アップルの2019年10-12月期(2020年度第1四半期)の決算が発表されました。
利益・収益ともに予想を上回る良い決算で、時間外で株価は2.4%上昇しています。
製品別に売上を追っていくと「おや、変だな」と思われる箇所もあるのですが、会社としては前期に引き続き、好調をキープしています。
- 一株利益:$4.99で、$4.55予想を上回る。
- 収益:$91.8Bで、$88.50B予想を上回る。(前年比+9%)
この記事のポイント
- 収益・利益はアナリスト予想を超えて好調を維持。
- 好調の牽引したのは、iPhoneとワイヤレスイヤホン売上。
- iPhoneは新型モデルが好調で、5期ぶりに前年比プラス成長。
- ワイヤレスイヤホンも好調をキープ。惜しかったのは、生産が追いつかず売上成長率は前期よりも鈍化。
- アップルは推し進めているサービスの売上はアナリスト予想を下回った。2019年からアップルはサービスの会社になると言っているが、成長が加速している印象はないのは気になる点。
一言でまとめると、「全社的には好調。細かく見ると、好調なのは製品で、注力しているサービス売上が加速しないのは懸念材料」という感じです。
アップルは良い銘柄だと思いますが、株価が直近1年間で急上昇してしまったので、更にどれだけ上昇できる余地があるかはやや疑問です。
サービス売上がまだ加速しないことと売上成長率が+9%しかしていないことを考えると、しばらく上昇は緩やかになるかもしれません。
iPhoneとAirPodsの売上が好調
アップルの製品カテゴリ別の売上を見る前に、何の売上かわかりにくい用語の整理をしておきます。
アップルの売上構成を見る時にわかりにくいのは、「ウェアラブル&ホーム」と「サービス」です。それぞれの以下の製品・サービスが含まれます。
- ウェアラブル&ホーム:AppleWatch(時計)、AirPods(ワイヤレスイヤホン)、HomePod(スピーカー)など
- サービス:iCould(クラウドサービス)、AppleMusic(音楽)、AppleNews(雑誌)、AppleArcade(ゲーム)、AppleTV+(動画)、ApplePay(電子決済)、AppleCare(製品保証)など
製品カテゴリ別の売上を見た時に、気になったのは次の点です。
- iPhoneの売上が5期ぶりにプラスに転じた。
- ウェアラブル&ホームも+37%成長で好調。
- サービス売上は成長しているものの、成長の加速は見られない。
単位:100万ドル | 2020 1Q | 2019 1Q | 前期比 |
---|---|---|---|
iPhone | 55,957 | 51,982 | 8% |
Mac | 7,160 | 7,416 | -3% |
iPad | 5,977 | 6,729 | -11% |
ウェアラブル&ホーム | 10,010 | 7,308 | 37% |
サービス | 12,715 | 10,875 | 17% |
合計 | 91,819 | 84,310 | 9% |
製品カテゴリ別に売上を見てみると、売上規模の大きなiPhoneが+8%の売上成長をしています。
ずっとアップルの決算を見てきた人はお気づきだと思いますが、これはかなり珍しい出来事です。過去1年間iPhoneの売上は前年を下回り続けましたが、ようやくプラスに転じています。
また、ウェアラブルではワイヤレスイヤホンのAirPodsが好調だったようです。ただし、需要は強いのに生産能力が足りていなかったようで、売り逃しが出ているのは少し残念です。ウェアラブルの成長率は前期+54%でしたが、+37%に低下しています。
一方で、気になるのはアップルが全社的に力を入れているサービス売上の成長が加速しないことです。上のグラフのサービス売り上げの推移を見ても、一向に成長が加速する兆しが見えていません。
アップルは2019年から製品の会社ではなく、サービスの会社になると宣言していますが、現時点の売上規模を見てもまだまサービスの売上規模は小さいです。
単位:100万ドル | 2020 1Q | 2019 1Q | 前期比 |
---|---|---|---|
製品 | 79,104 | 73,435 | 8% |
サービス | 12,715 | 10,875 | 17% |
合計 | 91,819 | 84,310 | 9% |
前期の決算では「アップルの定額制サービスの売上が40%で上昇している」という明るい発表もあったのですが、サービスの売上はあまり見えてきていません。
>>アップルは買い銘柄。サブスク売上+40%で急成長【2019年7-9月期決算】
もちろん製品よりもサービスのほうが成長率は大きいですが、このままの成長率のペースでは、サービス売上が製品売上を上回るのに20年かかります。
投資家はアップルに対して、年ごとに売り上げのバラツキが見られる製造業ではなく、安定収益をたたき出すサービス業と判断して、株の評価を倍にした経緯があるので、今後アップルはサービス売上が加速させる必要があります。
地域別売上で沈んだ日本
最後に地域別売上についても見てみます。全体的に好調だったのですが、気になる低迷が見られる地域があります。
日本です。前年でマイナス10%と、唯一マイナス成長しています。
単位:100万ドル | 2020 1Q | 2019 1Q | 前期比 |
---|---|---|---|
アメリカ | 41,367 | 36,940 | 12% |
ヨーロッパ | 23,273 | 20,363 | 14% |
中国 | 13,578 | 13,169 | 3% |
日本 | 6,223 | 6,910 | -10% |
その他アジア | 7,378 | 6,928 | 6% |
合計 | 91,819 | 84,310 | 9% |
10-12月で日本の売上が低迷する理由で思いつくのは、消費税の増税でしょうか。この記事の趣旨とは異なりますが、日本の消費の低迷も気になるところです。
その他アップルの最新動向について
以上、2019年10-12月期の決算を振り返っていきました。
その他のアップルの最新ニュースとビジネス動向は、アップル企業分析ページでまとめています。詳しくはこちらをご覧ください。
【米国株】アップルの企業分析【投資家からの評価を上げている注目銘柄】
アップルという企業を知らない人はいないと思います。しかし、アップルが今何に取り組んでいて、なぜ株価が上がっているかを説明できる人は少ないでしょう。「アップルのビジネス動向(定性)」と「近年の株価と業積の変化(定量)」の両面を見つつ、アップルの今の姿を追いかけます。