くどいようで申し訳ないのですが、このブログ記事も先週発表されたアメリカの1月雇用統計についてです。
言いたいことは「アメリカの雇用は一見すると強いが、そうではない」という点で変わりませんが、追加で気づいたことがあるので手短に書きたいと思います。
この記事のポイント
- 1月に民間企業から労働者に支払われた賃金総額の伸びは低下している。
- 賃金総額の低下の原因で一番大きな要因となったのは平均週労働時間。1週間の平均労働時間の低下は景気後退時にしか見られない水準にまで下がっている。
- 平均労働時間の低下はアメリカの雇用が弱まっていることを示している。
アメリカ雇用統計について追加で調べたこと
アメリカの1月の雇用統計が発表された直後に、民間企業が労働者に支払っている賃金の総額の伸びが低下しているという内容を書きました。
これについて、もう少しだけ掘り下げてみたいと思います。
賃金の支払い総額は「雇用者数」「1週間の平均労働時間」「平均時給」の3つのかけ算で計算していますが、この3つの中でどの数字が総賃金の伸びを悪化させる要因になっているかを調べてみました。
結果は、明らかに「1週間の平均労働時間」が悪さをしていました。以下が、「1週間の平均労働時間」の推移です。
このグラフを見ると、2024年1月の平均労働時間は過去の景気後退(リセッション)でしか見られない水準にまで低下していることがわかります。
一般的に、企業は経営が苦しくなってもすぐに人員削減をすることはありません。まず行うのは、労働時間の縮小でその分の人件費を削減することです。
1月の労働時間のグラフには、すでに企業が労働時間を減らして賃金の支払いを抑えようとしていることがわかります。
あとは、この状況が一時的なのかどうかです。もしかすると、天候の悪影響を受けたり一時的な要因が働いている可能性もあるので、労働時間縮小が今後も継続するかを見る必要があります。
もしも、労働時間の縮小が続くなら、その後は従業員数を少なくする動きが本格化するはずです。
さいごに
ここでは、最新のアメリカの雇用統計で1週間あたりの平均労働時間が低下している話をしました。
過去にリセッションが起こった水準にまで労働時間が低下しており、この傾向が続くならやはりアメリカの雇用は強くないという話になります。
まだ要観察ではありますが、2023年のアメリカ経済を支えた強い雇用はだいぶ様子が変わってきたように感じています。