずに利益が低迷するようだと株価が下がるはずですが、個人的にはどちらかというと予想超えの企業もかなり出てくると思っています。
前期のビザなどの決算発表を聞いた限り、アメリカは4月中旬に景気の底打ちをしています。
さらに一部の経済指標を見ても、3-6月の景気は予想以上の回復傾向にあります。(予想以上の回復の代償として、アメリカでの予想以上の感染者拡大も引き起こしてしまっているようですが。)
20年2Qは深刻な経済の中でも、アナリスト予想を超えてくる企業もかなりあるような気がします。
注目ポイントは今後の企業利益予想見通しが上向くか
個人的に今回の決算期で注目しているのは、S&P500の企業利益の見通しが改善されるかどうかです。もっと具体的にいえば、今後12ヶ月の一株利益予想が上昇していくかどうかを見ています。
「今後12ヶ月の一株利益予想(予想EPS)」は、S&P500の適正価格を予想する上でとても重要です。
過去10年間は予想EPSを15.2倍した数字がS&P500の株価になっていましたが、今はS&P500は予想EPSの21.8倍もの株価がついていて、やや割高かもしれないと思っています。
7月2日時点のS&P500
7月2日時点 | 指数 |
---|---|
S&P500 | 3115.86 |
予想EPS | 142.66 |
倍率(PER) | 21.84 |
歴史的な低金利な今は、過去よりも高い倍率(PER)がついていても問題ないという考えもあります。ただ、米国株の研究で有名なシーゲル教授の話を聞いていると、シーゲル教授も18-20倍程度を適正と見ているような発言が聞かれます。
この割高感が解消されるためには「株が下がるか」、「予想EPSが引き上げられるか」のどちらかが必要ですが、もちろん投資家にとって嬉しいのは予想EPSが引き上げられることです。
2020年1Qの決算シーズンが終わってからは、予想EPSの下落が止まり底打ちの兆しがみられました。
2020年2Qの決算シーズンでも予想以上に良い決算を出す企業が続いて、今後の予想EPSが無事に上昇していくかを見ていきたいと思っています。
一方で、決算シーズンでも関係なく新型コロナウイルスと米国民との戦いは続きます。感染が拡大して再び都市封鎖が起こり、予想EPSが下がるような事態にならないかも、日々チェックしていく予定です。