2020年10-12月のアマゾンの決算が発表されました。売上も利益も驚くほど、良かったです。
新型コロナウイルスの流行で部屋でひっそりと過ごすことになったクリスマスシーズンは、ネットショップのアマゾンにとって強力な追い風になったようです。
ただ、好決算も関わらず決算発表後の株価は伸び悩みました。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が退任するニュースが同時に流れたので、そのニュースに反応して株価が下がったのかと思いましたが、決算を見ていくと「コロナ収束後は、何を成長のエンジンにしていくのか」と疑問も感じたので、他の投資家も同じことを考えたのかも知れません。
この記事のポイント
- 2020年10-12月のアマゾンは、売上も一株利益も大幅に予想を上回る好決算だった。しかし、決算発表後の株価は伸び悩んだ。
- 新型コロナウイルスが収束した後に、アマゾンはどうやって高い成長率を維持するのか疑問。コロナでネットショップの売上が急増した影響で、高成長分野だったはずのクラウド、定額制サービス、広告ビジネスの売上比率が下がってしまったため、コロナ収束後のアマゾンの売上成長率は伸び悩むかも知れない。
2021年1-3月期はまだ好調を維持すると思いますが、コロナ収束後にはアマゾンの成長率は今よりもずっと緩やかになるだろうと思っています。ジェフ・ベゾス氏はアマゾンの最高潮のタイミングで退任を宣言したようです。
私は現金比率を高めたいのと今後のアマゾンの成長エンジンが見えないため、そろそろ一度アマゾン株を手放して様子を見るつもりです。
好調を維持した2020年10-12月期
2020年10-12月のアマゾンは、予想を大幅に超える好決算を発表しました。
- 売上:$125.55B(予想値:$119.73B、前年比+44%)
- 一株利益:$14.09(予想値:$7.13、前年比+118%)
一株利益は前年や予想値と比べても大幅に上回る数字になっています。アマゾンほどの大きな企業なのに、これほど高い成長率は見事です。
コロナの追い風を最も受けた2020年4-6月に売上が大きく上昇し、その後7-9月期に成長率がわずかに鈍化したので、このまま緩やかに成長率が下がってコロナの収束を迎えるのかと私は勝手に思っていました。
アナリストも10-12月期の売上成長は+36%と予想して、前期の+37%成長からわずかに下がると見ていたのですが、予想に反して売上成長率は再加速しました。
以下のグラフはアマゾンの営業利益についてですが、こちらも高い成長を維持しています。
好調だった北米以外の売上
今期の好調の要因を探っていくと、北米以外の売上の成長が著しいことがわかります。
ただし、北米以外の売上増加は一時的かも知れません。
例年と違って、アマゾン・プライムデー(アマゾンの期間限定セール)の時期が10-12月にずれ込んだこと、またヨーロッパ各地でウイルスの感染拡大を抑えるために外出規制がかかったことで、ネットショップの売上が好調だったようです。
気になる新型コロナウイルス収束後の成長エンジン
ただし、好決算にも関わらず、アマゾンの株価はあまり上昇しませんでした。
決算を詳しく見るまでは、アマゾンの創業者のジェフ・ベゾスCEOが退くニュースに反応して株価が伸び悩んだのかと思いましたが、決算を見た後には違う理由も思い浮かびました。
今回の決算を見て「今はネットショップが好調だけど、コロナが収束したらアマゾンは一体にどうやって高い成長率を維持していくのだろう」と疑問に思いました。他の投資家も私と同じ感覚を持っているなら、株価が伸び悩んだのも納得です。
影を潜めたサブスクリプションと広告
毎回のアマゾンの決算を追いかけている人なら気がついたと思いますが、今回の決算からアマゾンの売上構成は「サブスクリプション(定額制サービス)」「その他(広告)」などの表記が消えて、「北米」「北米以外(インターナショナル)」「AWS(クラウド)」の3つに集約されています。
世界でコロナが流行する前は、「クラウド」「定額制サービス」「広告事業」の3つの分野は成長の鈍化していたネットショップに変わる、新たな成長のエンジンとして期待されていました。でも、コロナの流行でネットショップの売上が急激に増加して、「クラウド」「定額制サービス」「広告事業」のかつての高成長分野がアマゾンの売上を支える日はますます遠ざかってしまいました。
特に「定額制サービス」「広告事業」は売上規模も小さいので、決算書の売上構成で他に集約されて報告されるまでになっています。
今は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、ネットショップの売上が順調ですが、今後はどうやってアマゾンが高い成長を維持していくのか疑問です。上記のグラフでも見て取れるようにAWSもかつてほど成長していない点も気になります。
私はコロナ収束後にネットショップの成長が鈍くなれば、ネットショップの売上に依存しているアマゾンの成長率も鈍くなると思っています。
うがった見方かも知れませんが、ジェフ・ベゾスCEOが退任を発表したのは「今が近年で最も高い成長率だから」、好業績を発表しても株価が伸び悩んだのは「投資家も今後の高い成長の維持に疑問を持っているから」かも知れません。