この数年、AMDは勢いがあるなと感じます。
AMDはコンピュータの頭脳に相当するCPUと呼ばれる半導体チップなどを製造している会社で、インテルの長年のライバルです。
近年のAMDのCPUは業績がすこぶる好調で、インテルのものよりも安価で高性能だと評判でインテルからシェアを少しずつ奪っている様子が見えてきます。
少し前のデータにはなりますが、2019年1月にはわずか1%だったノートPCのシェアが、2019年年末には24.3%までシェアを伸ばしていて「インテル、入っていない」PCも急増しているようです。
1-3月期の決算発表では今後の業績見通しが弱気だったので株価が売られましたが、1-3月期の業績は新型コロナウイルスの影響を感じさせない強さがありました。
この記事のポイント
- 2020年1-3月期の決算は、アナリスト予想通りのだったが、内容は良い決算だった。
- 特にCPUの売上が好調で成長が著しい。CPUを含む部門の売上は+73%増だった。
- 今後の業績見通しが控えめだったため、決算直後は売られた。しかし、新型コロナウイルスの在宅ワークのためのノートPC需要、増え続けるクラウドデータセンターでのAMD半導体採用などの今後の売上の上昇要因がいくつかある。
この企業の近年の転機は2016年末に発表したCPU「Ryzen」だと思います。このシリーズのCPUのおかげで2017年以降は株価も上昇し、S&P500と比較しても高いリターンを誇っています。
2020年1-3月期結果
1-3月期の決算はアナリストの予想通りの内容でした。
- 一株利益:0.18ドルで、アナリストの予想通り。
- 収益:17.9億ドルで、アナリストの予想通り(前年比+41%)。
単位:10億ドル | 1Q20 | 1Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 1.79 | 1.27 | +41% |
営業利益 | 0.64 | 0.54 | +18% |
営業利益率 | 36% | 43% | – |
純利益 | 0.16 | 0.16 | +1% |
(調整後)一株利益 | 0.18 | 0.06 | +200% |
この企業の注目のポイントはなんと言っても、売上成長の著しさです。
2018年後半からは米中貿易摩擦や、半導体の在庫サイクルに苦しんだ時期もありましたが、2019年第4四半期からは再び成長軌道にのっています。
部門別売上
ADMの好調の要因をもう少し詳しく知るために、部門別売上を見ていきます。
AMDにはPC向け半導体部門と、企業サーバー向けやゲーム機に組み込む半導体の部門の2つがあります。
AMDの部門説明
- コンピューティング&グラフィック部門:コンピュータの頭脳に相当するCPU半導体チップ、グラフィックに特化したGPU半導体を販売。
- エンタープライズ&組み込み部門:クラウドコンピューティングを支えるコンピュータサーバ向け半導体や、PlayStationやXboxなどに組み込む半導体を販売。
部門名(単位:10億ドル) | 売上 | 前年比 |
---|---|---|
コンピューティング&グラフィック | 1.4 | +73% |
エンタープライズ&組み込み | 0.35 | -21% |
合計 | 1.75 | +41% |
今のAMDはコンピューティング&グラフィック部門の売上が絶好調です。次の章でも詳しく触れますが、これは2016年末に発表したCPUの「Ryzen」シリーズが好調なためです。
一方で、「エンタープライズ&組み込み」の売上はマイナス21%と大きく落ち込んでいます。PlayStationとXboxの次世代モデルが2020年末に発売が予定されており、現行モデルの買い控えが起こっているため売上が低迷したようです。
ただしPlayStationとXboxの次世代モデルへの出荷が4-6月期から始まるので、2020年後半から売上の上昇が見込めるとのことでした。
またマイクロソフト・Google・IBMのクラウドコンピューティングを支える半導体としてAMDの採用が増えていることも決算で発表されていましたが、これも好材料です。
新型コロナウイルス後の世界は、よりクラウドを活用する世の中になることは間違いなさそうなので、AMDとしてはデータセンター向け出荷の増加の追い風をきちんと捕まえたいところです。
インテル入っていないPCが急増中
今のAMDを支えているのは、2016年以降に発表した半導体設計を採用したRyzen(ライゼン)と呼ばれるPC向け半導体チップCPUです。
このチップはインテルのもの比べて安価で高性能だと評判があり、PCを自分組み立てるコアなファンの間で高評価を得て、2017年以降またたく間にデスクトップPC向けCPUの市場シェアをインテルから奪いました。
そしてノートPCでもデル、レノボ、HPなどPCメーカーが次々とインテルのCPUではなくAMDのCPU(Ryzen)を採用し始めています。今後もノートPCメーカへの売上が増える見通しだと決算発表でコメントがありました。
「インテル、入ってる」という有名なキャッチコピーがありますが、最近はADMのCPUを採用してインテルが入っていないPCも増えているようです。
BCNの調査によれば日本の個人向けPC市場でも、2019年1月時点のAMD搭載PCの市場シェアはわずか1.2%でしたが、2019年12月には24.3%までシェアを伸ばしています。
>>ノートPCの4台に1台が「Ryzen」搭載の衝撃、「Core i7」と「Ryzen 7」で価格差2万8000円(BCN)
CPUのインテルとAMDの激しい競争の歴史を知っている人から見ると、「今はAMDに風が吹いているだけで、すぐにシーソーゲームのように形成は逆転、再逆転・・・を繰り返す」という見方もできると思いますが、少なくとも近年はAMDが勢いづく風が吹いているように見えます。