最近はアメリカの銀行をめぐるゴタゴタが少し落ち着いた印象があります。
先日発表されたデータを見ても、確かに銀行からの預金の流出は一時期ほど大規模なものではなくなりました。
では、もう安心して良いかというと、まだその判断は早いと思います。
この記事のポイント
- 3月29日までの1週間で銀行の預金の減少は抑えられてきたが、銀行の混乱の原因となった金融引き締めは続いているので安心はできない。
- また、小規模銀行から企業への資金の貸し出しも減っている。このままでは経営難の企業が人員削減を行う恐れ(失業率悪化と景気後退)の恐れもある。
預金額の減少は抑えつつある
3月29日までのアメリカの銀行の預金額のデータが公開されました。
さっそく確認してみると、銀行の預金の減少はずいぶんと減少してきた印象はあります。
まだ預金が減っていることは変わりないのですが、その規模は3月中旬のシリコンバレーバンクの破綻があったときに比べると、かなり抑えられてきました。
ただ、まだ安心するのは早いかも知れません。
私はシリコンバレーバンクの破綻の原因は金融引き締めだったと思っています。これが続いている限りは、まだ数ヶ月後でも半年後でも別の銀行が同じような問題を抱える恐れはあると思います。
小規模な銀行から企業への貸出し額は減っている
もう一つ気がかりなのは、小規模な銀行が企業への貸出しを減らしている動きが止まるかどうか。
次のグラフは小規模の銀行から企業への貸付金額の推移を表したものなのですが、これを見ると3月以降に小規模な銀行は企業への貸出しをかなり減らしていることがわかります。
シリコンバレーバンクのような破綻の再発を防ぐために、FRBは銀行に今まで以上にリスク管理をするように促すはずです。なので、小規模な銀行から企業への貸出し額の減少はズルズルと長引く可能性もあります。
そうなれば、今後は銀行から資金を借りるはずだった企業の経営が苦しくなり、人員削減などが幅広い業界で増えるかも知れません。
銀行が生きのびるためにリスクを抑えるなら、今後は企業が苦しくなって失業者が増えるという、あちら立てればこちらが立たぬ状況になりそうです。
というわけで、まだアメリカは一安心という状況ではなく問題がくすぶっているように見えます。